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交渉

 とりあえず飯食って休憩したら、村長のところに顔だしておっさんの顔でも見に行くかな。


 俺はおっさんの安否が気になった。あれだけの出血をしていたので万が一がある。俺はベッドから窓辺に立ち空を眺めた。


「曇ってきたな……」






 俺はシシリーに呼ばれ食卓につく。


 シシリーもセシリーも卓についており、テーブルの上には既に食事が並んでいる。黒パンと野菜が少し入ったスープと少しのベーコンだ。


 異世界でも野菜は同じだろうかとふと疑問に思いスープを覗き込んだらどうやら違うらしい。


 そんな俺を見ていたシシリーは興味深げだ。


「あの?どうかされました?」


 不安気に尋ねてくるシシリーとそれを見つめるセシリー。


「ううん、なんでもないよ。どんな具が入ってるかちょっと気になっただけだ。美味しそうだしお腹もペコペコだ早く食べよう。」


 それを聞いてシシリーは安心したようだ。


「それじゃあ、いただきます。」


「「いただきます。」」


 俺は黒パンをちぎりスープの中に浸す。少しふやけたところで口に運ぶ。ちぎった時は硬かったパンも大分食べやすかった。


 緑の紅葉型のブロッコリー?を食べつつ2人の顔を眺めてみれば美味しそうに食べている。俺は少しだけホッコリしつつ、ベーコンと浸した黒パンを食べる。


「お味はいかがでしょうか?お口に合えば良いのですが……」


 シシリーは心配そうに言った。


「大丈夫、シシリーの作った食事は美味しいよ。」


 シシリーは顔を赤くして俯いてしまった。


「お姉ちゃん顔真っ赤だよ〜?」


「そ、そんなことありません!」


「ムキになるから余計に赤くなった〜」


 そんな他愛のない会話をしながら俺達は食事は終わった。






「それじゃあ俺は村長の家に行ってくるよ。」


「行ってらっしゃい、早く帰ってきてくださいね。」


 俺はシシリー達に告げて家を出た。なんだか新婚みたいなやりとりで少し照れる。


 俺は村長の家へ向かう。天気は相変わらずの曇り空だが今のところ雨は降らなさそうだ。周りを見れば家の瓦礫を片付ける人や死体を前に呆然としてる女性等村の雰囲気は良くない。


 俺は言いようのない不安を抱き村長の家へ向け走りだした。息が荒くなるような走りをしたせいか村長の家には直ぐについた。


「ダリスさん、いますか?」


 俺は村長の家に着きドアノッカーを叩く。


「ああ、ウメノさんいらしたんですね。どうぞ」


 村長は俺を見るとゆっくりと家の中へと入っていき俺もそれに続いた。俺は部屋に案内されて席に着く。


「まずはお礼を言わせてください。グレーターウルフの討伐の協力ありがとうございました。お陰で村は救われました。」


 村長がお礼を告げて頭を下げる。


「いえいえ、こちらとしても見ず知らずの人間なのに良くしてくださってありがとうございます。」


 俺もそれに倣い感謝を告げる。


「助かります。それでは心苦しいのですが事後の処理について話させて頂きます。」


「はい。」


 ダリスさんが話を進め俺はそれに頷く。


「まず、勝手ながら村の状況から説明させて頂きます。グレーターウルフの襲撃により村民が男性7名、女性1名の計8名無くなりました。」


 8人の死と言う現実に俺は言葉を失った。


「……」


「決して少ない数では無いですが村を存続できたことに感謝の念が絶えません。」


 ダリスさんの発言に嘘はないのだろう。ただ俺にはそれが酷く無味なものに思えた。


「すみません、もっと俺に力があれば被害を出さずに済んだのですが……」


 もっと力があれば、村に来る時に仕留めていればこんな犠牲はなかった……


「いいえ、気に病まれることはありません。人間にはできることに限界があります。誰しもが全てを思い通りにはできませんから……」


 村長は俯いてそう言った。そうか、俺だけではなく村長も自分の無力に嘆いているのか……


「そう、ですね……」


 俺は納得せざるを得なかった。


「今後の対応はどうするのですか?現状ではグレーターウルフを討伐できたとは言えまた魔物に襲われたら問題です。」


 「現状では打つ手はありません。そこで1つお願いがあります。」


 俺は思わず身構えた。この村長は打算的で人を使うことに躊躇いがない。何を言われるか……


「なんでしょうか?私にできることであり報酬次第では請け負います。」


 俺は報酬のところを強調して言った。あまりなんでもかんでもやってしまうとお互いの関係に良くない。分かっているというように村長は頷く。


「ええ、分かっています。依頼としましてはこの村の警護と周辺の森の魔物の討伐です。」


 正直依頼内容として普通そうでホッとした。ただ懸念事項もある。それは魔物がどんな種類がいてどの程度の危険があるかわからない点だ。


「次に報酬についてです。これは、住居の提供と当面の生活の援助です。」


「住居の提供ですか?それはこの村に定住しろということでしょうか?」


 俺は冒険者を目指すと伝えたはずだがどういうことだろうか。


「そうしてもらえると村としては嬉しいですがそれは難しいでしょう。ですが現実問題として、この村には冒険者を雇えるだけの資金がありません。」


 まぁそうだろう。おっさんやシシリーの家に向かう時にパッと見ただけでも目立った産業は無さそうだった。


「ですがこれは貴方にもメリットはあります。」


 村長はそう言いながら席を立ち背を向け窓の前に立つ。


「それは?」


「まず一つ目として住居を得られます。失礼ですがウメノさんはどちらからいらしたのですか?名前はこの地域のものでも無いですし、服装も旅の者とは思えないほど軽装です。」


 俺は思わず目を見開いた。見抜かれていることに驚きを隠せなかった。


「二つ目、貴方に時間の猶予が与えられる。先程言った通りですが旅人には見えませんし食料等の備えはありますか?この辺境の村から出るのであれば次の街までに充分な備えが必要です。」


 確かに地理も知らず備えもなく旅をするのは自殺行為だと俺も思う。


「三つ目、貴方の身分を保証できます。先程の通り名前が違いますから国元も違うでしょう。では、貴方は身分を証明できる物をお持ちですか?」


 俺は黙るしか無かった。異世界人の俺には身元なんて証明できないし何よりそんなことを言えば普通は頭のおかしい人認定されるのが関の山である。


 それを考えれば確かに納得のいく説明だった。金銭的な報酬は無いが当面の生活は保証されるようだし、酷い待遇なら最悪逃げれば良い。どうせ衰弱した状況では何も出来ない。


「納得のいく説明でした。ですが具体的な期間と住居はどのように用意するのですか?」


 理由は納得できたが期限を聞いておかないと後々が怖い。それに住居はどうするのか、まさかこの人のいない状況では用意は難しいと思うが…… 


「期間については半年から一年ほどです。というのも魔物の繁殖状況が不明ですし、グレーターウルフが出てきた位ですから直ぐに旅立たれるのはちょっと……」


 村のことを考えたら確かにそうだな。


 まぁレベル上げしたいからしばらく居るのもありか。ゲームならキャラクターは飲まず食わずでレベル上げ出来るけど、俺はそういうわけにはいかないからな。


「家についてはリッパーの家を使って貰います。」


「え?リッパーさんと二人暮らしですか?」


 おっさんと二人暮らしとか罰ゲームかよ。それならシシリーに土下座で頼み込んで住まわせてもらう。


 村長は淡々と告げた。


「リッパーは死にましたよ。」

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