姉妹の勘違い
魔物
魔物は自然発生したり獣が魔物化したりして発生する。魔物化したばかりだと魔石が小さく薄い。魔物の強さは体に取り込んだ魔力に比例する。そのため魔物は積極的に魔力の濃い土地に移動したり魔力の高い生物を補食する。
魔物通しで補食しあうのは食事や魔力を摂取するためであるが効率は悪い。これは魔石が魔力を取り込んでしまうためであるのだが、魔力と魔石では魔力の方が吸収効率がよく、固形の魔石では摂取しても消化できず半分も取り込めない。
その点人間は格好の餌である。理由としては、人間は魔石を体内に生成できない、よって体内に液状の魔力が血液を通して循環し隅々までに行き渡っている。そのため、良い魔石を持ってる魔物を狩るよりも、その辺の魔力の薄い人間を狩ってる方が遥かに吸収効率が良いためである。
「あの…お兄さん?ちょっと良いですか?」
後ろから少女とおぼしき声がした。振り返って見ると草の影から2人の少女がいた。年上の方は金髪ショートで美人だ。肩掛けのバッグを斜め掛けしつつバッグを抱えている。年下の方は整った顔立ちで将来は美人間違いなしなレベルだ。年上の背に隠れて顔を少しだけ見せてこちらを伺っている。かわいい。
「あの、ゴブリンを倒されていましたが冒険者の方でしょうか?」
姉妹だろうか?年上の方が質問してくる。
この世界には冒険者がいるのか、この世界では俺みたいなやつでもなれるのだろうか?
何も答えない俺を不審がっているのが分かる。
「あの、冒険者の方では無いのですか?…… 」
少女は額から汗をしたたらせ聞いてくる。緊張してるのだろう。
「ああ、俺は冒険者では無いよ?どうしたの?」
俺はなるべく緊張を解こうと話すが、俺が冒険者でないと分かると顔を青くする姉妹。そして、妹?の方は気を失ってしまった。
「あ、あ、あの、何でもしますからどうか妹だけは見逃してください!なんでもしますからどうかお願いします!」
姉は両手を合わせ泣きながら必死な懇願をしてくる。なにか悪いことをした気分になってくる。
「なんか勝手に話があらぬ方向に進んでいるけど訳を聞いても良いかな?」
とりあえず落ち着かせようと訳を聞いてみるが……
「私では不満なのは分かりますがどうか妹だけは助けてください。たった1人の家族なんです!」
なんか話が噛み合わないし何かと勘違いしているのか……
少女は今も頭を伏せ懇願している。そんな光景におまわりさんがいないか気になってくる。
「なにか勘違いしてるみたいだけど別に俺は君たちに危害を加える気はないよ?」
身体をピクリと動かす姉だがまだ祈りのような姿勢は変えない。
「俺は今道に迷っていてね、何処か食事ができるとこはないかな?」
お腹をさすりながら腹の音がなる。それを見て姉は少し警戒を緩める姿を見せた。
「何かあったのかな?」
「最近街で大型の魔物が出たらしく街を捨てた人達が盗賊化してるんです。」
少女の説明を聞き不安がよぎる。
盗賊がいるのか…… ますます、異世界っぽくなってきたな。
「なるほど、つまり俺を盗賊と勘違いしたのか。」
「勘違いとはいえすいません。」
申し訳なさそうにする姉を見て告げる。
「別に構わないよ。それよりもうすぐ日も暮れるし何処か泊まりたいな。」
「それなら私の家で止まりませんか?そのゴブリンの魔石を頂けるなら夜食もお出しできます。」
「そうか、ならお言葉に甘えようかな?」
そう言うと肩がけのバッグから刃物を取り出し心臓のあたりをえぐり始めた。
(これはかなりエグい絵面だな、それに臭いも酷い)
血肉とゴブリンの臭いが混ざり少し気分が悪くなった。そんなことを気にもせず姉は黙々と魔石を取り出していく。
「凄く手際が良いけどよく取るのかい?」
「いえ、魔石を取ることはなかなか無いです。ですが兎や猪なんかは狩人のおじさんの手伝いで捌きます。」
この慣れた手つきは日常生活で身につけたものなのかと自分より小さい子が行う作業に感心してしまう。
魔石を取り終えた姉が一息つき刃物をしまう。
「それでは村に向かいます。」
妹を背負おうとしてよろける少女。
「俺が妹さんを背負おうか?」
「え?良いんですか?」
ためらう様子を見せる少女にちょっとドキッとした。
「ああ、問題ないよ?それに俺が背負ったほうが早く着きそうだしね。」
「あ、そうですね。それではお願いします!」
納得した様子で俺に妹を預ける姉、日も落ち始めかというような微妙な時間では急ぐ必要がある。
「それでは村に向かいますのでよろしくお願いします。」
そう言って村に向かって出発した。
魔石
魔石に赤いものと青いものがある。
赤いものは主に魔物からとれる。換金したり利用したりと汎用性がある。大きさや純度で価値が決まる。ゴブリンレベルでは色が薄く小さい。
青いものは自然に生成されたもので魔力溜まりから生成される。主に装飾に利用されるか金の代替として所有することも多々ある。