表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロダンジョン〜最愛の者は異世界より〜  作者: 0
プロローグ 出会い。
20/54

第20話 挑戦者4

「これでどうでしょうか?」


「そうだな、全員等間隔で広がってくれ。もしもリザードマンがもう一度襲ってきた場合は強化が終わるまで退きながら時間を稼ぐ。全員警戒は継続。次の襲撃に備えろ。ダンジョン内の景色に目を奪われて殺されましたなんて知られたら他のギルド員達に笑われるぞ。笑いものになりたくないなら集中しろ」


「了解です」

「次は楽をしたいからね」

「狩人の眼は良い。次は私が一番最初に見つけてやる」


リザードマンの襲撃を凌ぎ切ったルクス達は、この階層用に急遽考えた日頃使っているものとは違う陣を組んで前へ進む。


それは四人それぞれが四方にばらけ、大きな四角形を作るようにして湖を覗けるほど欄干(らんかん)に近づき、前後左右の他に橋の下まで視野を広げることを目的とした陣だった。


これは言わずもがな、橋の下からモンスターが登って来るのを危ぶんでの事だ。


一度目の失敗は即座に対策する。

これが出来なければダンジョン内では獲物も同然である。


カシャの御手の中では若輩者ではあるが、ルクス達はその辺りはしっかりと叩きこまれていた。


左前方にルクス、右前方にはベルモンド、左後方にはマリナ、右後方にはククルという配置で距離感を一定することを意識しながらモンスターと罠に警戒しつつ、歩を進める。


真っ直ぐな橋。これがダンジョンでなければ、駆けてしまえば少しの時間で通過可能な距離だ。

しかしダンジョンにはモンスターだけではなく罠も仕掛けられている。

それを探りながらだと、どうしても歩みはゆっくりとなってしまうのだった。


剣戟の音はすっかり消え、耳を打つのは足音のみ。

呼吸音にすら気を付けながら彼らは五感を高める。


警戒を続けていると戦っている時とは別の意味で疲労が溜まっていくものだ。

忍耐がないものなら、いっそ襲って来いなどと、何の為の警戒なのかわからない事が頭を巡る者もいる。


四人は肉体的疲労だけじゃなく精神的疲労にも耐えた。

しかし、それが中間地点まで続けばいい加減その我慢も限界となるもの。

一度目に襲われてからモンスターどころか罠さえ一つもない現状に、思わず声を漏らしたのはククルだった。


「あれで打ち止めかな?」

「おい、集中しろ」


注意をしたのはルクスだ。


「ごめんね、でもさ、少しだけ休憩しない?疲れちゃったよ」

「気持ちは分かるけど、ここじゃ無理かな。この階層を抜けたら一人ずつ休息を取ろう」

「ククルさん。もう少し我慢してください」

「馬鹿な事を言ってないで、さっさと進むぞ」


「はーい」


ククルは本当に休憩を取りたかったわけではない。

沈黙続きで、皆に溜まっていた気疲れを何処かで解消したかっただけだ。


緩と急。どちら一方だけをひらすら継続すると質が下がる。

今回の場合は緊張状態の継続による失敗。


それを危険視してこの役目は自分がやるべきだと判断して声を出したのだった。


「こんな時にもククルさんは。ある意味、羨ましいです」

「本当だよね、僕にもククルの真似はできないな」


その事には誰も気づいていない。

誰にも気づかれずククルはこういうガス抜きをさせるのが上手かった。

反感を抱きにくいのは人柄か、それとも別の何かか。


戦闘時もこういうバランスを調整する力はこのパーティーでは彼女が随一だった。

前衛の二人は敵と戦い、後衛のマリナは二人のフォローをする。ククルは背後の警戒、マリナの護衛、二人が立ち向かっている敵への牽制など、これらを全て同時に行っていた。


リザードマンへの対応が遅れたのは、あの場で一番の脅威であったグランドワームへ注意が向いていた所為だ。


二度目はやらせない。ククルはそう考え、さらに集中し警戒網を大きく広げていた。


「あと半分だね」

「そうだな」

「頑張りましょう」

「そだね」


ポツリポツリと四人は視線は皆合わさず、それぞれ別のものを見て会話をする。

そうしながらも当然警戒は解いていなかった。


一度目の失敗から学んだことだ。

だがモンスターが一度目と同じように襲撃しなくてはいけない道理などなかった。


それはこの大橋の中間地点で起こった。

四人の中で気づいたものは一人だけ。気付いただけでも大したものだ。

なぜならモンスターは橋の上にも橋の下にも、湖の中にさえいなかった。

襲撃者はルクス達の警戒の外、橋の上、いやこの階層の天井から降って来た。


いつだって終わりの時は突然やってくる。


モンスターの名はトロール。

妖精種の一種で、特徴は巨躯故の怪力と類まれなる再生力であろう。

その巨大な体躯は人より一回り大きいリザードマンの倍はあった。だがそれ以上はわからない。落下するトロールは身体の上に特注の全身鎧を纏っていたからだ。

それは黒く歪な全身鎧だった。外から見えるのは冷徹な瞳だけ。

手には硬岩でできた無骨な大剣。

それをトロールは獲物に気づかれないまま、上段に構えて風切り音させながら挑戦者の眼前に現れた。


「ベルモンド、避けてっ!」


叫んだのは唯一気付いていたククル。しかしその努力は虚しく、トロールは重力をも味方につけて獲物の頭上目掛けて大剣を容赦なく振り下ろした。


ぐしゃという音と同時にダンと着地音が轟いた。

一瞬の間にベルモンドだったものは肉の塊と血溜まりになり、抗う術もなくその存在は地上から消えた。


「うおおおおおおおおお!!」


仲間を殺されたルクスは感情を爆発させ、考えることなくトロールに向かって剣を振るが、キンッ、と鎧の前にそれは阻まれる。


「ルクス、マリナ。急いで撤退!」


ククルはこいつには敵わないと即座に判断した。


ベルモンドには悪いと思ったが、生きている仲間と自分を優先した結果だ。


「俺はベルモンドの敵を討つ、もう戦うしかない」

「加勢します。他に道はありません。」


二人はベルモンドの残骸に目を奪われ、次にそれをしたトロールへと目を向ける。


「今の私達じゃ無理。すぐに行かないと間に合わない」


撤退路を確認しようとククルが振り返ると、もうそれすら遅いことに気が付いた。


「……嘘でしょ」


そこには同じ鎧を身に着けたトロールが三体同時に落ちてくるのが見えた。


「……私もここで覚悟を決めるしかないみたい」


そうして挑戦者の前に、さらなる絶望が降って来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