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アイスプラント

 たまには、農業に力を入れてみようと、土地の塩害対策を考えた。最近、収穫だけで農家のスキルも使ってなかったしね。


 いや、発動してるのか?塩害が酷いにも関わらず、普通に収穫出来てる訳だし。


 という訳で、考えた結果、アイスプラントの専用の畑を作ってみた。向こうでもお気に入りで、サラダにして食べていた。


 アイスプラントは、乾燥に強く、耐塩性が高い塩生植物の一つだ。

 海水と同程度の塩化ナトリウム水溶液中でも栽培が可能な事で有名だ。


 名前の由来は、葉や茎の表皮にある塩嚢細胞が、土壌より吸い上げた水分から塩分を隔離して、葉の表面や茎にプチプチとした水滴状のものを固着させる。


 それがまるで凍っているように見えることからアイスプラントと呼ばれている。


 生で食べると塩味が程よく効いて美味いのだ。


 という訳で、塩害対策で植えてみたのだが。


「出来過ぎだろ」


 アイスプラントの緑色が、畑一面を覆っている。


 これが植えて、まだ1ヶ月なのだから驚きだ。


 アイスプラントは、そもそも生活環が半年程度と比較的短く、栽培も容易なのだが、スキルによる創造物だから通常より生育期間が短いの忘れてた。


 とりあえず、アイリスとマリーに出してみた。


「えっ? 何、これ? こんな植物、初めて見た!」


「何です、これ!?表面のは、塩の結晶ですか? 宝石みたいで綺麗です!なんて植物なんですか!!」


 2人とも見た目に対しては、良い反応だ。特にマリーは、竜種なだけあって光り物が好きだからな。かなり気になる様だ。


「アイスプラントだよ。生で食べると塩味がして美味いんだ。食べてごらん」


 葉を千切って、2人に差し出した。食べた感想を聞こう。


「お〜っ、このぷちぷちが弾けると良い塩味がする」


「その上、葉自体もシャキシャキしていて歯応えがいいです」


「それで感想は?」


「「凄く美味しい」」


「それは、良かった。夜は、これを使った料理を出すから楽しみにしていてね」


 他の人にも聞いてみよう。確か、エロースたちが授業中の筈だ。


「は〜い、お邪魔」


 教室として使われている部屋にノックせずに入る。


 抜き打ちだよ、抜き打ち。当然、音も気配も消しているさ。


『………』


 俺が部屋に入ると、エロースたちの動きがピタリと止まった。


 今、目の前の光景を説明しよう。


 全裸で教卓の上に座るエロース。視線が合った瞬間、股を閉じたから実演しながらの性教育中だったのだろう。机でなく、間近にイナホたちも居るし。


「お邪魔しました」


 俺には、イナホたちの前で自慰してる様にしか見えなかった。だから、見なかった事にしよう。回れ右。


「待って!」


 エロースに背後から抱き締められた。服を着ていないので胸の感触がダイレクトに伝わる。


「だっ、大丈夫。誰にも言わないから……な?」


「性教育の授業してだけだから!」


「分かってる。分かってる」


「各部位の説明をしてただけだから!!」


「夜の為にも説明は重要だもんな。だから、離して。今の状況を見られてなんて思ーー」


「「………」」


 わぁ〜お、フィーネとミズキが扉から見てるよ。たぶん、偶然通りかかったんだろうな。


 パタン。と、2人に扉を閉められた。見なかった事にする様だ。


「皆、ちゃんと扉は、閉めましょうね。それと晩ご飯は、話にあったお赤飯にします」


「私は、ユーリ様のメイド。何を見ても他言しないので大丈夫です」


 扉の外から優しい言葉をかけられた。見なかった事にするのではなく、他の人への配慮だった。何故だろう、ギンカの時と同じ反応だ。


「そうじゃねぇええーー!」


 俺の絶叫が屋敷に響き渡った。普通、その反応じゃないから!


