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第四章03/違法ドラッグ(前編)ーイリーガルドラッグー

 二ヶ月後、私は試していない薬物をやりたくなり、売人を探すことにした。

 今思えば、単に覚醒剤がやりたいだけだったが、当時はそれを認めたく亡かったのだろう。


 違法ドラッグを乱用している人間は、その薬物の利点しか見ようとしない。メリットにしか目が行かないのだ。


 たとえば覚醒剤。

 たしかに覚醒剤は身体依存が皆無である為、薬物が切れたからといって暴れたり発狂したりなどはしない。

 そして、断薬しても一二週間は普通に渇望が湧かずに過ごせることもある。

 なにより、覚醒剤は何をするにしても、ブースターの役割を果たしてくれるのだ。

 これが、日本国内での乱用者が一番多い薬物が覚醒剤である理由だろう。


 勉強に使えば捗るし、仕事に使えば集中できる。掃除や洗濯など面倒な家事も、一度覚醒剤を入れれば面倒くさいといった感情を忘れられる。

 多弁になりコミュ障は治り、暗いことを考えないようになる。

 性行為に使えば男性なら4~5倍の快楽、女性なら数十倍の快楽になるとすら言われている(※注/自慰だが、私の場合は2倍、よくて3倍程度の快楽で、5倍は言い過ぎな気がするが……)。


 これら沢山のメリットがある。

 これを見て『やりたい』と思ったひとがいるなら、待ってほしい。

 以下にデメリットを並べていくので、それを見てからにしてくれ。


 無食不眠で肌はヌメヌメガサガサと吹き出物や出来物だらけになり、アポクリン汗腺(ワキガの素)が増加して体臭は悪化、痩せるではなくて(やつ)れる。汚い痩せかたをするため、モンスター的な容姿に徐々に近づいていく。

 ドーパミントランスポーターなどに影響を与え黒質が徐々に死んでいってしまう。こうなると最後、常人が嬉しさ100%な出来事を、覚醒剤依存症者は30%の嬉しさや喜びすら感じられなくなる。

 つまり、嬉しい・楽しい・喜びなどが、次第に覚醒剤なしでは感じられなくなってしまうのだ。


 そうなれば、人生が一気につまらなくなる。


 自殺未遂をバカにしていた自分が自殺未遂をするようになるほど、今の私の人生はつまらないのである。



 覚醒剤乱用者にも大麻乱用者にも言えることは、そのドラッグの利点にしか目を向けずにデメリットには見向きもしないことだ。

 情報収集もそうである。

 ネットなどから情報を得る際の取捨選択が、自分の都合の良いほうばかりしか取らなくなり、都合の悪い情報は見てみぬフリをする。



 当時の私も例に漏れず、ネットや書籍、知人や売人からの話を聞いたり見たりしていたが、乱用最中はメリットばかりにしか目が行かず、デメリットは見ようとしないでいた。

 もしかしたら、当時の私は現実を直視したくなかったのかもしれない。







●●●●●●







 私は、幾人もの売人と連絡を取っていた。

 いや、正確には詐欺師と言ったほうがいいだろう。

 ネットの掲示板に書き込まれている売買の情報は、七割型詐欺師だと考えてもらって構わない。ちなみに、郵送タイプの売人は95%詐欺である。

 売人は、基本的に立ち会いである。痕跡がしっかりと残る方法は使いたくないらしい。


 私は対面の売人と三回会い、三回とも詐欺であった。郵送で頼んだら、またもや詐欺。計四回、合計9万円ほどの金銭を(どぶ)に捨ててしまっていた。


 しかし、ここまできて、ようやく詐欺師と実際の売人との違いを見分けるコツがわかってきた。


 それは、意外と単純である。


・対面型の売人を選択

・電話対応の売人を選択

・対面時、購入するパケから一粒味見させてもらうと連絡で強調

・以上を言葉だけではなく実行


 この四つを守るだけで詐欺を回避できた。


 詐欺師なら電話番号を晒したくない為、掲示板には書き込まない。対面は詐欺がしづらい。その場で味見させてもらえる売人がほとんど。無理なら買わない。味見しようとすると逃げる売人もいる。


 これらを守り、私はついに二人目の正規の売人に出会えた。




○☆☆★☆☆○




 私は川崎のある街で車を待っていた。

 ドキドキしながら待っていると、売人ーー売人Bが車でやってきた。


「どうも」


 売人Bが言う。


「失礼します」


 私はそう断りを入れながら助手席に乗り込んだ。


 売人Bの見た目は、半グレーー失礼ーーイケメンながらも力強さを感じる肉体を持っている男性だ。ところどころ装飾品が派手で、そこからチンピラオーラが漂ってしまっている。

