第50話 居残り組
「行ってきますね、主様」
「周様、直ぐに戻ります」
「はい、いってらっしゃい」
時間は早朝、場所は廃家前、周はペテ子とセキの背中を見ながら手を振っていた。
目的は勿論お見送りである。
周は会議で決定したように今回は探索には付いて行けず、ダンジョンに待機だ。
唯一の救いは供に蟻3匹がいることだろうか。一人きりでは寂しすぎる。
「じゃあ、戻るか」
探索組の姿が見えなくなると肩に乗っている蟻達に一応声をかけて周は廃家に入り階段を下っていった。
(寂しいねぇ、こんな気持ちは随分前に無くなったと思ってた。まるで一人だけ風邪を引いて遠足に行けない時みたいだ)
周は二人を見送っている時、確かにそんな風に感じていた。
1日前までは一人きりでいるのが普通だったのに、束の間の単独行動というだけで妙な気持ちになる自分が少し可笑しかった。
(っていつまでも感傷的になっている場合でもない。俺にもやる事はあるわけだからな)
周は自問自答しながら蟻達の様子を窺う。
蟻同士がお互いの姿が見えなくなるほど距離が離れても蟻達の行動もステータスにも変化は無く、体調も崩したりはしないのは確認出来た。
これからは経過観察。
距離が伸び、時間が経過することにより何が起こるのか?それは試してみなければ分からない。蟻達を見る周の内心には心配と好奇心を混ぜたような不思議な感情が渦巻いていた。
(こういうのは気長に待つしかない)
同胞達から離れ集団から孤立させられたにも拘わらず、3匹の蟻達は気にした様子もなく肩で動き回る。
(心配のし過ぎかもな、少しはそれを自分に回すべきか)
「これも取り替えないと」
蟻達の事を考えている内に階段を下りきった周は少し前から気になっていた左手の血が滲んだ包帯の結び目を解いた。
「何でこんな事をしたのか我ながら訳がわからんな」
それから巻いていた包帯を外して穴が開いている左手を見て怪我の具合をチェックした。
化膿はしていなかった。
「でかいピアスの穴だとでも思えばいいか」
身体の何処にもそんな装身具を付けたことも無いのに周は一人で強がりを言う。それから葛籠箱を開けタオルと残っている包帯と傷薬を取り出し、椅子に置いてから外した古い包帯を下草の生える地面に投げ捨てた。
「ゴミ箱が要らないのは便利だよな。手間が一つ省ける」
周は川に近付き、手の周りを簡単に洗いタオルで拭き、傷薬で消毒を済ませもう一度包帯を巻き直した。
「これで完了と」
怪我の治療を終え、周は椅子に座ると次は何をしようかと考え始めた。




