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第53話 居残り組4










ベルトポーチとコアを調べ終わった後、周は川に近づき靴を脱いだ。

それから(すそ)(まく)ると、川に入り手頃な石を見つけ、それを拾い出した。


(丁度いい大きさのやつは、と。これと、これと、これか。うん、そうだな………三個あればOKだ)


目的を果たすと周は直ぐに川から上がり身を整え、拾った三個の石に付いた水滴を拭い乾かしてから、片手の上で器用に転がし、一つ、また一つと宙に放り投げて、お手玉をして遊び始めた。


「いち、にー、さん、いち、にー、さんーーーやっぱり問題ないな」


(これは(こま)かい動きというよりは咄嗟の、いや元々の身体能力の全力以上で身体を動かそうとすると意識が付いていかないという感じなんだろうな………)


周は別に童心に目覚めたわけではない。

お手玉を通して軽い運動テストをしていたのだった。


怪我を負ってからの周は大きく身体を動かして傷が開くのを嫌い、気を使いながら身体を動かしていた。


二十年以上無意識に動かしていたそれを意識的に起動させる。 それをしていて気付いた事は普段通りの行動はこれまでと同じ様に狂いなく出来ているという事だ。


コアを探して歩いていた時にはもうそれに夢中で身体の変化を何度か忘れてさえいた。


(………一つ試すか)


お手玉を繰り返していた周はそれを止める。そして自分の考えが正しいか知る為に、遊んでいた三個の石から二つを選び取ると、地面に落とし、残った一つを強く握った。


「………よし、ほら、よっと!」


包帯が巻かれている左手を見て一瞬躊躇(ちゅうちょ)したものの、そんな自分を唾棄(だき)して、即座にダンジョンリストを狙って全力投球をした。


バンッ。という音は石版に当たった時の石の破壊音ではなかった。


周の手から放たれた手頃な大きさの石は、本来の狙いから大きく()れ、ダンジョンリストには(かす)りもせず、横を抜けて落ちる。

削れたのは地面の下草だけだった。


「痛ってぇ………クソーーー左手には力を入れないように気をつけたのに」


ダンジョンリストに当たらなかった石の行方には気をかけず、周は左手を押さえて鋭い痛みに耐える。


(―――泣きそうだ)


全力を出した投球の反動はきっちりと左手にも伝播していた。


「でも、やっぱり間違いない。普段通りの運動能力はそのまま。全力を出すとタガが外れるってわけだ」


(全部を調整せずに済むのは良かった。これなら次は外にも付いて行けるな)


石を受け止めなかったダンジョンリストを見て周は狙い通りだと頬を緩ませたが、それは痛みに耐えながらのものだったので、その笑顔は何処かぎこちなかった。


石を拾っては投げ、拾っては投げ、自分の尻尾を追いかける馬鹿可愛い犬のような行動を繰り返し続けた周は、その数が30球を超えた辺りで痛みを我慢出来なくなり、投球をやめた。


その内石版に当たった回数はわずか二回。

徐々に狙いは定まってはきたが、完璧というには程遠かった。


「今日はこれで終わりだ。痛みに弱い情けない主人で許してくれ」


ここに居ない探索組の配下に謝り、バタンと地面に倒れ仰向けに寝転ぶ。


「ーーー平和だなぁ」


そしてピッチング練習をして汗を流した周は、青空を見ながらそう呟いた。

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