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第48話 食パンには蟻を添えて

会議が終わるとダンジョンリストが起動され、再び周によって『モンスター召喚』が行われる。二度目となると慣れたもので石板の前では黒土に再現された蟻を眺めながらこんな会話が繰り広げられていた。


「ハヤシアリの召喚費用は8DPですよね?それで何匹生み出すんですか?」


「中途半端に残すってのもな。こういう時は思い切って可能な限り多くだ」


「全てのDP(ダンジョンポイント)を消費するとなると44匹になります」


初めは1000DPあったDP(ダンジョンポイント)も増えたり減ったりして残存しているのは357DPのみだ。そこから44匹のハヤシアリを召喚すると352DPとなる。


「う〜ん。そうだな………43匹にしよう。もう一つだけ購入したいものがある」


「何ですか?」


「飯だよ。今日食べてないだろ?武士は食わねど高楊枝とはいかないからな」


「楊枝がないですからね」


「そういう意味じゃない。外に出る前に済ませておいた方が良いって話だ」


『モンスター召喚』を見ながら同時に『アイテム購入』で食事のメニューを決める。と言っても、それは楽しむ為のものではなく腹に入れて膨らせるだけのものなので(わび)しい食事となりそうだった。


10DPで購入可能な食品は色々とあるがその中で周とペテ子、セキ、それに43匹のハヤシアリに供給する分量を満たせるのは穀物類しかない。

その中でも手を加えず食べられるものは食パンぐらいのものだった。


「これにするか、じゃあハヤシアリ43匹と食パン一斤でDP(ダンジョンポイント)をほぼ使い切るぞ」


ダンジョンリストからその二つを選ぶと黒土が姿を変えていく。


そして『モンスター召喚』と『アイテム購入』を同時に使用した結果、黒土の上には一斤分の食パンの上に43匹の誕生した蟻がわらわらと這っているなどという周の予想外の事態が展開される事になってしまった。


「食欲が失せる光景だな」

「ーーー蟻入りパンですね」

「これが初めての食事………」


これを今から食べるのか。

誰も言葉にはしなかったが三者共に思いは一つだった。


「お前達だけのご褒美じゃないぞ。パンの上から降りてまずは並べ」


「やっぱり食べるんですね」


「これしかないんだ」


主様(マスター)が面倒くさがって『モンスター召喚』と『アイテム購入』同時に使用するからこんな事になったんですよ」


文句(クレーム)は受け付けてない」


「毒入りパンを出しておいて文句の一つも認めないとは酷い対応ですね」


「毒は入っていないだろ。ただの蟻入りパンだ」


「目に毒って事ですよ」


「それ言葉使い方間違っているからな。それだとこのパンが欲しいって意味になるぞ」


「揚げ足を取らないで下さい」


「もう文句はいい。それは全部このダンジョンリストに言え。それに俺も一緒に食べるんだから我慢しろ、ほら整列だ。整列」


ペテ子の異議は却下して周は食パンの上で動き回る蟻達に向かって周は号令を出し、パンの上から移動させようとする。命令が通じるのか少しの不安はあったがそれは杞憂に終わった。


「並んで待機しろ」


周の指示通りに蟻達は地面に降りて、黒土の上で一列に整列した。


「一斉に動くと気持ちが悪いですね」


そう漏らしたのはペテ子だ。

周とセキは頷かなかったが、少しはそれに同意する気持ちを共有する事は出来そうだった。しかしだからと言ってそれをわざわざ口にする必要はないのも確かだ。


「こいつらも俺とお前の配下だぞ」


周はペテ子を注意する。


「だからですよ。遠慮は無用でしょう?」


「初対面で(けな)すな」


(けな)してはいません。どんな生き物でも一定数を超えて集まると気持ち悪いのは仕方ないですから」


「仕方ないなら言うな」


「はいです。主様(マスター)


ペテ子が返事をした後、周は蟻達に向き合った。


「このままだと踏み潰す可能性もあるから全員一旦壊れた樽の中に入れ、アレが暫定的(ざんていてき)なお前達の巣になる。全員が移動したら褒美をやろう」


餌で釣ると行軍は速度を上げ、整列した蟻達は言われた通りに這って壊れた樽へと移動を開始した。この命令により、ようやく食パンはあるべき綺麗な姿になった。


「セキ、次の探索ではお前の指示の元であいつらは動く事になる。だから次から指示はお前が出すように」


蟻が移動を始めると周はセキに話し掛ける。


「副代表が命令権を持った方がよろしいのではないですか?」


「後々の事を考えたら蟻達の命令権はお前が持っていた方が良い。気にするな。ペテ子はお前に指示を出せるんだから変わりはない」


「承知しました」


「聞いてたな?ペテ子」


「私は食欲が無いので食べなくてもいいですか?」


「聞けよ、お前」


食パンを見つめるペテ子は周とセキの会話を一切

聞いてはいなかった。

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