第46話 第一回ダンジョン会議2
「では一つ、私から提案があります」
周の無鉄砲な差配でペテ子が考えたのは、自分の主の安全だった。つまり周の事だ。
本来ならこのダンジョン全員が身を潜めるのが最も安全を確保出来る手段だったのだが、DPを集めなければならないのも理解していたので最終的な結論は一つに帰結した。
「早速頭を回したわけだな」
「それが主様のお望みでしょう?」
「聞いてやる」
「それでは失礼して。次の虫を捕獲する為の森の探索ですが、主様は同行を止め、ダンジョン内に待機していて頂くというのは如何でしょうか?」
これがペテ子の考え。
周だけを外に出さないというものだった。
セキに視線を向けると、その目は同意を表していた。
「その心は?」
周はそんな二人を見ながら話を聞く。
「今の主様は使えないからですよ」
「言ってくれるな」
「本当の事しか言っていませんよ。その手の怪我に身体の調子、どちらも状態が悪いでしょう?主様が万が一それにより不手際を起こした場合、私とセキは助けようと身体が勝手に動いてしまいます。今の主様は正直邪魔です」
「邪魔は言い過ぎかと」
セキは主人を悪く言われ衝動的に否定したが、口にした途端しまったと思った。
「いいえ、邪魔です。それに怪我と身体の事がなくても人間だけを警戒するなら主様には居てもらわない方が良いですからね」
ペテ子はセキの事を問題にもせず、さらに言葉を重ねた。
「それはどうしてだ?」
「わかっているでしょう?主様の風貌が人間だからですよ。昨日の一件も主様が人間だから襲われたのであって私だけなら襲撃自体が起こっていません」
「だろうな、お前一人ならそもそも見つかってすらいない」
「それに私は見た目がこんな感じですし、おそらく見つかったとしても襲われない可能性が高いです」
「理解出来ないものには、簡単には近づけないか」
「ええ、同族は同族を狩るのに向いています。なぜなら同じだからです。同じ物差しを持つが故にこれまでの己の経験により相手の強さや弱さ、精神状態、行動の有無、それらを自分という鏡越しに計る事ができる。でも私達は人間ではありません。私は宙に受けますし、セキは木を渡って移動できます。自分が出来ない事は予測するのには手間が掛かる。その間に森からダンジョンへと逃げ帰るのはそう難しくはありません」
別にペテ子も望んで危険を冒そうとしているわけではなかった。ダンジョン内は今は絶対的に安全な場所だ。そこにさえ逃げ込めばこのダンジョンの関係者の安全は保障される。逃げるだけならそう難しくない。そう踏んでの提案だった。
「だから付いてくるなってか?」
「ええ、いい子にして留守番をして下さい」
「………そうだな」
「提案は却下ですか?」
「いや、邪魔とまで言われたんじゃ仕方ないか……わかった。次は待機していよう」
周がこの提案を飲んだのは、客観的に見て今の自分はマイナス面が多いと判断したからだ。
「良かったです」
ペテ子はこの意見を周に却下されるものだと思っていたので驚いていたが、それを外には出さなかった。
「でも二つ約束してくれ、虫の捜索範囲はトンネルの付近のみにする事と敵対者が現れた場合は即座にダンジョンに逃げ込む事をだ。お前達を失う訳にはいかない」
「私の意見を飲んで頂いたので聞いてあげます」
「セキもだぞ」
「承知しました」
周はそう言いながら自分の手を見て、さっさとこれを治さないとずっと木偶の坊扱いだな、と嘆息するのであった。




