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ゼロダンジョン〜最愛の者は異世界より〜  作者: 0
プロローグ 出会い。
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第2話 猫の訪問


3日後。


ピンポーン。いつも通りに鳴るチャイム。


(あまね)はこの時だけはチャイムが壊れていてくれれば良かったのにと、ドアスコープを覗いた瞬間に願う事になる。


そこには誰も居ない。ように見えたのだが、しばらく覗いていると偶にぴょんぴょんと跳ねる猫がいるのが分かった。


「佐々木、周さんは、御在宅、でしょうか?、(わたくし)、こういう、ものですが、少し、お時間を、頂け、ませんか?」


言葉が途切れ途切れになっているのは、猫がその度に跳びはねているからだ。


ドアスコープの位置は身長176cmの周の胸の辺りなので140cmぐらいだ。そこまでジャンプしているのたがら猫にしては大したものだと周は思った。


猫の胸元には身分を示す名札(タグ)のようなものが掛かっていて、前足で不器用にそれを持ち、チラチラとこちらに懸命に見せていた。


そこに書いてある文字は、今までに見たことがない文字だったので何が書いてあるのか分からなかったが。


このまま放置して隣近所の人に自宅前で跳躍する猫を見られたくなかった周は、渋々ドアを開ける。


「………どうぞ」


騒ぎにならないよう、早々に周は玄関に猫を迎え入れ、ドアを閉めた。


「失礼します。これつまらないものですが」


すると猫は手土産を前足で挟むようにして、周に渡した。


「これはどうも」


本当に手土産持ってきたのか、この猫案外素直だなと、周は言われたことを律儀に守る猫に感心しながら手土産を受け取る。


手土産はずっしりと重い。


(こんな重いものどうやって持ってきたんだ?背中にでも乗せてきた?まさか二足歩行でそのまま?近所の人に目撃されてないだろうな。怪異二足歩行する猫とかいって午後のニュースで放送されたりしないよな)


「本当にこれは意味があったのかしら?」


周の手土産に対する関心など知った事かという具合に猫は勝手に廊下へ進み、頭を傾げていた。


「礼節は必要だろ。何事においても」


「それで話は聞いて貰えるのよね?」


「ああ、聞いてやろう。部屋は曲がって右だ」


「偉そうね、まぁいいわ」


猫は部屋の場所なら知ってるわ、と一言。器用にドアを自分で開け、ちゃぶ台の上に着地すると寝転んだ。





「なんで何日も家に居ないのよ。私行くって言ったわよね!」


周が部屋に入り、ちゃぶ台の前の座布団に座ると開口一番猫は怒鳴る。


この2日間、家を空けていたことを言っているのだろうと、周は察した。同時に確かにあの時に明日来るなんてことを猫が言っていたような気もするなあ。などと呑気(のんき)に思い出しながら口を開いた。


「お前に逢いたくなかった、と言いたいところだけど、理由は別にある」


「それが理由ならこの爪で引っ掻いてるところよ。かろうじて命を繋いだわね、あんた。それで無断外泊の理由(わけ)をきりきり吐きなさい」


爪を見せびらかす猫を見ても周は無反応だったが、これについてのこれ以上の問答は面倒になっていたので、さっさと答えることにした。


「単純に忘れてたんだ」


何やら腹が立っているらしい猫に対して周は受け流すように言う。


「え?嘘でしょ?私は喋る猫なのよ。どうしたら忘れられるっていうの?意味がわからないわ。あんた変よ」


周が悪気なく行う理不尽な断行に、猫は一瞬抱えていた筈の怒りすら忘れ、しどろもどろになった。


「喋る猫に言われたくはない。ショックなのか何か知らんが俺に当たるな」


しかし周の言葉で怒りを取り戻した猫は、ふしゃーと威嚇し始めた。


「あんた以外に誰に当たれっていうの?あんたが原因で怒ってるのに!」


机をバンバンと叩き、私は怒っているわよ。と身体全体で表す。


「少しは悪いと思ってるから、話くらいは聞いてやろう」


「あんた……何様?」


しかし周には最後の最後までその想いは伝わらなかった。






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