授業と昼休み
じめじめした天気でやる気がでない~(-。-)y-゜゜゜
今日も投稿いたします。
宜しくですm(__)m。
東京都世田谷区・星流学園・1年B組
7月1日 午後12時25分
編入生、久世紫苑の授業中の様子は他の生徒と明らかに違っていた。
それは、ノートを取らずに板書の一部を教科書にメモ書きしていることだ。
1限目・数学の授業中にノートを取らない紫苑に気付いた沙希は、
「ノート無いの? 特別棟の購買部に売ってるよ。買いに行く?」
1限目が終わった後にそう声を掛けると、
「ノート? あぁ、別に必要ないから」
面倒くさそうに、そっけない返事が紫苑から返ってきたのだ。
そのうち、紫苑は彼に興味津々のクラスメイトに囲まれ、あれやこれやと質問攻めにされてしまい、あっという間に休憩時間は終わってしまっていた。
(ノート取らないなんて、変わってるなぁ……。復習とかどうするんだろう?)
4限目になる今も、担任の工藤が担当する英語の授業なのに紫苑はノートを取っておらず、沙希は板書を書き写し、ラインマーカーで色分けした自分のノートを見て不思議に思った。
奇抜な授業の受け方をしている彼だが、担当教諭からの質問や板書の答えは的確で問題ないのだ。現に今も、教壇で質問文に対する回答を綺麗な筆記体で書きこんでいる。
「That’great!。この答えでPerfectよ。特に2問目の接続助詞は、間違えやすいので気を付けてね」
工藤は、紫苑の回答を解説しながら授業を進めていく。
何事もなく席に戻ってきた紫苑は、相変わらず教科書に何かメモしているようだった。
7月1日 午後12時50分
午前中の授業も恙無く終わり、昼休みとなった。生徒はそれぞれ昼食の準備を始め、教室を出て食堂へ行ったりお弁当を広げたりしている。
お弁当持ちの沙希も、同じくお弁当の真樹と机を付けて昼食の準備をしていた。
「あのさぁ、学園の購買部ってパン売ってる?」
沙希達の準備を眺めながら、紫苑が訪ねてきた。
「パン?。購買じゃなくて、食堂で売ってるよ。あっ、啓太ぁ~、食堂行くんだよねぇ? 久世君、連れてってあげて。パン買いたいって」
真樹が彼に答え、教室を出ようとしていた啓太を呼び止めた。
「OK。じゃあ、久世君行こうか」
そう言いながら啓太が、紫苑に向かって手招きした。
「Thanks」
彼は、真樹に向かって礼を言い、足早に啓太の所へ行くと
「待たせて悪い。助かるよ」
「ついでだから、気にすんなよ」
紫苑と啓太は、お気楽な感じで話しながら特別棟の方へ歩いて行った。
沙希達はお弁当を突きながら、
「取っ付き難そうな感じだけど、悪いヤツじゃなさそうね。沙希はどう?」
「そうだね。悪い感じはしないかな。ちょっと変わってる気はするけど……」
と、この日クラスで一番ホットな話題になっているであろう彼について、2人は話に花を咲かせ始めた。
星流学園特別棟・食堂
啓太の案内で食堂までやって来た紫苑は、その広さに目を見張った。生徒数が多い為、それなりに広いであろうと予想はしていたが、実際の食堂は彼の予想を上回る物だった。
室内のイートスペースに加え、食堂に隣接した中庭部分がオープンデッキになっており、全校生徒の3分の2くらいは対応できそうだ。
デッキ側の窓は全て開けられ、食堂内に自然の光と風をもたらし、開放的な空間を演出している。
紫苑が食堂を見回していると、
「なかなか良い食堂だろ?。パンはあそこで売ってるぜ」
「ああ、あそこか。Thank you、行ってみる」
料理の受け取りカウンターのちょっと先を指差しながら話す啓太に、紫苑は軽く手を挙げ礼を言うと、売り場の方へ歩き始めた。
「久世君、席取っておくから一緒に食おうぜ」
背中から聞こえてきた啓太の声に、
「わかった。買ったらそっちへ行く」
と、振り返りながら紫苑はそう同意した。
その後、目的のパンを買った紫苑が啓太を探してウロウロしていると、
「久世君、こっち、こっち」
窓際のテーブルを確保した啓太が、手招きしながら彼を呼んだ。
「広すぎて、探しきれなかった」
紫苑は、苦笑しながらテーブルに着いた。
しばらくの間、お互いの身の上話をしていた2人だったが紫苑が、
「ところで佐々木君は、榎本さんと付き合ってるんだよな?」
突然、啓太に聞くと、
「ぶっ、久世君なんでそれを!? まっ、まあ、やっと幼馴染から彼氏・彼女になったのは事実だけど……。あっ、俺の事は啓太でいいよ」
今日、編入したばかりの彼にバレたのが、あまりにも以外だったのか啓太は驚き、真樹との関係を耳を真っ赤にしながら話した。
「さっき、教室で2人のやり取りを見ててなんとなくね。それと、俺の事も紫苑でいい」
にやにやとした顔で紫苑がそう言うと、啓太が両手を合わせ紫苑を拝みながら、
「頼むっ、沙希ちゃんには内緒にしてくれ! 沙希ちゃんが気が付くまで、絶対にバレないようにしようって真樹と約束してるんだ」
「沙希ちゃん? ああ、月ヶ瀬さんね」
紫苑は、隣の席の少女の事を思い出しながら近くの自販機を指差すと、
「う~ん、まあいいか。じゃあ、あそこの無糖ブラックの缶コーヒーで手を打とう」
必死にお願いし続ける啓太にそう提案した。
「わかった、約束だぞ! でも、なんでバレたんだ……」
ちょっと悔しそうにそう呟きながら、啓太は自販機に向かって行った。
(あれで解らない方がおかしいと思うが……。沙希相当鈍いんだな)
紫苑は苦笑すると、ぼんやりと中庭を眺め始める。
こうして梅雨の晴れ間の昼下がりは、学校特有の喧騒の中、穏やかに過ぎて行くのだった。
なんとなく、学園ものか?と思っている方もいると思いますが、
これで学校の様子は終了です。
思ったよりも長くなってしまいました(笑)。