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ゼロダンジョン〜最愛の者は異世界より〜  作者: 0
プロローグ 出会い。
16/54

第16話 情報

モニターに映るのは四人の少年少女。


一人は頭から血を流している剣士の少年。

もう一人はその少年に肩を貸している少女だ。


修道服を身に付けている彼女の服には少年の血が飛び、所々を濡らしていてその部分を赤色に染めていた。


二人がゆっくり壁際まで進み腰を下ろすまで、この二人を護衛したのは仲間である槍使いの少年と弓矢を持った狩人っぽい少女。


この四人組は自分達以外に部屋の中に誰も居ない事を確認すると、警戒心を少しだけ緩めて少年の治療と個々に体力の回復を図り始めた。


この四人組がスカーレットの見せたいモノのようだった。


モニターの画面ではこの幼い挑戦者(プレイヤー)達を監視しているらしく、丁寧に一人一人映しているものから四人組全体を近距離から、または遠距離から撮っているものまである。


それも一方向からではなく様々な角度からだ。


気持ち悪い、これが元の世界での出来事なら(あまね)は間違いなくそう思っていただろうが、骨好きの猫と、主人大好きフリスキーな老齢の紳士がやっていることならば別の意味合いがあるんだろうな、と察して黙り、周はモニターを監視する三人目となった。


座り込んでいる剣士の少年は頭に怪我を負ったようで隣にいる修道服を着た少女はドレスグローブを着けている両手を緑の光で輝かせ文字通り手当を行っていた。


(あれが魔法ってやつか)


少女の緑光が少年の傷口が治していくのを見て周はそう判断する。


もうそれを見ても周が驚く事はなかった。

既に常識外の存在が二人も側にいるものだから慣れてしまったのだろう。


それ以外の動きはなく四人組は何かを話しているようだが音声は聞こえもしないので、早々に周はこの四人から興味を失い、一旦視界をその四人から外して周辺を映している別のモニターを見てみた。


それで分かったのは、この場所は【墓場】ではなく、洞窟や地底のような岩肌が囲む一室だということ。


一室というには広すぎる気がするが、ダンジョンとはそういうものだと周は理解している。

ちょっとした野球なら楽しめそうな部屋の中で、四人は、いや四人と倒され壊れている剣の痕などが付いた鉄岩の化け物は場所を同じくしていた。


周の瞳から見れば子供に映る四人組は疲労感が表情に出ていたが、それよりも何かを達成した時のような充実した顔をしている。


「コスプレみたいだな」


彼らを見て周がつい漏らしてしまった感想はその雰囲気を台無しにするのものだった。


「謝りなさい」


先程までと違い、真剣な表情をして注意深く彼らを見ていたスカーレットは眉をひそめて注意した。


「悪い、巫山戯た訳じゃない。ただ口から勝手にな」

「……………………」


周とスカーレットの間に一瞬空白が出来るが、その空気を読んだスタークが一息、コホンと流れを作る。


「………スカーレット様、お時間が」


「そうね、周がバカな事を言うからいけないのよ。これから起こるのは本物の闘争。集中しなさい」


そうして流れ出した空気がスカーレットを喋らせた。


「相手はあの子達か?」

「そうよ、まさか可哀想とでも?相手の外側だけを見て判断しているならそれは愚かな事よ。目に焼き付けなさい。あれが私達を殺しに来るものよ」


「そうか、そういう場所だったな。ここは」


弛緩した心を縛り付け、周も挑戦者の一挙手一投足に目を向ける。


「あれが今回に標的、周、あんたならどう対応するの?」


「まずは情報収集だろうな。相手が何が出来るか、出来ないか。何が得意で苦手なのか、大切なものは何か。普段と緊急時の思考回路、言い出したらキリがない。そういうものを集めて対処する」


「案外保守的ね」


「俺は頭も別に良くないし、身体能力も中の下といったところだからな、誰と勝負しても半分は負ける。だから相手の苦手な部分で勝負をする癖がついてるんだよ。足が速い奴にかけっこでは絶対に挑まない。全てで負けそうならそもそも何もしないってな具合にな」


