表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師と法術師  作者: 柏木 冬霧
第1章 出会い
7/90

寄り道の途中で・・・

いつも読んでいただいてありがとうございます。

本日も雨が降っていて、じめっとした空気がすごいです。

お互い、体調には気を付けましょう\(^o^)/。

 東京都千代田区神田神保町某所

 7月1日 午後4時28分


 神田神保町。数多くの書店・古書店が立ち並ぶ本の街であり、毎年10月に神田古本まつりが開催されている。


 本日の授業が終わった沙希は、「ケーキショップでお茶して帰ろう」と言う真樹と啓太の誘いを断り、京王線に乗ってここ神田古書店街を1人歩いていた。


(フロンティーヌのケーキ食べたかったなぁ……)


 帰宅途中の駅前に、最近出来たケーキショップを思い出しながら、沙希は深いため息をついた。甘い物に目がない沙希が、真樹たちの誘いを断ったのは、どうしても外せない用があったからだ。沙希が誘われている時、一緒に隣の席の紫苑を啓太が誘っていたが、彼も用事があったらしく誘いを断っていたようだった。


 少しうつむき加減でとぼとぼと歩いて行く沙希は、賑わいのある通りから人通りの少ない路地へ曲がった。その路地は、比較的マイナーな古書や、医学書等を扱う専門古書店が軒を連ねているエリアで、必要な人達しか来ないであろう通りに、人気ひとけはない。


(う~、やっぱりこの通りは、1人だとちょっと怖いなぁ~)


 まだ周囲は明るいが、静かで淋しい通りを、何かにせかかされたかのように沙希は歩を速める。目的地までは、あと5分足らずだ。

 そんな時、自分以外の足音が後ろの方から聞こえて来るのを、沙希の耳は聞き逃さなかった。


(やだっ、誰か後ろにいる。どうしよう……)


 振り向いて確認したい気持ちはあるが、妙な恐怖心があり振り返ることは出来ないし、近くの古書店は、女子高生の自分が制服で入るには違和感がありすぎる。走って目的地まで行こうかとも思ったが、急に走り出して相手を刺激した挙句、追いかけられるような事にでもなれば、無事に逃げきれる自信も無かった。

 平常心を装いながら沙希は、どこか逃げ込める場所は無いか早足になりながら周囲を見回す。

 そこへ、


「なにビビッてキョロキョロしてんだよ」


 ポンッと肩を叩かれると、今日1日でそれなりに聴き慣れた声が、頭の上から降ってきた。


「へっ!」


 ビクンと体を震わせ、頓狂とんきょうな声を上げながら足を止めた沙希は、声のした方を見上げる。


「よっ、月ヶ瀬さん。こんな所で奇遇だなぁ。(俺は、神保町駅で見かけてるけど)」


 軽く手を挙げながら、笑みを浮かべているのは……久世紫苑その人である。


「くっ、久世君! どうしてここに? (まさか今日、初めて会って、いきなりストーカー!?)」


 突然現れた紫苑に問い掛けつつ、やや警戒しながら、ドキドキする心臓を落ち着かせるように、沙希は自分の胸に手を当てた。


「別に、お前の跡をつけて来たわけじゃねえよ! 俺もこの先に用があるんだ」

「そ、そうなんだ。ビックリしたぁ~」


 自意識過剰だった自分の考えを、完全否定した紫苑の言葉にほっと胸を撫で下ろす沙希は、ある事に気が付き、


「でも、この先に久世君が好んで行く様なお店無いと思うけど……」


 4月初めから、この道を頻繁に使って目的地に通っている沙希は、この界隈の店舗が、どんな品物を扱っているかをある程度知っていたので、疑問に思ったのである。


「まあ、俺も今日初めて行く場所なんだけどさ。って言うか、勝手にどこかの店に行くって決めつけんなよ。誰かと待ち合わせかも知れねぇだろ?」

「そっか、それもそうだよね」


 至極もっともな事を紫苑に言われ、沙希は納得して彼に頷くと、


「私、この辺ちょっと詳しいから、案内しようか?(1人で行くより安心だし……)」


 1人で歩いて行くことの淋しさと怖さに、うんざりしていた沙希は、案内にかこつけて彼に提案すると、


「そう言ってくれるのはありがたいけど……。月ヶ瀬さん、急いでるんじゃないのか?」

「まだ、時間に余裕があるから、大丈夫だよ。それに、1人より2人の方が楽しいし。で、久世君はどこまで行くの?」


 自分に気を使ってくれた紫苑に、(実は1人で淋しかった)と白状してしまっている事に気が付かず、沙希はスマホの時計を見ながらOKサインをする。


「大丈夫なら、俺は助かるけど……。月ヶ瀬さん、ホントは1人じゃ淋しいだけだったりして。それとも、実は、俺の事が気になる存在だったりする?」


 紫苑に、1人歩きの淋しさを指摘され、尚且なおかつ思ってもみない事を言われた沙希は、


「ちっ、違うもん。違わないけど、そうじゃなくてっ……。あ~、もう、からかわないでよね」


 プチパニックを起こしながら、顔を真っ赤にして紫苑に抗議する。


「ぷっ、くっくっくっ。冗談、冗談だって。悪かったよ。(おもしれー、やつ)」


 くつくつと笑いながら沙希に謝る紫苑に、沙希はちょっとムッとした顔をしながら、


「それで、私は、どこに久世君を案内すれは良い?。(って言うか、笑いすぎだよ!)」


 両手を腰に当てて、頬を膨らませながら、紫苑を睨みつけた。


「そんな怒るなって。俺が行きたいのは、HydeAndSeekハイドアンドシークってアンティークショップなんだけど、知ってるか? そこで、知り合いと会う約束なんだ」


 怒り顔の沙希に向かって、苦笑しながら紫苑が目的の場所を告げる。


「えっ、HydeAndSeekハイドアンドシーク?! 知ってるもなにも、私もそのお店に用があって、行く途中だったんだ」


 沙希は、からかわれて怒っていた事も忘れて、驚きに目を見開いた。


「なんだ、目的地が同じなら一緒に行けばいいんじゃん。じゃあ、早速行こうぜ」

「うん、そうだね。遅くなっちゃうし、行こうか」


 さも当然といった感じの紫苑に、沙希は返事をすると、2人は連れ立って歩き始める。

 沙希は、ふっとさっき彼が言っていた事を思い出し、


(久世君、大人っぽくてかっこいいし、待ち合わせの相手は彼女かな? お洒落なアンティークショップで待ち合わせなんて、ちょっとうらやましいな)


 沙希は、そんなことを思いながら、浮かんだ疑問を解決すべく、


「知り合いって、女の人? もしかして、彼女? ねぇ、可愛い?」

「女性っていうのは合ってるけど、彼女じゃねぇよ。可愛い? そうだな、どちらかと言えば、綺麗って言った方がいいと思うけど……」


 矢継ぎ早に質問してくる沙希に、待ち合わせ相手の容姿を思い出しながら紫苑が答えた。


 そんな会話をしながら、並んで歩く2人の目の前に、ヨーロッパ調の外観をしたお店が現れたのは、それからすぐの事だった。


明日は、日曜日ですので更新はお休みの予定です。

また、月曜日に更新出来たらいいなぁと思っております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