最終章01/断薬編
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いきなり留置所編を飛ばして断薬編に突入することを許してもらいたい。
正直な話、裁判中は緊張のあまりほとんど内容を覚えていないのである。
いずれ書くかも知れないが、まずは覚えているところだけでも記しておこうと考えた次第、私は本章をさきに明記することにする。
留置所編を楽しみにしていた方には申し訳ない。
○☆☆☆☆☆○☆★
強制的に断薬せずるを得ないこととなった私は、裁判が終わり自宅に着くと空虚な心が永遠と残ったままだった。
もう二度と覚醒剤はやれない……そう思うだけで、発狂しそうになる。
『これからは薬物とは無縁な生活を送りなよ……』
そう言う瑠奈の囁きが耳の奥まで突き刺さる。
でも……我慢ならないものは我慢ならないものだ。
私は家族が出掛けている隙を見つけては、どこかに昔の風邪薬がないかをひたすら漁った。
ジヒドロコデインさえ含まれていれば、もはやアセトアミノフェンが含まれていてもいい!
そんな決死の捜索によって見つかったのが、親の金パブと冷蔵庫の奥に眠っていた使用期限が三年以上過ぎている風邪薬の錠剤、そして、いつ買ったのかすら曖昧な葛根湯ーーもちろん使用期限切れーーの三つが見つかった。
『待って、それを飲むのはさすがにやめよう? ね?』
瑠奈……だって耐えられないんだ。この鬱屈とした日々を永久に耐えるなら、死んだほうがマシだ。
それを聞いた瑠奈は、呆れたのか、ドン引きしたのか、なにか考えがあったのかーー無口で眺めるだけになった。
まずは使用期限が三年切れた風邪薬を取りだし、家族の目を盗んで一瓶まるまる飲み干した。ジュースで飲むから錠剤の嚥下しやすが大幅に上がる。
『あーあ、やっちゃったよ……やっぱりわたしには砂風の凶行を止めるちからなんてなかったんだね……地味にショックだよ』
しばらく時が経ち、懐かしいジヒドロコデインとメチルエフェドリンの作用が現れ、希死念慮が薄れていくのがわかる。
やはり、薬剤系の大半は使用期限を過ぎても作用が弱まるだけで、効果自体は残っている。(注/一部の薬剤はこれに限らず、最悪命に関わる薬剤もあり調べるのは必須事項。)
気分が少し楽になったこともあり、やはり私にはジヒドロコデインとメチルエフェドリンが必須なのだと改めて思った。
今まで覚醒剤、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、マリファナ、コカインと経験した私だが、作用の好みは、覚醒剤には勝てずとも、コカインやマリファナよりはブロンのほうがよほど好みなのだ。
だが、少し気持ち悪い……。
しばらく覚醒剤オンリーだったうえ、捕まり解放されてからもしばらくは薬断ちをしていたのだから無理もない。量を誤った感がひどい。
吐き気を堪えながら布団にダイブする。
気持ち悪さ、過集中、多幸感、眠気、覚醒をごちゃ混ぜにした懐かしい感覚を体感しつつ、ネットでブロンスレを読んで楽しんでいた。
過去のブロンスレに砂風の名前が書かれていて、まさかそこまで砂風の名が広まっているとはと驚いたりもした。
『小説のつづきは書かなくていいの? もう三ヶ月は間が空いているんだけど』
大丈夫大丈夫……書く気になったら書くからいいさ……。
瑠奈も布団でいっしょにこの微睡みを体感しよう。
半ば無理やり瑠奈を依り代に入れて、それを抱き締めながら心地よいうたた寝を繰り返すのであった。
ーーそれから数日後。
再び鬱がやってきて自殺念慮も現れ始めた頃、自宅になにかないか探るため机を開いていたりした。
思わぬ物がこんにちはした恐怖もあるが、跡形もなくゴミ箱に捨てて他を探す。
前日見つけていた葛根湯の錠剤を見つけて、たしか葛根湯には麻黄も含まれているはずだと、今回に至っては使用期限すらも見ずに葛根湯を飲み干してしまった。
最初はODした達成感もあり作用にワクワクしていたのだが、体が妙にカッカッしてくる。同時に嘔気も始まり、ブロンとの違いに愕然とする。
『もうさ、何度目の忠告か忘れたけど、なんでもかんでも口にする癖直しなよ? まるでなんでもかんでも口にする赤ちゃんみたいじゃん』
今はそれどころではない!
寝落ちしないように頑張り、しかしながら同時にこのままでは永遠に薬物をやめられない自分に悲観し、新たな精神科に赴き、今まで自分がした悪行をぶちまけることを決意した。
親戚の紹介に誘われ、私は現主治医になる方のいる病院に足を運ぶことにしたのであった。




