第14話 等級1
「まだ時間はあるかしら?」
サラマンダースケルトン達が奮闘し、何とか全員無事にコアルームまで辿り着くのを見守る、という最後は完全に誰かさんの遊興へと化した謎の行事が終わると、その誰かさんは満足そうな顔でスタークに尋ねた。
「はい。挑戦者はまだ十一階層には到達しておりません」
淀みなく答えるスタークも幸福を享受しているようだった。
主人の幸せを自分の幸せに変換できるスタークに感心しているのは周だ。
「これから何かあるのか?」
時間を気にしている二人に対して何も知らされていない周はそのことが気にかかる。
「直ぐに分かるわよ」
「サプライズなら結構だ」
つっけんどんな返事をするスカーレットに周は拒否の姿勢を示す。
「駄目よ。ここに来たら絶対に見て貰う事になっているから」
「拒否権なしのサプライズは最早嫌がらせでしかないぞ」
「半分、嫌がらせでもあるからそれでいいの。それまでこの余った時間で、もう一つのダンジョン運営の重要な、いえ、この世界の重要な要因でもある等級についても説明することにするわ」
だから何?という態度が似合う黒猫は周の要求など気にもかけず、一人ひた走っていく。
「認めちゃったよ。もういい。それで等級って?」
だから周もこう聞き返すしかなかった。
「そう、等級。この世界には等級、そうね……世界が決めた抗えない原則の一つと言えばいいかしら?そのようなものが存在するの。ある一定以上の力を持ったものには全てに当て嵌まる原則。モンスターは勿論、武器や魔法………そしてこれはダンジョンにも当て嵌まるものがあるの、次にあんたが学ぶのはこれ」
「前置きはわかった。モニター使うんだろ?」
周はモニターを目で指した。
「ええ、じゃあ早速例を見せましょうか」
スカーレットがそう言うと、モニターにはコアルームにいるサラマンダースケルトンのアップが映った。
「スターク、サラマンダースケルトン達に等級の違う武器を。魔剣も使うからジェリコ姉妹の魔剣のコレクションからどれか一つを転送して頂戴、ああ、でも希少でもなく等級はあまり高いものじゃなくていいわよ。あの子達泣くと長いから」
通称ジェリコ姉妹。本名はジェリスタ、リコスティッド。
彼女らは合わせてジェリコ姉妹と呼ばれているこのダンジョンの武器庫の管理人である。
年がら年中武器を愛でている新しいタイプの変態でもあり、寝起きも武器庫でしているので、他の階層に来る事は少なかった。
一度、無断で大量の武器を壊したスカーレットは普段武器庫から出ない筈のジェリコに昼夜問わず付き纏われ、泣きながら無言で非難の目を向けてくる数日間に耐えた経験がある。
それ以来、スカーレットは不必要な武器庫の使用をしなくなったのは有名な話だった。
「承知しました。ジェリコは武器の事となると目の色が変わりますからな」
表情に感情が出にくいスタークでさえ少しばかりげんなりした様子が見て取れるのだから、ジェリコ姉妹とは悪い意味で大したものなのだ、
「魔剣なら十日前に魔剣持ちの挑戦者から入手したものが何本かあった筈です。それを使いましょう。あれならば万が一の事があっても愛着は少ないかと」
言いながらスタークが左手を宙にかざし腕を伸ばすと、そこに透明な穴でもあるかのように左手の指先から手が消えていき、肘から先の腕が完全に消失した。
スタークは何でもない事のようにそのまま腕を捻り、探しものを見つける為に腕を動かす。
そして透明な穴から一本の剣を取り出した。
それは美しい細い剣だった。
それからDPを使って二本の剣、木剣と鉄剣を購入し、計三本となった剣を指に挟み込む。
そしてもう一度宙にある透明の穴にそれらを放り込み、モニターに映るコアルームに種類が違う三本の剣が出現させた。
「次はどうしましょうか?」
「順に拾わせて。周、あんたはモニターに注目」
「はいよ」
こちらは何が起きているのか分かっているのでどうという事はないが、モニターの中のサラマンダースケルトン達は突然現れた剣に驚き、身体をビクつかせていた。
「皆さん、聞こえますか?次はその剣を拾いなさい。但し、手に取るのは一人でのみとします。他の者は手伝ってはいけませんよ。最初にいずれかの剣に触ったものがそれを持ち上げる事が出来たらその武器を与えます。早い者勝ちです」
そんな彼らにスタークがそう指示を出すと、訝しげに剣を見ていたサラマンダースケルトン達が一転、争うように近づいた
スコップを持っていた二体以外が先に剣に辿り着き、残りの三人の中で争いに勝った一体のサラマンダースケルトンが三本の剣の前に立った。
「木剣、鉄剣、魔剣の順にです」
「見てなさい」
サラマンダースケルトンはまずは木剣を持ち上げる。その姿はなぜか誇らしげだ。
続いて鉄剣も持ち上げ、最後の魔剣を持ち上げようとしたところで前のめりに転んだ。
魔剣は拾えなかった。
争いに負けた二体は、ケラケラと笑っている。
その姿を見て、周はスケルトンにも表情があるんだな、と関係の無い事を考えていた。