 エロースの拘束から転移(シフト)で逃げて、2人に元々の経緯を説明、アイスプラントを食べて貰う。


「ドレッシング要らずなんですね。味も塩味が効いて最高です」


「世の中には、こんな植物も有るのですね。美味しいです」


「そっ、そうか、それは良かったよ」


 ふう、2人に誤解されずに済んだ。そして、彼女達にも好評の様だな。


「この後は、どちらに?」


「まだ、決めてないよ」


「でしたら、リリスさんたちが植物園で訓練してるので、行ってはどうですか?」


「確かに運動後に塩分は、必要だしな、そうするよ」


 俺は、リリスたちが居るという植物園に行くことにした。


『ハッ、セイッ、ヤァ!!』


 おっ、グレイたちも参加してるのか。朝も日課の訓練やったのに精が出る。俺も少しは、見習わなければ。


 後、ついでに、ギンカとエリスを見つけた。ギンカは、魔獣体で、エリスはギンカのお腹を枕にして気持ち良さそうに寝ていた。


 エリスの気持ちが分かるわ。ギンカの褐色の柔肌も良いけど、魔獣体のふわふわの毛並みも最高なのだ。俺だってたまに埋もれたくなる。


 しかし、2人は、基本寝てる事が多い気がする。ギンカは、従魔が仕事だから俺が外に出る時だけだし、エリスはカグヤの従者だけど赤ちゃん相手に出来る事が少ないから仕方ないか。


「あっ、ユーリ様」


 俺の存在に、教官役のリリスが真っ先に気付いた。


「精が出るな。良いもの持って来たぞ」


「良いものですか?」


「塩害対策に育てたんだよ。食べてみてくれ」


 リリスたちに千切って渡した。ギンカたちには……。


「ご主人様。それは?」


 どうやら、騒がしくなって起きた様だ。


「野菜だよ。生で食べれるからね」


「そうですか。なら、頂きます」


「グレイたちも食べ終わったら、感想を聞かせてくれ」


 というか、既に食い終わってるな。


「美味いです!ユーリ様!」


「なんですか!?この酒に合いそうな植物は!」


「うっ、美味ぇ〜!」


 そういや、酒の肴にした事なかったな。確かに、塩っ気が有るから酒に合うだろう。そうだ、量も多いし、ガイアス爺さんに届けようかな?


「この野菜、サラタケみたいですね」


「リリス。サラタケって、何?」


 初めて聞く単語だ。タケと付くからキノコかな?


「山や森林に生えるキノコの一種で、数少ない塩分補給手段になります。塩は、何処でも必要な物ですからね」


「塩害が酷いけど、そっちの面から見ると恵まれてるんだよな」


 塩の入手は、海水か岩塩が主になる。それ以外は、確保出来る量が少なかったりするからだ。


「で、感想は?」


「大変、美味しいです」


「運動した後の身体に染み入ります」


「これは、売れるのでは?塩分が取れるだけでなく、この結晶が付いた見た目も良いですし」


 確かに売れそうだ。食用だけでなく、観賞用に育てるのも簡単だし。久しぶりにカリスさんたちに会いに行って聞いてみよう。


「ギンカたちは、どうだ?」


「美味しいです。この結晶が」


「いや、葉や茎も食えよ」


 ギンカは、葉や茎は食べずに水滴状の結晶だけをピンクの舌で舐め、時には咥えて食べている。


「美味しいけど、大っきい……」


「すまん。エリスには、少量で良かったな」


 他の皆と同じくらいの大きさの物を渡していた。身体が小さい事を考慮していなかった。でも、彼女も美味いと思った様だ。


「これ、今日の晩飯に使うから楽しみにしてくれ。だから、『今日は食堂で晩飯』と連絡しといてくれよ」


「「「分かりました」」」


 グレイたちは、基本、自分の持ち家で食べている。だけど、晩飯だけは週3くらいのペースでこっちに呼んでいるのだ。


 理由は、晩飯のメニューが一緒なのだ。ティアたちには、屋敷のご飯作りも手伝って貰っている。それを持ち帰り、晩飯にしているからだ。


 だったら、一緒に食った方が手間がかからないし、美味いだろ?


 まぁ、一応、断っても良いのだが、俺が誘うと絶対来るな。……俺のせいだろうか?


 気にしない事にしよう。世の中、大抵、気にしなければ大丈夫。


 晩飯は、アイスプラントを使ったパスタとサラダ。塩分が多いのでバナナ等のデザートを添えた。バナナとかは、カリウム多いから塩分排出でバランス良くなる気がする。


 異世界のバナナだからカリウム多いとか、分からないのでは?


 明日の飯は、塩分を減らして作ろう。


 余談だが、アイスプラントは、一株金貨15枚の高値が付いた。観賞用として貴族に売るそうだ。食用としては、高過ぎるのでそっちが良いのかもしれない。


 まぁ、後は、カリスさんたちに任せよう。俺は、種を作って栽培するだけだ。管理は、リリスたちだがな!

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