 正直言って……怖い……。

 売人Aとは違い、どうにも堅気には見えない容姿な為、妙に緊張してしまう。


「どこでうちを知ったの?」

「え……」あ、そういうことか。「裏2ちゃん●るで見かけて」

「アングラのほうじゃなかったかぁ~、あっ、はいこれ。アイス1とチャーリー1と、で、紙が一枚だけ。6ね」

「確認してもよろしいでしょうか?」


 いつの間にか発進している車にビビりながら、キモヲタでもやることはやるっ、と確認可能か再質問(電話時でOKはもらえていたが、念のため)。


「もちろん。しっかり確認してよ」


 封筒から覚醒剤だけを取り出す。

 どちらにせよ、コカインの味なんて自分にはわからない。

 とりあえず、覚醒剤が詐欺でなければ最悪いい。


 そう考えながら、パケから覚醒剤の粒を少し指に着けて舐めてみた。


 ーー懐かしい。二ヶ月ぶりなのに、味はちゃんと覚えているんだなぁ……。


 独特な苦味を堪能しながら、間違いないと頷いた。


「でも、買うパケから調べるなんてやる必要あった? どんな詐欺にあったの?」


 売人Bに聞かれ、迷いながらも私は正直に答えた。


「本物を味見用に出して、渡してきたのは岩塩だったんですよ……」

「マジ!? ははっ! 本物持ってる詐欺師に会うって……ある意味才能だろっ! まっ、うちは詐欺じゃないから安心してまた使ってくれよ」


 それだけ残すと、車が停車したので降車し別れを告げる。


「ありがとうございました」

「こちらこそ。じゃ、また」


 そう交わすと、私と売人Bは一旦別れるのであった。





コカ☆☆★☆☆イン





 帰宅後、真っ先に試したのはコカインである。

 覚醒剤に似ており、スニッフでラッシュを感じられるともっぱら噂だからだ。

 カッターで削りながら、粘土みたいな塊を削り粉状にしていくと、鏡に散らし、カード(ヴァイス・シュバ●ツ)でまっすぐの細長いラインをつくった。


 これで準備は万端だ。

 あとは、鼻にストローを差し込み、ラインに沿って程よい勢いで吸い込んでいく。

 キーゼルバッハ部位という、鼻粘膜に満遍なくまぶす。


 すると……。


 ーーな、なんだこれ? 覚醒剤とは違って暑い?


 全身が生温かくなると、覚醒剤とは違った覚醒状態へと移行した。


 覚醒剤は目の前が開けてスカッとする感じだが、コカインは覚醒しながら酩酊感が含まれている。


 そういえば、コカインは麻酔薬としてちゃんと積載されているんだよな……麻酔っていうのなら、この謎の陽気な感覚も納得がいく。


 しばらくボヘーっと明るいテンションを楽しんでいたが、三十分弱経過した時、猛烈に怠い感覚に襲われた。

 それに耐えられず再びコカインを吸引→テンションアップ→テンションダウン→吸引→アップ→ダウン→吸引→アップ→ダウン→吸引→アップ→ダウン……と繰り返しつづけていく。


 ーーん?


●●

 ●

   ●●●

●●●●

● ●  ●●

 ●


「ーーはっ!? あれ?」


 気がついたら、机に突っ伏したまま眠っていた。

 いや、あの急激な落下……眠りと言うより気絶に近くないか?


 コカインを見ると、いつの間にかほとんど使いきってしまっていた。


 あれ……コカインの致死量って0.5gじゃ……。

 私は寒気を覚えながら眠るのであった。






リゼルグ酸☆☆★☆☆ジエチルアミド






 あれから数日、覚醒剤を定期的にスニッフするようになっていた。

 覚醒剤を使うと、自慰が気持ちよくなる……どれくらい気持ちいいのかというと、オカズ探しに熱中し過ぎて薬効が終わってしまうくらい気持ちがいい(どういう意味だ?)。


 そんな中、そういえばLSDも一個だけ買っていたなぁと思い出し、休日、友人と遊ぶ前に舌下に置いて吸収してみた。


 しばらくすると周囲の建物が妙に斜めって見えてきた。

 倒れないのかな~と眺めていると、友人到着。

 友人の顔が縦に二段重ねに二つあった。


 …………ん? 二つ?


「うわっ!」

「なんだよいきなり……秋葉原に行くか、どっか遠出するか、遠出するならレンタカー借りて行こうぜ」


 友人Sの顔が何故か二重に見える。

 しかし、二重に見えるのと建物が曲がっている事以外は、特段おかしなことはなにもない。

 だから耐えられるーーわけあるかっ!


「ごめん、今日やっぱ無理。吐き気が止まらない!」


 そう言って自宅へと逃げ帰ってしまった。

 友人Sにはすまないことをしてしまったなぁ……。


 



○☆☆★☆☆○





 相変わらず、覚醒剤だけは買うのを忘れないでいた。

 最初こそ、なければないでよかった物だったのに、次第になくてはならない物と変わってしまったのだ。


 もうブロンは飲んでいないが、覚醒剤の断薬ができなければ無意味ではないか。と、今さら後悔する。


 後悔しながら、サラ金からお金を借りる。





○☆☆☆★☆○





 売人Bとの車内での会話。


「金欠なら、やっぱ静注にしたほうがいいよ。使用量も減るし、効果は高いし」


「……じゃあ、道具、貰えますか?」


「ほら、二本付けとくから」




 ーー私は、インスリン用の使い捨て注射器を二本、売人Bから受けとったのであった。






●●●●●●





 こうして、覚醒剤の本領を体験することになる。

 無論、薬効も凄いが……依存性はもっと凄い。

 こうしてコレを書いている今、(詳しくは後半に書くが)私は無職かつ双極性障害で精神科に通院するハメになってしまっている。

 どういう点が覚醒剤、それも静脈注射の凄い点なのかを、次章から語らせていただきたい。

 




※現代では売人とのやり取りは変わってきている。電話連絡は寒い時代になったのだ。また、詳しい取引方法等は書かない。なぜなら私は既にやめているし、趣味で情報を集めているだけで乱用者を増やす意図はないからだ。この当時の情報を鵜呑みにすると痛い目を見るだろう。

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