季節は、冬……だけどうちは何時もと変わりません
夏が過ぎ、秋終わって季節は冬。シンボルの桜も青葉から色を変え、葉を落とし始めた。
だが、屋敷に隣接した植物園では、季節関係無しに青葉を楽しめている。
趣味で作った植物園は、屋敷の右側から通路を通って移動出来る様に隣接した。その為、上から屋敷を見ると大文字の逆Lになった。
広さは、直径100mの円状。地面は、全て芝生。寝転がりたいしね。
その上、ラグス王国で手に入れたバナナとか、ハイビスカスの様な花とか色々な南国植物を植えた。魔法による温度管理も行い、春の様な温暖な気温を保っている。
おかげで、室内でピクニック気分を楽しめる。
最近、温かさを求めて、皆ここに集まっている。
今日は、テーブルとイスを持ち出してのんびりだ。
「カグヤ〜、ご飯だよ」
「ユリウスも授乳の時間ですね」
片胸を出して、うちの赤ちゃんたちに授乳するアイリスたち。
「………」
「どうしたの、ユーリ?」
「いや、女の子の身体って不思議だな〜と」
吸っても出なかったのに、赤ちゃんが出来た途端、おっぱいから母乳が出るのだから不思議に感じる。
「母乳のこと?」
「そうそう」
さすが、アイリス。言わなくても聞きたい事が分かっーー。
「飲みたい?」
えっ、何?年中、発情してるとでも思ってるの?
「……夜、寝る時で」
すみません。誘惑には、勝てませんでした。
「ユーリパパは、おっぱい好きですからね〜」
「うぐっ」
アイリスがニヤニヤしてる。
「でも、胸が小さい娘が好みですよね?」
あれ、マリーも参戦ですか?
「私やミズキ、イナホちゃんの時とか妙にやる気ですよね?」
「それは、ユーリにロリコンの気があるからじゃないかな?」
「ごはっ!?」
見えない言葉の剣が俺を貫いた。
「確かに、ユーリ様の好みについて詳しく聞きたい所ですね。以前、誤魔化された経験が有りますし」
あはは、リリスたちも参戦ですか。これは、ヤバそうですね。
「確かに、私たちにはあまり手を出して下さらないですし。やはり、母様が良いんですか?母様が?」
……いっ、言えない。4人の中で飛び抜けてるなんて。子を産んだ母親なだけあって色々上手いし。そもそも、一番好みに近いと思う。
ただ、もし言うものなら……リリィが終わる。リリスたち、自分たちの母親に容赦無いからな。
「賭けの報酬で孕めなかったですし。次は、孕みたいものです」
リリアが爆弾を投下しました。護衛クエストの時の件ね。頑張ったけど、運に恵まれ無かった。
「リリア。賭けの報酬とは?」
「以前、ユーリ様に『子供を下さい』とお願いして頑張って貰った件です」
「「その話、詳しく!」」
この流れマズくない? このまま続けたら、俺の好みや性癖を根掘り葉掘り聞かれるくない?
性癖は、良いとして、好みはマズい気がする。というか、自分でも良く分かってなかったりする。好みの範囲が広いなとは、思っている。とりあえず、話題を変更せねば!
「それより、本格的に冬が始まる前に冬対策を話し合おうよ!!」
「うちって、する事無くない?」
「あっ、うん。まぁ、実はそうだよねぇ〜」
アイリスの言葉に、頷く俺。うちの現状を改めて確認してみよう。
まずは、食料。アイテムボックスのパネルを展開。面にして5枚。3桁表示のアイコンで埋め尽くされている。
「これでも減った方なんだよな」
ティアたちが来てから畑を拡張。それに伴う、作物の増加。豊穣だったことも有り、十分過ぎる程に貯蓄出来ている。
そして、俺の趣味である農業試験場も成果は上々。
属性剣を活かし新しく作った温暖施設や寒冷施設でも作物を栽培。
これらは、季節関係無しなので、食料には困らない。
次に、冬場の薪だが、基本使っていない。
屋敷を作った時、壁と床の間にパイプを通しており、温泉を流す事が出来る。
これにより、冬場でも建物の内部を温める。
夏の場合は、水路から冷水を引込む事で冷却も行える。
ちなみに、パイプの劣化が心配になるが、そこは異世界。劣化防止の魔法が存在したので無問題。
そんな感じで薪による暖房は要らないのだ。
そもそも、暖炉とかないし。キッチンも、魔法コンロだから要らないのだ。
「布団でも買うか?」
「今のでオールシーズンいけるから要らなくない?」
「ですよね〜」
だから、正直する事がない。
「コタツでも作ろうかな?」
最近、創る人のスキルを使って何も造ってない気がする。
「それより、気になる事があるんだけど」
「何?」
「ユーリ、最近、良く出掛けるよね?何してるの?」
「あれ、皆に言わなかったっけ?」
アイリスたちには、伝えたと思っていたんたが……。
「私も聞いて無いですね」
「マリーも聞いて無いなら俺が忘れてたな。最近してるのは、転移で行ける所を増やしているんだ」
冬になると移動が辛くなるからな。
「今、行けるのはこれだけだよ」
竜王国内の地図をアイテムボックスから出して、皆に見える様に広げた。地図には、要所にペケ印がされている。
