森の民
「…い、……ぶか?……え……」
誰かの声がする。
「うっ…誰……?」
目蓋がいや全身が重い。
「おっ?気がついたか、流石は男の子だ。ハハハ。」
謎の声が笑い声をあげる。こいつは誰だ?ここは何処だ?そう思い俺はゆっくり目蓋を開ける。
すると俺の顔を覗き込む金髪の美少女がいた。
誰だろうこの人は?それにここは?俺は確か鹿に跨ってロデオをやっていたはず……
駄目だ上手く思い出せない。身体が思い出すことを拒否してるようだ。
「おい、大丈夫か?私を見て惚れてしまったのか?」
いや、この美少女を見たら普通に惚れる人は沢山いると思う。
「そんな訳ないでしょケイト、貴方もボッーとしてないで自己紹介でもしたら?貴方が倒れていた経緯を教えてもらえないとこちらもどうにもできないんだけど……」
金髪美少女がもう1人奥で何か作業していた。俺は辺りを見回して他に誰もいないことを確認して自己紹介に入った。
「俺は梅野樹と言います。まずは助けていただきありがとうございます。」
「おう!あたしはケイトってんだ!よろしくな。」
ケイトはなんか男っぽい言動だな。姉御肌なのだろうか?
「私はドーラ、この森に住んてるの。よろしくね!」
ドーラはしっかり者のお姉さんって感じだな。
改めて2人の姿を見ると対照的だ。
ケイトは短髪でもみあげは肩くらいの長さで後ろはショートで首にはかからない。耳当てのついた帽子を被っており、服装は肩から先は出た民族衣装のような服で全体は緑を基調としており所々に茶色の縁取りをしている。ブーツも茶色の物を履いてる。
ドーラはフードを被っており前髪が右目を隠したパッツンなのが印象的だ。首飾りをしており紫の小さな水晶をつけている。服装は長袖のローブのような物を着ているが、胸のあたりでセパーレツされており通気性が良さそうだ。
「でだ!なんであんな所で倒れてたんだ?魔鹿と一緒にお昼寝か?」
「あ、いや、なんと言いますか。鹿と戦ってたら崖から転落しまして。」
咄嗟に出た答えがこれだが、自分で言ってて何も伝わってない気がする。
「うーん、全然わからん始めから話せ!」
ケイトがそう言うのももっともなので村でグレーターウルフと戦ったことから俺は話すことにした。
「なるほどな、そう言うことだったのか!」
ケイトが納得した様子なので俺はドーラに目を向ける。すると、ドーラも納得したのか静かに目を瞑る。
「俺としては今後どうにかして村に戻ろうかと思うのですが、何かいい方法は無いでしょうか?」
俺は2人に質問した。ケイトは椅子の上で器用に胡座をかいて両腕を組んで天井を見上げた。
「ドーラなんかいい方法ある?」
丸投げだ。
「うーん、そうねぇ……崖の上にある森ってたぶんオルーン村のことじゃないかしら?だとしたらここからだと山や崖を迂回しなきゃいけないから時間がかかるわよ?」
一応戻れるらしい。やったぜ!
「ええ、大丈夫です。大体どれくらいかかるんですか?」
俺の質問にドーラは眉を顰めつつ言った。
「ざっと1ヶ月位ね。」
……
「あのもう少し何とかなりませんかね……」
俺はちょっとゲンナリしながら聞いてみた。
「まぁその辺はルート次第なんだけどね。ルートを3つに分けると、北上する山ルート、南下する森ルート、さらに南下する平原ルートがあるわ。」
ドーラがそう言うとケイトがガタッと椅子を揺らした。何かあるのだろうか?
