美女と野獣
「ああ、ここ最近魔物が増えているせいか獣が減ってしまってな……しかし、魔物を狩ろうにもアイツらはやたらと堅いから弓矢が効かないのだ……」
やっぱりここでも弓矢が効かないのか……グレーターウルフや魔鹿が堅いのは確かなようだ。なら……
「良ければ一緒に狩に行きませんか?」
「「へ?」」
2人は呆然とした。美少女2人が呆然とした顔は中々眼福だった。すると2人は立ち上がって壁の隅へ行ってしまい何やら密談をしている。
「おい、どう思う?アイツ絶対何か企んでると思わないか?」
ケイトが耳打ちをしてこちらに聞こえないようにしているが五感強化の影響で丸聞こえである。
(そうね、グレーターウルフを倒してるのが本当なら魔物の狩くらい1人でできるのに、わざわざ私たちと一緒に行くような理由はないわ。)
ドーラはまだ俺のことを信じていないようだ。まぁ当然だけど。理由はある、1人だと道に迷ったりするし、弓矢が苦手だから普通の獣がいたら狩ってほしいってのがある。
(そうだよな、余程あいつが“馬鹿“で1人だと“迷子“になるよう“間抜け“でもない限りそんなことを言うメリットはないだろ。)
ケイトが言いたい放題だ。そうですよ、どうせ俺は馬鹿で間抜けですよ。
(そうね、何か企んでるわ。たとえば私たちに獣を狩らせて横取りするとか、もしくは獣が狩人を狩りたいのかもよ?)
ドーラも言いたい放題だな、前者はまぁわかるが、後者はなんだよ!
(あぁ成る程、人間の男はみんな野獣と聞くしそれなら呼び出すのも納得だ。良かったなドーラお前にも春が来たぞ。クックック)
それを聞いてドーラは立ち上がって怒鳴った。獣って俺のことかよ!
「ちょっとそれどういう意味よ!?」
「まぁ、そう怒るなよ。恵みの雨が降ると言う話じゃないか。」
会話が聞こえてないと思っているケイトはドーラの怒鳴り声のフォローに入るべく言い回しを変えたみたいだ。
「何の話か気になりますけどそろそろ返答が聞きたいのですが?」
適当に聞こえてない発言をして話を進める。するとドーラが返答した。
「わかったは、それじゃケイトが一緒に狩に行くからケイトのこと“よろしく“ね。」
ドーラはよろしくの、ところを強調して言った。話が聞こえてなければ狩のことでのよろしくになるのだろうが、聞こえていた俺には獣という意味でしか聞こえなかった。
ケイトがドーラの袖を引っ張って座らせた。
(どうゆうつもりだドーラ!なんで私が行くんだ!)
再び始まる丸聞こえの密談
(安心しなさいケイト、ちゃんと考えはあるわ。)
考えがあるらしい。
(聞かせてもらおうじゃない)
ケイトがジト目でドーラを見る。
(まずアイツと2人で普通に狩に行ってもらう。私はその後をつける。狩がつつがなく終わればそれで結構。魔獣が来てピンチになれば助けに入ってアイツに恩を着せる。アイツが獣になってケイトを襲えば私は帰る。どう?完璧でしょ?)
「どこか完璧だー!!」
今度はケイトが怒鳴った。仲がいいなぁ……
「かわいいうさぎさんが狼に食べられて可哀想だったって話でしょ?なにか問題でも?」
「問題しか無いわ!」
そう言って2人でギャーギャー騒いでいるので俺はベッドから起き上がった。ふと違和感を感じて自分の服を見るとボロボロだった。所々破れていたりほつれたりしていた。しかし、その凄惨さに比べて怪我などは無く全く痛みを感じなかった。
あれだけ高いところから落ちたのだから骨折や打撲の1つや2つ有ってもおかしくないのに何故だ?俺は疑問に思いつつ顔をしかめた。
「服ボロボロね、そのままだと困るだろうから融通してもいいわよ?」
ドーラは言った。
「そうしてもらえると助かります。」
「ただし条件があるわ。」
ドーラは指を2本立てた。
「1つ、狩った獲物は狩った者の所有物とする。これは魔物は貴方が狩ることになるから問題ないけど獣については早い者勝ち。」
「2つ、狩や旅に必要な物は食料で支払ってもらうわ。当然私たちが食べてしまった魔鹿については服や寝場所の提供という形で還元したとして今後の問答は無効とさせてもらうわ。」
ドーラがどうだと言わんばかりの表情でこちらを見る。俺は今の発言を受けて考える。
確かに今の発言は妥当だと思う。こちらは助けてもらった立場上批判はし難いし、金銭的な支払いができないから魔鹿で支払うしかない。ただ……
「その1つお聞きしたいのですが、2つ目の条件ですが支払いは肉でということですが、魔石についてはどうしますか?」
俺は気になった。魔石で情報料の支払いを認めたドーラが何故食料だけの支払いにしたのかが。魔鹿の魔石で事足りたといえばそれまでだがどうも引っかかる……
「魔石での支払いは要相談ね、村での需要がまだわからないからその都度決めるわ。」
ドーラは言葉を続ける。
「他に質問は無いかしら?無ければこの村の案内をして、狩の準備に取りかかりたいのだけど?」
ドーラはすまし顔でそう締めくくった。
「いや特に無いな。それじゃ狩の準備に取り掛かろう。」
俺は立ち上がるとケイトとドーラは俺の前に立つ。
「それじゃまず村を案内しようかしら?」
ドーラが先頭に立って家を出た。俺も外に出て驚いた。
「この村は凄いな!建物が全て木の上にあるなんて……」
絶景だった。背の高い広葉樹林をうまく使って家が木の上に立ち並んでいた。また、程よく枝打ちや剪定がされてるためか日光が程よく村を照らしていて、木材の反射や透けた葉の緑が村を覆い幻想的だった。
「どうだ、凄いだろ!うちの村の自慢の1つなんだぞ!」
ケイトは胸を張ってそう言った。たしかにこれは大したもんだと思う。
他にも建物を繋ぐ吊り橋や木を柱にした螺旋階段など様々な工夫が見て取れた。
「色々な工夫があって面白いな、男心をくすぐられるよ。」
俺は歩きながらそう言うと2人も続いた。
「そうだろ?昔作った俺も思いついた時はワクワクしながら作ったからな!」
これケイトが昔作ったのか?その話が本当ならケイトは年齢が気になる……
そこで俺は気になったことを聞いてみた。
「ケイトやドーラって見た目17歳位だけどひょっとして俺より年上なの?っていうかエルフなのか?」
俺が質問すると2人はピシリと音がしそうなほどピタリと固まった。
なんだ?なんかまずいこと聞いたか?俺は不安にかられて後ろを振り返り2人を見つめる。
2人は俯いて少しの間を取るとドーラはゆっくり顔を上げて言った。
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