お兄ちゃんとして
「ウメノさん、貴方を疑うようで申し訳ないですが少し付き合ってもらいます。」
突然胸倉を掴まれて俺はたたらを踏んだ。
「えっ……」
俺があっけにとられているとグルリとシルクを軸に半回転させられバランスが崩れる。ボロボロの服とズボンのベルトを掴まれてシルクの頭の上に持ち上げられてそのまま柵の向こうへ投げ飛ばされた。
落下防止用の柵を越え視界には地面が広がる。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ」
俺は落下のため枝葉に顔を切りつけられながら咄嗟に手近な枝に手を伸ばすも枝葉はしなり折れてしまう。
バキッバキッバキッ
何メートルか落下して視界が開けるとそこには吊り橋があった。
あそこに着地するしかない!
俺は錐揉みしながら落ちるがスキルを使いタイミングを合わせ縄部分を掴む。
橋が大きく揺れ振り落とされそうだ。
握っていた縄の部分が切れて橋が傾いた。
「なんなんだあのシスコン野郎!絶対許さねぇ!」
悪態をついたところで何やら足音が聞こえる。
タンッタンッタンッタッタッダン
シスコン野郎が枝を上手く使って降りてきた。橋を支える支柱に着地したシスコン野郎は橋の縄からぶら下がる俺を見下ろしている。
「そんな無様な格好をしているようでは気高い我が妹と狩に行くなど言語道断!大人しく尻尾を巻いて帰るが良い!」
シスコン野郎が吠えるので俺も頭にきた。
「おいシスコン野郎!俺は元々帰るための手段として狩に行くんだよ。テメエの妹にちょっかい出されるのが心配ならテメェも狩に来れば良いだろうが。」
俺は言いたいだけ言って俺は縄を登る。橋を支える残った縄に手をかけ一本の縄をよじ登り立ち上がる。
異世界に来て命綱無しの綱渡りをする事になるとは思わなかった。
そして俺が立ち上がったところで何を思ったのかシスコンが支柱から飛び出し俺に向かって縄の上を走り出した。
「成る程一理あるな。だが私は我儘なんだ!君を打ち倒しケイト共に2人で狩に行くとするよ。」
シスコンが俺の背後に迫る。俺は第三者視点に切り替えて様子を窺う。奴が近づくにつれ足場の揺れが激しくなる。
シスコンは細い縄の上をジャンプして俺の背後から飛び蹴りをかましてきたので、俺は振り返って足首を掴んだ。レベルアップで力が増したお陰で受け止めるのは簡単だった。
「なに!?」
シスコンは驚きの声を上げる。
掴んだは良いものの俺の両足はフワリと浮かび縄とお別れをした。足首を掴んだまま俺の身体は落下を始める。俺は左手で再び縄を掴んで宙吊りになってしまう。右手には逆さまのシスコンがぶら下がっている。
縄を酷使してしまったせいかどこかで縄の悲鳴をあげる声が聞こえる。
ブチッブチ
縄は切れる寸前で片手には白髪のシスコン。俺はどうすりゃ良いんだ?
「ここまでのようだな!光たる妹に群がる羽虫よ!地に堕ちろ!」
こいつは何を言っているんだ?と思った矢先シスコンは俺の手の甲を蹴り上げた。反射的に俺は手を離してしまい驚きを隠せなかった。
奴は落下が始まると同時に空中で姿勢を整えた。そして、下から光が走ったかと思うと奴は空中を蹴って跳び回る。
「なんだそれ……チートだろ……」
俺は驚いて言葉を漏らす。
「驚いているようだがケイトの側に居たいならせめてこれ位の魔法はやってもらわないと困るんだよ!」
シスコンは何度か空中を蹴って俺に向かってくると今度はぶら下がる俺に蹴りを浴びせ、跳んで蹴ってを繰り返す。
シスコンの攻撃を腕や脚でガードするがこちらは防戦一方だ。
「どうした?ミノムシのような格好だぞ?」
シスコンは言いたい放題言って攻撃を続ける。
チッ!エルフってのは好き勝手言いやがる種族なのか?イケメンな割に心は荒んでそうだな。
そうした攻防を続け痺れを切らしたのかシスコンは真正面から俺に手をかざした。
「エアブラスト」
俺は聞き慣れない詠唱を聞き防御の姿勢をとる。そして、俺に向かって風が吹き抜ける。風の強さに目を凝らすと身体のあちこちから浅く出血した。
目を細めたまま唖然としていると、シスコンが迫ってきたので俺は前蹴りを放つ。しかしシスコンは分かっていたようで射程直前で再び空中を跳んだ。
「しまった!?」
俺は馬鹿だった。奴は俺をいたぶる為にわざわざ同じ高さから攻撃していた。しかし今回は上を取られてしまった。上からの攻撃には対応は難しい。
だから奴が油断している間に確実な一撃で仕留めなければならなかったのだ。
「時間切れだ。これで終わりにしよう。」
奴はフワリと前方宙返りをして踵を落としをしてきた。俺は頭上からの攻撃に片腕でガードする。重い攻撃が腕を襲い歯をくいしばる。
足は動きを止め、奴自身隙だらけになった。俺は足を振り払い奴の服を摑みかかり、引き寄せる。奴の落下が始まり目線が同じ高さになる。
「良いぜ?終わりにしよう!」
俺は渾身の頭突きをかました。
「グゥ……まだまだ……」
奴も片手をロープに伸ばし、もう片方の手を俺の胸倉に掴み、頭突きをした。
「ケイトに近づく半端者はいらない!」
シスコンの頭突きをもらいクラクラする。
「シスコンも大概にしとけ!」
ゴツンっと良い音がする。
「黙れ石頭!」
再びゴツンっと良い音がする。
交互に繰り返される頭突きの応酬に知らぬ間に野次馬が出来ていた。
(どうしたシルク!妹への愛はそんなもんかー!)
(兄ちゃん頑張れ!お前に全部賭てんだ!)
(シルク様の額から血が……バタン)
野次馬共が好き放題言っている。
俺たちは疲弊しお互い額から出血していた。
「どうした?もうおしまいか?」
シスコンがニヤリとしながら挑発してくる。
「なんだ?この程度で終わると思ってるのか?」
俺がやせ我慢でそう言うと奴は顔を痙攣かせながら手に力が入る。
「よしいくぞ!」
俺は頭突きを再開し頭突きの応酬が続く。
しかし、奴自身もう限界が近いのか力を入れた手が緩くなっていくのを感じる。
しかし、幕切れは唐突に始まった。
バチン!
縄が切れて橋の崩落が始まった。
次の投稿は9/2を予定しています。
投稿のストックとか他の人はどれくらい溜めるんですかね?私はあまりストック出来なさそうです。