「おい、平原ルートってまさかシリウス平原か?」
ケイトが眉間にしわを寄せて言った。
「シリウス平原?」
「そうです。シリウス平原はラマース大森林を南に抜けた先にある平原で通称冒険者の墓標とも言われます。」
なんかおっかない発言が出てきた。平原にある墓標とは一体……
俺は顔を顰める。地図を見ないことにはわからないが出来れば安全なルートで行きたい所だ。
「出来れば安全確実なルートを行きたいのですが教えて頂けないでしょうか?」
俺が不安げに尋ねるとドーラが右手の人差し指と中指を合わせて親指を擦った。お捻りか……
「ううっ、生憎手持ちがないもので……」
「有るじゃない?あの魔鹿を頂戴?」
俺は迷った。食料のない状態で狩に行くのは致命的だ。だが、そうしないと情報料は支払えない。
「ふふ、迷ってる迷ってる。」
俺が葛藤してる姿が面白いのだろうかドーラは笑う。
「性格悪いぞー」
ケイトはそれを見て批判する。ちょっぴりケイトの株が上がった。
「先程の質問はすいませんが辞退します。食料がない状態なのであれをお渡しする訳にはいきません。」
「へー?じゃあこの後はどうするの?」
ドーラはひょうひょうと質問をする。
「どうするかはまだ決めていません。別の支払い方法がないか知りたいのですが?」
今鹿を持って行かれるのは困るので、改めて狩を行なって支払えれば良いのだが……
「あるぞ!」
ケイトが答え、ドーラが怒り顔だ。
「ちょっとケイト今いい所なんだから邪魔しないで!」
ドーラの発言にケイトが顔を顰めて答える。
「話が長い上に困らせて楽しんでるだけだろ?それにもう後がないんだからお互い協力した方がいいだろ。」
ケイトがイライラしながら話を進める。美人がイライラしてもやっぱり美人だなとなんとなく思う。
「はぁ、わかったわ……私たちは今魔石が欲しいの、だからその魔鹿の魔石を頂戴?それで駄目なら他の奴を狩って魔石を出してくれればいいわ?」
ドーラの発言で俺は安心した。取り敢えずしばらくの食料はなんとかなりそうだ。
「わかりました。魔石はお渡ししますので持って行ってください。ところで鹿は今何処にあるんですか?」
俺は鹿の場所をケイトに尋ねると目を逸らされた。
「あ、あの……鹿は何処に?」
続けて問うとケイトがにこやかに言った。
「鹿はないぞ!村のみんなで食っちまったからな!」
頭の中には?マークがいっぱいになった。鹿は約2メートルはあった。その肉が全部なくなったのか?
「食べたと言っても全部ではないですよね?残ったものだけで良いので返してください。」
ケイトは冷や汗を垂らしながら無言を貫く。全部食ったのか……
「だから言ったのに、私が交渉すれば問題にならなかったのに勝手なことするからこうなるのよ。」
ドーラの発言から鹿自体もうなさそうだな……
「あの、俺は今後の食料をどうすれば良いんですかね……」
ケイトはどうしようかと頭を悩ませている様子だ。
「まぁ、あの魔鹿を倒せるんだからこの辺の魔物は狩れるでしょ?」
ドーラはどこか不快そうに言った。
「はぁ……」
俺は小さくため息をついた。
「まぁ食べてしまったものは仕方ないだろう?みんな腹を空かせていたし仕方がなかったんだ。」
ケイトは開き直ったようだ。だがみんなが腹を空かせていたという発言に引っかかりを覚えた。
「みんなが腹を空かせていたということは食料事情が良くないのですか?」
俺は思い切って聞いてみた。するとケイトは眉を落として肯定する。
「ああ、ここ最近魔物が増えているせいか獣が減ってしまってな……しかし、魔物を狩ろうにもアイツらはやたらと堅いから弓矢が効かないのだ……」
やっぱりここでも弓矢が効かないのか……グレーターウルフや魔鹿が堅いのは確かなようだ。なら……
「良ければ一緒に狩に行きませんか?」
「「へ?」」
イツキさんが森に入って2日目になった。森に入って一泊するのはリッパーさんなら珍しくは無いけどイツキさんは遭難してそうで怖い。グレーターウルフに勝っちゃう位だから魔物にやられることはないのだろうけどやっぱり心配。
「お姉ちゃんどうしたの?」
セシリーが畑の作業をしながら聞いてくる。
「ううん、なんでもない。」
私は止めていた手を再び動かして畑の手入れに戻る。
「イツキさんのこと、考えてたでしょ?大丈夫だよあの人なら。」
セシリーの言葉に私は驚いてしまう。
「そ、そんなことないよ。今日の晩ご飯はどうしようか考えてただけよ。」
「そんな溜息ばかりついて夕食のこと考えるなんてお姉ちゃん真面目だね?」
「嘘?!そんな溜息ばかりついてた?」
気がつかないうちに溜息をついていたみたいで私はハッとする。
「嘘だよ、カマをかけて見ただけ、えへへ。」
妹にしてやられた。自分が周りを見えていないことを自覚させられた。
「お姉ちゃんイツキさんのこと好きなんだね。顔真っ赤だよ?」
妹に言われて私は恥ずかしくなって顔を隠した。
「ほらお姉ちゃん顔を隠してないで作業して。これじゃ、どっちがお姉ちゃんかわかんないよ。」
私は顔を真っ赤にしながら作業に戻った。
次の投稿は8/22予定
目標は毎週日曜更新が目標なので、もし投稿できてなかったらすいません




