魂の守護者たち
更新しました。
昨日は、忙しくて更新できなかった(T_T)。
頑張って更新します。
東京都千代田区神田神保町・HydeAndSeek地下1階
7月1日 午後4時45分
上の店舗で、紫苑と小夜子がやり取りをしている間、先に地下1階に着いた沙希は、エレベーターから降りると、正面に現れた木製の大きな両開きドアを開けた。
ドアを潜った室内は、古い図書館のような作りになっており、入ってすぐにあるカウンターの中は事務所なのか、パソコンを操作している4人の人がいる。カウンターから左を見ると、入り口のドアと同じ作りの片開きドアがあり、所長室というプレートが取り付けられている。
アンティークショップの地下に、秘密裏に作られたこの事務所こそ、
≪魂の守護者たち≫の日本支部・神田支所である。
≪魂の守護者たち(通称:協会)≫とは、世の中で起こる心霊現象や、悪魔・妖怪といった魔物の討伐等の不可思議現象を、魔法や霊力などの特殊能力を駆使して、人知れず解決するための組織である。
協会は、世界の主要国に存在し、それぞれの首都や政令指定都市に支部が、また、人口の多い地域や、経済中心都市などに支所が置かれ、日夜活動を展開している。協会の本部は、スイスのジュネーヴに世界本部があり、各国の支部長が年に1・2回程度の割合で、それぞれの現状や特殊事案等の報告をし、情報交換を行っている。
ちなみに日本では、支部が神戸市にあり、通常業務に加え各支所の取り纏めをしている。支所は、札幌・前橋・名古屋・福岡など主要な街に点在して、担当地域の事案や支部からの案件をこなす。
協会の主な活動は、国や県、警察等の各種団体からの依頼や、所属の構成員によって情報収集された、個人や企業の不可思議トラブルまでさまざまだ。
ただ、いずれの場合も、基本的には協会の存在が明るみにならないよう対処され、構成員以外で協会の存在を知る者は、国の上層部の人間や、国家機密を扱う者、もしくは各種団体の長など限られた一部の人間だけで、一般市民にその名が知られることは、ほぼ無い。
そんな協会の支部、もしくは各支所に所属している構成員は、それぞれの部門に応じて呼称があり、それに合わせたステータスコインを持っている。
このステータスコインは、魔法によって持ち主の個人情報が記録されており、表面に部門を示す紋章が、裏面には所属している場所や役職が、魔法文字で刻印されている。また、コインは持ち主のランクによって色分けされており、協会の人間であればコインを見るだけで、持ち主の殆どの情報を知ることが出来るのである。
協会の部門・ランクを詳しく説明すると、
― 部門 ―
守護者・・・不可思議現象を特殊能力によって調査・解決する者。
コインの紋章は、“六芒星に剣と盾”。
諜報者・・・一般企業や公務員などに勤めながら、情報収集・守護者と依頼主の仲介等を行う者。
コインの紋章は、“六芒星に錠前と鍵”。
記録者・・・情報の管理や、人材管理等の事務作業を行う者。
コインの紋章は、”六芒星に本と羽ペン“。
製作者・・・守護者や諜報者が使用する魔法道具や便利ツールを作る者。
コインの紋章は、”六芒星にハンマーと鋏“
― ランク ―
Dランク・・・各部門において所属年数が3年未満の者。また、所属年数が3年以上でも、昇格試験に合格していない場合、このランクになる。
コインの素材は銅で、色は“茶色”。
Cランク・・・所属年数が3年以上で、昇格試験に合格している者。特例としてDランク時に、一定の成果を上げ、各支所長の推薦を得られた者は、年数が3年以下でもこのランクになる事が可能。
所属している構成員の多くは、このランクである。
コインの素材は銀で、色は“銀色”。
Bランク・・・Cランクで所属支所で中心的な活躍をみせる、もしくは、相応の成果を上げ、その国の支部長の推薦を得られた者。
支部所属員、各支所長は、最低このランクの者がなる。
コインの素材は金で、色は“金色”。
Aランク・・・Bランクで国家レベルのトラブルを解決するなど、目覚ましい活躍をし、世界本部の支部長会議で推薦され、各国支部長の過半数の了承を得られた者。
世界本部所属員、各国の支部長は、このランクの者がなる。
コイン素材は白金で、色は“銀白色”。
部門・ランク共に、他にもあるのだが、おおよそ上記ような構成で成り立っている。
さて、事務所に入った沙希は、カウンターの前に立ち、スカートのポケットから取り出した茶色のコインを、カウンターの上に置くと、
「神田支所所属。守護者Dランク、月ヶ瀬沙希です」
と、カウンターの一番近くにいる女性に声を掛けた。声を掛けられた女性は沙希を見ると、
「沙希ちゃん、お疲れ様。ステータスコイン預かりますね」
少しの間、コインをチェックしていた女性は、
「はい、OKです。そういえば、沙希ちゃんが来たら、『所長室に来るように』って支所長が言ってましたよ」
女性は、沙希にコインを返しながら、沙希にそう促した。沙希は、
(いよいよ、本格的なお仕事が始まるのかな?)
と、緊張し始めた自分を落ち着かせるかのように、ゆっくりとした足取りで所長室のドアへ進む。
ドアの前に立った沙希は、一度深呼吸をすると、ドアを2回ノックし、
「月ヶ瀬です。支所長いらっしゃいますか?」
と、声を掛けると中から、
「どうぞ」
低く渋めの声が返ってくる。
意を決してドアを開けた沙希は、期待と不安を胸に所長室へ入って行くのだった。
いよいよ、物語のスタートラインに着いた感じです。
ご覧いただいている方、ありがとうございます。