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魔術師と法術師  作者: 柏木 冬霧
第1章 出会い
13/90

初任務とパートナー

連日の猛暑、みなさんどうしてますか?。

西日の当る部屋は、エアコンをつけてても温度が上がる現象に

びっくりしました(笑)。

夏本番は、これからなのに・・・。

どうしよう(T_T)。

 東京都千代田区神田神保町・魂の守護者たちソウルガーディアンズ・神田支所・支所長室

 7月1日 午後5時45分


 全ての人が沈黙している室内の中、ティーカップとソーサーの奏でる音だけがカチャカチャと響いていた。

 紫苑の方を見ていた沙希が、弥生の方へ視線を戻すと、ティーカップをソーサーに静かに置いた弥生が、


執行者エクスキューショナーに関しては、私も詳しくは知らないんだけどね。解っているのは、守護者ガーディアンとか、記録者レコーダーなんかの通常部門の上位部門であるという事。普通、チームで任務遂行の場合、ランクが上の人物に指揮・命令系統の権限が与えられるけど、上位部門の人物がいる場合、ランクを無視してその権限が与えられる。まあ、久世くんの口頭申告でもあったけど、上位部門の人はみんなSランクのはずだから、下位部門の人よりランクが低いって事は無いと思うけどね」


 弥生はそう言いながら、おどけた表情で紫苑を見るが、当の本人は全く意に介した様子は無い。続けて弥生が、


「私が知っているのはこの位かしら。上位部門に関しての詳しい詳細は、部門に着いている本人と、世界本部の上層部の人達しか知らない事だから。後は、久世くん、あなたのステータスコインを見せて貰えるかしら」

「うん? コイン? まあ、良いけど」


 弥生が、紫苑にコインを見せて貰えるよう頼むと、Yシャツの胸ポケットからコインを出した紫苑は、そう言いながらそれを手渡した。受け取ったコインを、沙希の前に置くと弥生は、


「上位部門の人になると、ステータスコインがオリジナルになるの。私が聴いた話だと、素材も、紋章も自由に決められるらしいわ。私も現物は初めて見るけど、確かに他の部門の物とは全然違うわね」


 沙希は、目の前に置かれたコインを手にして、表裏をしげしげと見つめる。

 紫苑のコインは、表面の右側が赤く太陽の刻印が、左側が青く月の刻印がされており、裏面には魔法文字がびっしりと刻まれてた。


「本当に、今まで見せて貰ったコインと全然違いますね。でも、凄く綺麗。ありがとう」


 手にしていたコインの感想を言いながら、沙希は紫苑にコインを返す。コインを渡された紫苑は、


「ああ、俺もすごく気に入ってるんだ」


 沙希にほほ笑みながら、コインをYシャツのポケットに戻した。そんな2人のやり取りを見ながら弥生は、


「私がしてあげられる説明は、これで全部よ。詳しく知りたかったら、直接、彼に聴くと良いわ」

「はい。ありがとうございました」


 弥生の言葉に、沙希はお礼を言うと、軽く頭を下げた。そこへ、沈黙していた添島が、


「よし、じゃあ、今度こそ月ヶ瀬さんにお願いする初任務の話をしようか。戸川さん、続けてで悪いが任務の説明を頼むよ」

「はい。分かりました。沙希ちゃん、さっき渡したファイルを見て貰えるかしら」


 弥生に、ファイルを見るよう促された沙希は、手渡されたファイルを開き、目を通す。その様子を見て紫苑が、


「じゃあ、和兄かずにぃ、俺はこれで帰るよ。紅茶、美味うまかったよ、ごちそうさま。また来るよ」


 そう言いつつ立ち上がりかけた紫苑に、添島が先に立ち上がると、


「まあ、そう言わずもう少しゆっくりしていけ。慌てて帰ることも無いだろう。今、紅茶のお代わりを持って来るから」


 紫苑を引き留めつつ、添島はキッチンへ向かい紅茶の用意を始める。


和兄かずにぃの『ゆっくりしていけ』は、何か頼みごとして来る時なんだよなぁ……)


 腰を浮かせていた紫苑は、添島の行動に軽く溜息をつくと、再びソファーに腰を下ろす。

 2人のやり取りを見ていた弥生は、再び沙希の方へ向き直ると、任務の概要を説明し始めた。


「今回の任務は、沙希ちゃん達が通っている“星流学園”の周辺で頻発している、行方不明と傷害事件についての調査よ。今までにも、何回か起こってはいたんだけど、ここ3ヶ月でかなりの件数が報告されているの」

「弥生さん、でも行方不明とか傷害事件って、警察の捜査範囲じゃないんですか?」


 当たり前の質問をしながら、沙希が資料に目を通すと、事件が始まったのは2年前の4月からで、月に1回くらいのペースで犯行が行われていた。ところが今年に入って、同様の犯行が月3・4回のペースに増えているのだ。


「確かに、2年位前から始まった傷害事件に関しては、目撃者や被害者の証言から女性による犯行だって事は確認されているんだけど、ここ3ヶ月で報告されている事案は、目撃証言がちょっと違うのよ」


 沙希が、ファイルをめくっていくと、ここ最近の事件に関する目撃証言がどれも、“黒い影のような動物”とか“黒い影の人らしきモノ”とか曖昧あいまいな表現が書かれている。


