彼らは青春を謳歌する
「津野君達、新しい友達できたかなあ」
柏原は言う。
時刻は十時頃、詳しい日程は知らないが、入学式は終わった頃だろう。
「どうでしょうねえ、彼のことですからそこまで心配はないのでしょうけど」
自分の高校生活を思い出してか、間は少し遠い目をしていた。
「早く帰ってきてくれないと暇なのよねー」
そう言った幸夜は、何かを察して庭先を見る。
「おや、あなたがこちらにいるとは珍しい」
そう言った酒坂の方に目をやり、すぐにまた景色を眺める老爺がいた。
「久しぶりに桜が見たくてな」
ぬらりひょんはそう言い、またお茶をすする。
「はあ、綺麗だ」
嘆息するように彼は言う。
さああ、と桜を揺らしながら春風が舞った。
ふと視線を戻すと、またぬらりひょんはいつの間にやらいなくなっていた。
――相変わらず妖怪とはかくあるものだ。と酒坂は思う。
「学校生活楽しんでくれるかなあ。いじめとか、辛いこととか? ホームシックとか? 泣いて帰ってきたらどうしよう?」
柏原は保護者のように津野らの心配をしている。
「高校生ですからね、色々としがらみもあるでしょうけど」
――だが、妖怪がこうであるように、彼らも我々の心配を何処吹く風と、そうあるんだろう。
「さあ、どうかは知らないが、そんなモノとは関係なく、彼らは青春を謳歌するのだろう」
酒坂はそう言って笑った。




