桁違いの実力
天気が悪くて、気圧がさがっている? のか、体と頭が重怠い感じが続いております。
やる気が出ない~
そう思いながら、キーボードをパチパチやっております(笑)
東京都西多摩郡奥多摩町・奥多摩研修センター・C棟訓練所
7月6日 日曜日 午後1時25分
沙希の実力確認が終わった所で、時間を確認すると12時を少し過ぎていたため、一同は昼休憩を取る事にし、中央棟の食堂にて食事を済ませると、訓練場へ戻って来た。
紫苑は、休憩の間に自宅へ電話を掛け、沙希の事情や月ヶ瀬家の人達が訪ねてくる事を説明すると、しばらく話し込んだ後、電話を切って戻って来た。
げんなりした顔をする紫苑を見て、百合子が、
「どうしたの? 紫苑くん。やっぱりダメだったの?」
そう尋ねると、紫苑は横に首を振りながら、
「いえ。その逆で……。
『夕飯を用意して楽しみに待ってるから、必ず連れて来るように』
と、すごい勢いで言われました」
溜息を付くようにそう言った紫苑を見て、沙希達は笑い合うのだった。
しばらくして、沙希達の笑いが収まったころ、耕一が、
「遅くなってしまうと、紫苑くんのお宅にご迷惑をかけてしまうから、そろそろ道具の調子を見てもらえるかな?」
そう紫苑を促すと、紫苑は頷きながら、
「わかりました。じゃあ、そろそろ始めますね。悪いんだけど、百合子さんと沙希も見学室で見ててくれないかな?」
2人にそう頼むと、百合子が、
「わかったわ。沙希、行きましょう」
そう言うと、沙希を連れて見学室に入って行った。
それを確認した紫苑は、沙希の時に使った囮を、マジックストレージから大量に出すと、呼吸を整えてから、
「フライト」
と、飛翔魔法で囮を飛ばす。数は、沙希の時の10倍くらいあり、全てが高速で飛び回り始める。紫苑は、見学室の3人に向かって頷くと、
「ライトバレット」
そう呟くと、一瞬で紫苑の周りにビー玉くらいの光る玉が20個ほど現れる。それを観ながら百合子は、
「沙希、よく見ておきなさい。Sランクの実力がどのくらい凄いか」
沙希は、百合子の言葉に頷くと、食い入るように紫苑を見つめる。次の瞬間、
〈ふっ〉
紫苑の姿が一瞬にして消えると、訓練所の中央、5メートルくらいの所へ姿を現す。それと同時に、光の玉が5・6発、前後左右に飛んで行くとそれぞれが的確に囮を撃ち落とした。
「カッティング・ゲイル」
「フリージング・ニードルズ」
切り刻む不可視の風が、凍てつく無数の針が、紡がれた力ある言葉によって発現すると、パタパタと囮を撃ち落としていく。
その間にも、紫苑自身は、消えては現れ、また消えては現れるを繰り返し、訓練場のあちらこちらを瞬間移動しながら光の玉を飛ばしている。
「あの移動魔法は、ジャンプよ。移動系中級魔法になるんだけど、無詠唱・発動キー無しで連続使用出来るのは、Aランクの守護者でも、数少ない人だけだと思うわ」
真剣な眼差しを向ける沙希に、百合子がそう解説する。
「クリムゾン・グレネード」
「ストーン・エストレア」
続けて、右奥に現れた時には赤い爆風が起こり、左中央に現れた時には高速の石礫が降り注ぐ。
やがて、3分の2ほどの囮が床に落ちると、紫苑は入り口そばまで戻って来た。そして、よく響く声で、
「ヴォルテックス・ライザー」
そう言い放った。訓練場の中央付近に竜巻のように渦を巻く雷が現れると、それは縦横無尽に動き回り、気が付けば、空中には一つの囮も残っていなかった。
魔法の発現が治まると、いつの間にか紫苑の前に集まっていた囮をマジックストレージに回収し終わると、紫苑が自販機の所まで戻って来た。沙希達が、見学室から出て来ると、
「耕一さん、これ、すげーっすよ! 今まで、発動の微妙なタイムラグに悩まされてたんですけど、それがちっともないんですよ。なんだか、呼吸するのと同じくらいの当たり前な感じで、魔法が撃てるんです」
目を輝かせながら、ミスリルリングを見つめる紫苑を見て、耕一は、
(まるで、新しいおもちゃを買って貰った、子供みたいだな)
そう思いながら、笑みを浮かべると、
「気に入って貰えたみたいで良かったよ。それにしても、あれだけの魔法を発動させて、疲れた様子が無いのは驚きだね。最初のライトバレット以外は、みんな中級魔法だし、最後の魔法は上級だろう? 今ので、君の持っている魔力の何%くらい消費したんだい?」
紫苑に尋ねると、
「今の魔法での消費量ですか? そうですね……。たぶん、全部で5%くらいじゃないですか。そんなに、消費の激しい魔法は使ってないですから」