「マークが着いてる場所が行った場所だよ。とりあえず、竜王国の7大都市を順番に行ってる最中」
7大都市には、首都ペンドラゴン、観光都市エリシオン、港町ベレチアが含まれる。
ベレチアも都市だった。この国の商業都市にあたる。
他の都市は、ゲンチアナ、プレシオ、カノープス、ティラノ。
「今の所、ゲンチアナとカノープスには行きました」
「ギンカも行ったの?」
「はい。従魔ですし、私も転移を使えるからと」
「俺以外に行ける人が増えると助かると思ってな」
「個人的にも何ヶ所か回っています」
「そんな事してたんだ」
「うん。だから、春になったら皆でゲンチアナにでも旅行しようよ。季節の関係で見れなかったけど、花が綺麗なんだって」
「月光華ですね!あれは、良いものです!」
「月光華って、夜に淡い光を纏いながら白い花を咲かせるって奴?」
「そうですよ。アイリス。その花が、畑一面に広がっていて幻想的なんです!」
マリーは、以前に見た事があるのか、思い出してうっとりしている。
「それ、面白そう。私も見てみたい」
「それじゃあ、約束。指切りげんまん〜〜……指切った!」
アイリスと約束した。春になるのが楽しみだ。
「ユーリ君、いる?」
ちょうど、指切りが終わったタイミングでエロースが植物園に入って来た。
「あっ、エロース!俺は、ここに居るよ!」
たぶん、例の件だな。皆に聞かれない様にエロースに近付いた。
「あっ、良かった。頼まれていたデザインが出来たよ」
「ホントか!?」
エロースが何でも出来るのは周知の事実だが、それには絵も含まれていた。
それを知った俺は、彼女にローブのデザインを依頼。
冒険者チームとしてのシンボルのような物が欲しいと思ったからだ。
「どうかな?」
フード付きの白いローブ。背後に火を連想する紅い蓮の花が描かれていた。手首や裾にも火をイメージした細工がされている。
「凄く良いじゃねぇか!!軽く言っただけで、コレとか、やるじゃん、エロース!」
「えへへ、見直したでしょ。それで報酬なんだけど……」
「くっくっく、分かっている。当然、例のモノを用意した」
「ふっふっふ、ユーリ君も悪ですね」
「何を言う。エロース、君もだろ?」
「そうでした。貰うからには、共犯でしたね。まさか、あんなモノを報酬にされるとは……」
「エロース。君の働きを見れば当然さ。ただし、分かっていると思うが……」
「くくっ、お任せ下さい。墓場まで持って行かせて貰います」
2人で怪しい会話をしている様に見えるけど、別に怪しくない。
俺が、エロースにデザイン依頼の報酬を渡す話をしただけだ。
……まぁ、報酬が盗撮写真だったりするけど。
パンパカパン!マジックアイテム『なんでも写す君』!
ガイアス爺さんが出産祝い品として俺宛に贈って来たものだ。
効果は、カメラ。撮影後、専用アイテムにセットする事で現像してくれる。
このカメラに、実は、隠し機能が存在した。レンズの一部を弄り、専用キーを本体に刺して準備ok。
後は、対象の人に向かって構え、ボタンを押します。
なんと言う事でしょう!服を着ているのに、下着姿で撮影されるでは有りませんか!
爺さんの手書きメモで知った。即効、全員を撮影、現像。燃やされても良いように複製までこなした。
知ってるか? PCと同じく、エロ目的の方が詳しくなるんだ。
俺は、このアイテムを複製出来る程に詳しくなってしまったぜ!
「後は、これを何処に依頼するかだな。出来れば、魔法糸で編んで貰い所なんだが……」
問題は、今、知ってる店は、普通の店なので出来ないんだよな。
「それについても、アテが有るんだけど」
「マジか!」
「うん。天使の職人に依頼したらどうかな?私の知ってる店なら魔法糸で編む事が出来るわ」
「なら、そこにしよう。とりあえず、白金貨20枚で足りるか?」
「寧ろ、十分よ」
「なら、全額使っても良いから最高のを造って貰ってくれ」
「分かったわ。すぐに頼んでくる」
「これを持って行って」
俺は、エロースにメモを渡す。
「これは?」
「ここ最近の皆の詳細なサイズ」
「……なんで有るの?」
「この前、皆でオーダーメイドの服作りに行っただろ?その時、店員に金貨渡したらくれた。ちなみに、これがエロースのサイズ」
「にゃあ!?返して!?」
おっ、猫みたいで可愛い。取り返そうとして猫パンチが飛んできたw
「ほ〜れ、ほれ」
「うう〜〜〜っ」
「ユーリたち、さっきから何やってるの?」
「エロース。それじゃあ、例の件頼んだぞ」
「分かったわ。直ぐ浮遊大陸へ行きたいから転移門使うね」
アイリスが背後に来ていたので、即効、じゃれ合いを終了。
エロースのサイズが書かれたメモを転移門の鍵と一緒に渡した。
「何、ちょっとしたサプライズの計画だよ。にひひ、楽しみにしててね」
「アイリスちゃん、悪い事じゃないから安心してね」
「分かった。2人がそう言うなら、楽しみに待ってるね」
エロースは、直ぐに注文しに行った。店は、客が少ないらしく全力で取り組んでくれるそうだ。
来年の春までには、完成する予定だとか。とても楽しみだ。




