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第37話 戦利品

周が異世界に訪れて一日目の終わり頃、森林から廃家までの道程に一本の残痕(ざんこん)が引かれた。

それはベッファンを()()って作られた犯跡(はんせき)と血液によるマリアージュだ。


ペテ子に周辺の警邏(けいら)を頼み、(あまね)はベッファンの重い身体をダンジョンの奥深くまで何とか運び終えた。


戦利品は盗賊の死体、血塗(ちまみ)れの騎士服、剣二本にべルトポーチ。それと黒い革靴だ。


革靴はサイズが緩かったが、なんとか履けそうだったので森の中で既にベッファンから奪い取っていた。


ダンジョンの中に不用意に置いておくと、持ってきた荷物と同じようにダンジョンに吸収されてしまうかもしれないと思った周は、残りの品も奪い、身に着けていく。


騎士服だけは血塗(ちまみ)れになっていたので、そのまま放置した。といっても周も頭から血を被った所為で全身が血で染まっていることに変わりはない。


剣二本とペルトポーチを剥いで、死体から離れるとペテ子に話しかけた。


「死体は運んできたけど、後は?」


死んだベッファンをわざわざここまで運んだのは、ペテ子がDP(ダンジョンポイント)を得られると言ったからだった。

しかし運んだはいいが、これから何をすれば良いのか周は知らない。


「放置しておけば、吸収されます」


ペテ子の出した答えは簡単だった。

つまりは何もしなくても良い。そういう事だ。


「ダンジョン内で殺さなくていいのか?」


スカーレットのダンジョンで見た時は、ダンジョン内で挑戦者(プレイヤー)を始末していたのだ。DP(ダンジョンポイント)を得るにはそうしなければならないと周は根拠なく勝手に解釈していた。


「死にたてホヤホヤなら大丈夫ですよ」


「美味しそうな表現はやめろ」


ペテ子はベッファンの死体の上を飛び回ると、うん、これで良し、と言って周の元に戻った。


「そんなに時間は掛からないと思います。見ていますか?」


「いや、いい。それよりも水ないか?これをなんとかしたい」


周は自分の姿を指差して言う。


「血ですか。格好良いから、そのままでいいんじゃないですか?」


「巫山戯んなよ、お前」


「う〜ん。【環境設定】で【草原】か【森林】を選択して川を配置するのはどうです?そうすれば水がいつでも使いたい放題になりますよ」


【アイテム購入】でペットボトルの水でも購入しようとしていた周だったが、ペテ子の案で考え方を改めた。

飲むだけならそれでいいが身体を洗うには大量の水の確保が必要になる、しかもそれが毎日。

それだけの水を【アイテム購入】で一々(いちいち)買う余裕は今のこのダンジョンにはなかった。


DP(ダンジョンポイント)がとても足りない。それを【環境設定】で(まかな)えるなら)


「そんな事も出来るんだったか。でもDP(ダンジョンポイント)は足りるのか?」


周は質問する。

その時点でペテ子の案は採用されていた。


「大丈夫ですよ。【環境設定】はダンジョンの周りの環境と近いものなら殆どDP(ダンジョンポイント)を消費しませんから。火山地帯に【雪山】を配置したり、この森林地帯を【砂漠】に変えたりしなければ大丈夫です」


「どんなものが選べる?」


「一番DP(ダンジョンポイント)の消費が少ないのは、廃家の周辺に合わせた草原ですね。そこに川を配置して200DP。維持費が100DPというところでしょうか」


「それでも二割か」


「このくらいは仕方ありません」


DP(ダンジョンポイント)を定期的に獲得する方法は、森林で蟻のステータスを確認した時に確立している。だからそのぐらいなら維持できるだろうと、周は頭の中で計算を終えた。


「維持費が払えなくなったらどうなる?」


念の為、維持費についても聞いておく。


DP(ダンジョンポイント)を支払えない場合は一階層まるごと元に戻ります。【環境設定】で環境を構築するために使われた初期ポイントは戻らずに、次の日にです。そして【環境設定】は繰り返す度に構築するDP(ダンジョンポイント)と維持費であるDP(ダンジョンポイント)の値が増加していきます。ですから最初の選択は重要です。それでも行いますか?」


どちらにせよ、ダンジョンの事を学ぶ為にも実践は必要だ。失敗するにしてもこの三日間の内にしておいた方が良いと考えて、周は決定した。


「ああ、頼む」


「はい、ではいきましょう!【環境設定】を使いフィールドを【草原】に」


ベッファンの死体がダンジョンに吸収されるまでの間にダンジョンの一階層は石畳の部屋から【草原】へと変化を遂げる。


地面からは土が盛り上がり、草が生え、それが広がり直ぐに緑で一杯になる。土が盛り上がらなかった部分には石と大量の水が注がれ、それが川となってせせらぎの音が流れ始めた。

囲んでいた壁と天井が消えたようになって境目がわからなくなり、照らしていた灯火が消え、疑似恒星が天井の空に浮かび、地上を照らし始める。

地下という雰囲気はすっかり無くなり、そこは風の吹く気持ちの良い草原となった。


(これは………椅子を置いて眠りたくなる)


「あ〜いい天気だ」


狭っ苦しい場所から開放感のある空間へと変わり、周は思わず伸びをする。これで身体に纏わりつく匂いが血のものでなかったのなら、最高だった。


「身体は洗わないんですか?」


「寝る前には風呂に入る派なんだ、俺は」


その不愉快な匂いを取る為、周は上着を脱ぎ、血で汚れた服を片手に川へと飛び込んだ。

PVが10000。ポイントが100を超えたので記念に今日は二回投稿する事にしました。

これからもよろしくお願いします。

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