当たり前のように言った紫苑に、百合子は唖然とした顔をしながら、
「あれだけの魔法を使っておいて、5%って……。最後に使った上級魔法と、同レベルの魔法を私が使ったら、それだけで15%くらいは消費するわよ。Sランクは、桁違いって聞いてたけど、これほどとは思わなかったわ」
その言葉に、驚いた沙希は、
「紫苑。魔力って、訓練とかで増えるの?」
そう尋ねると、紫苑は考えながら、
「う~ん。二十歳くらいまでは、最大魔力が増えるって聴いた事があるけど、俺も詳しくは解らないな……。ただ、俺の経験上、その時使える魔法より上位の魔法を使ってると、魔力が増える感覚があった事が何回かあったかな。劇的に増える感じじゃなくて、少し増えたかなぁくらいだけどな」
それを聴いた沙希は、頷きながら
「そうなんだ。全然、増えないってわけじゃないんだね」
納得顔の沙希に、今度は紫苑が、
「ところで、俺が使ったライトバレット見てたか? あれは、沙希が使ってた光矢烈翔弾とほぼ同じ初級魔法なんだ。魔法制御の手本として見せたつもりだったんだけど、どうだった?」
沙希に尋ね返すと、
「うん。魔法を制御する事によって、いろんなパターンの攻撃とか、動き方が出来るんだってよく解ったよ。私も、早く紫苑みたいに魔法が使えるようになりたいな……」
沙希は、少し不安そうに訓練所の方を見ながら最後の方は、呟くような声で答えた。
「大丈夫よ。そのために、紫苑くんのお宅で特訓するんでしょ? 暇な時間があれば、私もお邪魔してビシビシ鍛えてあげるから、大船に乗ったつもりで、ドーンと構えてなさい。ねっ、紫苑くん」
「ええ、出来るようになるまで、厳しく特訓するつもりですから。沙希ぃ~、覚悟しておけよぉ~」
百合子と紫苑は、沙希にそう言いながら、ニヤリと薄ら笑いをする。
耕一は、そんな2人の姿を見て、
「……くわばら、くわばら……」
と、拝みながら後退りし、沙希は、恐怖に顔を引きつらせ、
「……お手柔らかに、お願いします……」
涙目になりながら、そう答える。
大げさなほど怯えている沙希をみた2人は、肩を震わせながら笑い合うのだった。
7月6日 午後3時10分
一通りの予定を終えた沙希と紫苑は、軽くシャワーを浴び、着替えると、百合子の、
「甘い物でも食べて帰りましょうか」
と言う一言で、中央棟の食堂までやって来た。
研修センターに、甘い物なんてないんじゃないかと思っていた沙希だったが、先ほど昼食で利用した食堂とは別に、軽食を出す喫茶店のような所があり、百合子は、そこでお茶してから帰ろうということだったらしい。
席について、それぞれ注文をすると、耕一が、
「紫苑くん、ご両親には、何時ごろ着く予定だと話してあるんだい?」
「大体、夕方6時くらいになると、話してあります。」
紫苑がそう答えると、
「じゃあ、余裕で間に合うな」
腕時計を見ながら、時間を計算した耕一がそう言うと、注文したものが運ばれてきた。
沙希以外の3人が注文したのは、コーヒーとケーキのセット。それに対して沙希が注文したのは、
「ジャンボマンゴーパフェのお客様」
「はい!」
店員の言葉に、待ってましたとばかりに、返事をした沙希の前に、巨大なパフェが置かれる。通常の3倍はあろうかという大きさのパフェを、スプーン片手に、にこにこ顔で頬張り始める。
それを、横目で見ながら紫苑は、
「沙希、それ腹壊さないか?」
と尋ねると、沙希は、
「らいしょうぶ、らいしょうぶ」
と、パフェを食べながら答える。
(こいつの、胃の丈夫さは、他の人と比べて桁違いかもしれないな)
紫苑は、引きつった笑いを浮かべながら、パフェを夢中で食べる沙希を見ていた。
お茶が済むと、程なく4人は車上の人となり帰路につき始めた。
疲れと、朝早かった事がそうさせたのか、後部座席に座る紫苑と沙希は、車が走り出すと間もなく、お互いの頭を支え合うように寄り添いながら眠り始めた。
百合子は、振り返りながら、
「こうやって見ると兄弟か、仲の良い恋人同士にしか見えないわね」
「そうだな、この姿を見て、執行者だの守護者だなんて思う人はいないだろうな」
運転手の耕一は、チラッとバックミラーを見ながら、穏やかな笑みを浮かべてそう答える。
ほのぼのとした空気の中、車は一路、月ヶ瀬家に向かって走って行くのだった。
軽く、紫苑の魔法を出してみました。
魔法の名称ですが、カタカナに漢字のルビが良いか、漢字にカタカナのルビが良いか
迷った挙句、カタカナに漢字にしてみましたが、どうでしょうか?
よろしかったら、ご意見下さい。
よろしくお願い致しますm(__)m