「それでもやらなくちゃいけないなら?」


「だったら勝負自体をご破算にするか、許容範囲内のズルをする」


「気持ちいいぐらいの卑怯者ね」


「正々堂々なんてのは才能ある強者の戯言だ。俺が使うとしたら相手を言葉で縛る時だけだ」


「その方がダンジョンマスターには向いてるかもしれないけど」


「そりゃどうも」


「それで、今しているのがその情報収集ってやつよ、私が見ている情報をモニターに表示」


するとモニターの一部には文字と数字の羅列されたものが並んだ。


まず四人の名前。それぞれの下にはLv。その横には数字が付き、他にも等級や種族や称号や職業などが並ぶ。


さらに個々のParameterと表示されたものはHP、MP。STR()VIT(丈夫さ)AGI(敏捷性)DEX(器用さ)INT(賢さ)HIT(命中率)MND(精神力)LUK()と様々な種類があり、その下には状態異常を示すconditionや正気さを示すとkarmaというものまであった。



「これが【鑑定】によって見ることができる彼らの情報、感想は?」


「俺はこれを測る物差しを持ってない。だから不必要と言わざる得ないな」


「等級については説明したじゃない」


「全員が第三等級ってのはわかる。サラマンダースケルトンの一つ上だ」


「そしてあんたの二つ上ね」


「等級が強さを示す数値だとしたら、四人がここに来たら俺一人の場合は、直ぐに逃げるよ」


「それも一つ手よね。でもだからここに来る前に挑戦者をなんとかするのがダンジョンマスターのお仕事よ。それに彼らを殺せばDPが獲得できるわ。ついでにその算出方法を教えておいてあげる。簡単よ、この情報(ステータス)のParameterのHPからLUKまでの数字合計数が挑戦者を命を奪った時の得られるDP(ダンジョンポイント)になるってだけだから。足し算は出来るわよね?」


「四人でざっと6000DPぐらいか」


「それと一日滞在毎に1%のDP(ダンジョンポイント)が入るから6000DPだと60DPが加算されるの。既に二日間このダンジョンにいるから120DPが足されることになるわね」


「Parameterに左右されて、DP数が上下するのか、なら挑戦者のParameterの合計が100以下だった場合は1%のDPは入って来ないのか?」


「知らないわ。そんなにパラメーターが少ない相手がダンジョンに挑んでくることは無いし、あったとしても直ぐに死んでしまって滞在ポイントは得られないから。気になるなら自分で試してみたらいいんじゃない?」


「そうするよ、ステータス以外の細かい情報は?」


「それについてはスタークが持ってるわ。まぁ問題なく私の思い通りになる筈よ。ならないならその都度調整、じゃあお仕事を始めるわよ。周、ちゃんと見てなさいよ」


そう言ってスカーレットの視線はモニターに戻る。


周達が話している間にモニターの中の挑戦者たちは束の間の休息を終えて、次の階層を目指して、十階層から十一階層に繋がる扉を開ける。


それを出迎えたのは数体のリザードマン達だった。


十一階層の【環境設定】は【大橋】。


地底湖を横断して架けられたアーチ橋は外敵が侵入すると青い炎が灯る。その光が湖に反射して地底湖全体を青色に染めていた。

その入り口の近くで挑戦者は足止めを食らう。必死な形相でリザードマンと戦闘を繰り広げる様子をスカーレットは冷めた目で見つめていた。


「同数のリザードマンで足止めが成功。思った通りとはいえ弱いわね、この挑戦者達は」


未だ続いている戦闘を観察しながらスカーレットは彼らを酷評する。


「人類族のそれも年少者という部類の中では上等の腕ではありますが、スカーレット様のおっしゃる通りです。もしよろしければ標的を変更致しましょうか?」


「そうね……あの年頃の人類族の挑戦者ならあの程度が限界だったわね」


「選択者や転生者など逸脱者達を除けばそうなるでしょう」


「都合良くそんな挑戦者が現れるわけはないし、訪れたとしても十一階層のうちのモンスター達で対応できなければ意味はないか……いえ、このオーダーを出したのは私だったわ。それに今回は弱い方がいろいろ際立つ筈だからいいのよ」


そろそろいいかしら。と言ってスカーレットは下知する。


「リザードマンには撤退命令を。気付かれないように注意を払いながらね」


このまま挑戦者が倒れてしまっては困ると、スカーレットの施しからではなく計画に沿った命令は施行され、リザードマンの一体がわざと剣で斬りつけられて湖の中に落下したのを皮切りに、残りのリザードマン全員は橋から湖に飛び込み、怯えたように偽装して逃走した。


「挑戦者が橋の中間に到達するまでは待機、その後、プランを実行」


スカーレットは獲物が罠に引っ掛かるのを、いつもの通りに待つのだった。

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