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新しい生活

「家についてはリッパーの家を使って貰います。」


「え?リッパーさんと二人暮らしですか?」


 おっさんと二人暮らしとか罰ゲームかよ。それならシシリーに土下座で頼み込んで住まわせてもらう。


 村長は淡々と告げた。


「リッパーは死にましたよ。」


 村長は俯きながら言葉を続ける。


「あの戦闘の後、村の者達が駆けつけたのですが出血が酷い状態でした。止血をしてリッパーの家で経過を見ていたのですがダメでした……」


「……」


 俺は何も言えなかった。ただ黙っていることしかできなかった。卑怯な奴だ……


 村長が息を深く吐き言った。


「話を戻します…… ウメノさんにはリッパーの家に住んでもらいます。」


 俺は頷き村長の話は続く。


「そして、村周辺の森で狩りをしてもらいつつこの村を守ってもらいます。」


 狩りか…… 転生前では狩りなんか想像すらしたことなかったのに突然の申し出に俺は驚いた。


「狩ったものについてはこちらで買取ますし、困ったことがあれば言ってください。」


「わかりました。では、そうさせていただきます。」


「では、ここで話は終わりとなります。また何かありました私の家まで来てください。」


「はい、では今日はこの辺で失礼します。」


 俺は村長に背を向け家を出ておっさんの家、いや、俺の家に向かった。






「本当にこれで良かったのだろうか……」


 誰にも聞こえない声でポツリと呟いた。






 俺は異世界に来て早速住居を得た。かなり不本意なものではあるが仕方がない。そんなことを考えながら俺は自分の家に入った。


 部屋の中はスッキリと整っていた。おっさんは一人暮らしだったのだろう、家具は少なく手入れもよくされており几帳面だったことが伺える。


 俺はまず家の中を探検した。部屋の数や物の配置等を確認し、寝床や台所のような物を見つけた。


「やっぱ水は外から汲まないとダメか……」


 現代から異世界に飛ばされて水の確保が思った以上に面倒なのは予想はしていたがいざ直面すると心にくるものがある。


 水は外の井戸から汲めば良いのだろうが重労働になりそうだ。節水の重要性をここに来て肌で感じた。





 そんなこんなで樽の中に水を入れているとシシリーが声をかけて来た。


「イツキさんお話はもう終わってたんですね。」


 シシリーの声で俺は立ち上がり振り返った。


「あぁ、少しだけしか話さなかったけど色々なことに気付かされた話だったよ。」


 それを聞いてシシリーは少し悲しげな顔をしていた。


「リッパーさんのこと聞いたよ。俺は出会って少ししか話さなかったけど良い人だってことはわかったから悲しいよ。」


「ええ、リッパーさんはこの村の開墾に関わった人で私は生まれた時からお世話になってる人だったのでなんだか未だに信じられません。」


 村の初期メンバーだったのか……ならシシリーや村人の悲しみは大きいのだろう。


「リッパーさんは昔から気さくな方で村のことでは積極的に動いてくれた方でした。山で採れた山菜や獲物を分けてくれたり、家を建てる時には高いところで作業したりしてくれたりで皆が彼を頼っていました。」


 皆から頼りにされてたか……

 きっとリーダーとかに近い立ち位置だったんだな。


「私たちはリッパーさんに頼りすぎていたのかもしれません。もっと、私たちに戦う力があればこんなことにはならなかったかもしれませんね……」


「でも、彼はもう戻らない。ならこれからのことを考えようよ、シシリー。」


「ええ、そうですね……」


 シシリーは寂しげにそう言うがまだ踏ん切りはつけられないようだ。それだけおっさんは慕われていたのだろう。


 俺はしんみりした空気を変えるべく話題を変える。


「ところでここには何しに来たの?」


 俺が質問するとシシリーは潤んだ目を擦り息を一息入れた。


「そ、そうでした。村長に食事の支度をするように言われたのでそのお手伝いに来ました。」


「それは有難い、台所を見たんだけど調理法がわからなくて困っていたんだ。」


 そう言うとシシリーは待ってましたと言わんばかりに作業に入った。俺はその姿を後ろから見させてもらう。


「俺も早く料理を覚えないとな、シシリーに色々教えてもらわないとな。」


「そ、そうですね。ではこれからは私が料理を教えに来ますので一緒に作りましょう!」


 (まく)したてるようにシシリーが言った。俺はそれを疑問に思いながらもそれに同意する。


「ありがとうシシリー、よろしく頼むよ。」


「はい、喜んで!」


 シシリーが嬉しそうに言う姿を見て俺の心臓が跳ね上がった。めっちゃ可愛いそして惚れそうだ。


 シシリーは日本の旧民家にありそうな形のレンガ製の焜炉に薪をくべ乾燥した草を置き、砂利のような物を少量近くの引き出しから取り出した。


「うん?それは何使うんだ?」


「え?これですか?これは魔石のかけらですよ。イツキさんも使うでしょ?」


 俺はドキっとした。異世界の知らない常識が出てきた。


「ま、まあ俺はあまり必要ないからよく知らないんだ。」


「え?そうなんですか?ひょっとしてイツキさんは実は魔法が使えたんですか?」


 そう言いながらシシリーは魔石の粉末状の砂利を薪の上に乗せた。


「ファイア!」


 すると、種火ほどの日が出てきて草と薪を燃やし始めた。俺は驚いたがすぐに落ち着きを取り戻した。


「いや、俺は魔法使いじゃないよ。ただ魔石を使わなくても火が起こせるからな。」


「え!?本当ですか!さすがイツキさんです。なんでもできるんですね!」


 凄い自然に嘘をついてしまった。いや火の起こし方は知ってるよ?原始的な摩擦熱を利用した着火法とか火打ち石を使った方法とか、ただやったことはないけど……


 シシリーの期待の眼差しが心に刺さる。とりあえず俺はシシリーに片手鍋を渡して料理の再開をさせる。


「ありがとうございます。」


「気にしないで、それより続きをしよう。」


 シシリーは片手鍋に水を入れて湯を沸かす。シシリー戸棚から芋のような物を取り出して皮を剥き包丁で一口大に切っていく。


「イツキさんやってみますか?」


「お、おう。」


 俺は高校以来の料理をする。昔は家庭科の授業で料理をしたがほとんど周りのクラスメイトの指示で細々と作業をした記憶しかない。


 俺は、恐る恐る包丁で表面がツルッとして表面が赤い芋?を切っていく。


 「上手ですね、男の人は料理が苦手な人が多いですけどイツキさんは料理をするんですね。」


「そんなことないよ、だけどシシリーとなら一緒に作ったいきたきな。」


「ふふ、そうなんですか。じゃぁ一緒に一杯料理しましょう。」


 シシリーがにこやかに料理の手を進める。フラグはいつ立つんですかね???


 シシリーは山菜と思われる見たことの無い葉や根菜を片手鍋に入れていく。


「お肉とかは入れないの?」


 俺は肉が食べたくなって聞いてみたが、異世界では肉はあまり食べないのだろうか?シシリーの家では出なかったし。


「お肉はあまり入れないですね、ここ最近は森の様子がおかしかったせいで獲物が少なくリッパーさんもあまり森の深くには入っていませんでしたし……」


 なるほど、では森の異変を解決すれば肉が食べられるんだな。俺の次の目標が決まった。

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