「この資料だと、目撃証言は今年の初めから、はっきりしない感じになってますね」

「そうなのよ。去年末までの報告では、まだ黒ずくめの女性が目撃されているんだけど、年明けからは、“黒い影”しか目撃されていないの。警察も捜査はしているけど、犯人とおぼしき人物も捕まってないし、“黒い影”の正体もわかっていないわ」


 沙希が見ている資料にも、捜査状況が細かく記されているが、どれも犯人を特定するだけの決定的な証拠に乏しい。弥生は続けて、


「さらに、4月に入ってからは、傷害だけじゃなくて行方不明者も出てきた。今までで、3人が行方不明になっているんだけど、行方が分からなくなる前に、その人たちの周辺で“黒い影”が目撃されている。警察も同じ目撃情報があった事で、誘拐を視野に捜査を始めたけど、それ以外の目撃情報も、犯人からの脅迫電話も無い。これ以上、被害を増やすわけにもいかないけど、捜査は行き詰っていてらちが明かない。警察は、“黒い影”が人外なモノではないかと疑い、神田支所うちに調査の依頼をしてきたってわけね」


 沙希は、一通り資料に目を通し終わると、


「内容は、わかりました。私は、“黒い影”の調査をすればいいんですね。他には何かありますか?。」

「“黒い影”の調査結果にもよるけど、“黒い影”の正体が妖魔・妖怪のたぐいなら討伐までが任務になるわ。調査の過程で、犯人が人間だった場合は、警察の方へ報告して対処してもらうから、沙希ちゃんが、捕まえる必要は無いからね。かえって、人間の方が危険な事があるから、不用意に手を出さないようにね」


 弥生は、沙希に指示と注意を行うと、添島の方を見ながら、


「沙希ちゃんのパートナーはどうしますか?。ある程度、経験のある人が良いと思いますけど……」


 と、添島に話を振ると、


「そうだねぇ、当初の予定では、戸川さんにお願いしようと思ってたんだが、タイミングが悪い事に、戸川さんに頼みたい案件が出てしまってね……。他の人も案件を抱えているし、手が空いている人がいない状態で困っていたんだが……」


 添島はニヤッとした表情をすると、


「そう言う訳だから、紫苑、月ヶ瀬さんのパートナー頼まれてくれないか?」


 今まで蚊帳の外にいた紫苑に、そう言うと、


「はぁ?、なんで俺が! 先週、やっと面倒な任務が終わって、まとまった休みが貰えたばっかりなんだぞ!。絶対にヤダね。誰もいないなら、和兄かずにぃか、翔子姉しょうこねぇがパートナーになれば良いだろ!」


 冗談じゃないとばかりに、そうまくし立てる紫苑に、


「私は、神田支所ここを離れるわけにはいかないし、早乙女さんには、戸川さんのパートナーをお願いしてる。お前は、学校があるから戸川さんのパートナーには出来ないし……。となると、ここにいるメンバーで月ヶ瀬さんのパートナーになれるのは、お前しかいないだろ?」


 添島がそう説得すると、隣に座っていた翔子が、


「紫苑、アンタこんな可愛い子がパートナーじゃ不満だって言うの? クラスメートなんでしょ? 手伝ってあげなさいよ。任務のこなし方を教えるのも、協会の先輩として当然の事でしょ。私からもお願いするから」


 興奮気味の紫苑をなだめるように説得すると、弥生も懇願するかのように、


「久世くん、沙希ちゃんは、私が研修担当した新人の中でも、一番優秀な子だと思ってる。早いうちから実力のある人について任務をこなしていけば、凄い人材になると思うの。お願い、力を貸して」


 3人に立て続けに頼まれ、旗色の悪くなった紫苑だが、まだ納得した様子は無い。そこへ、


「久世くん、私、初めての任務だし、迷惑かけたり、イライラさせちゃったりするかもしれないけど、私の事が嫌じゃなかったらお願いしてもいいかな?。私も、知らない人とお仕事するよりも、知ってる人の方が安心だし……」


 とどめ、とばかりに最後は沙希からそう頼まれれば、さすがの紫苑も断りきれず、


「わかった、わかったよ! やるよ、やりゃあ良いんだろ。全く、何でこうなるんだよ……」


 肩を落としながら、自棄気味やけぎみにそう答えると、深い溜息を付いた。添島は、紫苑の肩をポンポンと叩くと、


「そうか、助かるよ、紫苑。すまないが、よろしく頼むよ」


 と、嬉しそうに言い、翔子は、ほほ笑みながら


「なんだかんだ言っても、紫苑は優しい子だから、絶対断らないって思ってたわ。ありがとね、紫苑」

「沙希ちゃんの事、よろしくお願いしますね」


 続けて弥生も、ほっとした表情をしながら、深々と頭を下げた。

 紫苑は、ふぅと息を吐き、気持ちを入れ替えると、沙希に向かって、


「どんなに簡単そうな任務も、危険である事は変わらない。ちょっとでも違和感があったり、疑問に思った事があったら、相談しろよ。そのままにしておくと、自分だけじゃなく、パートナーや他の一般人に被害が出る事だってあるんだからな。後は、実際に任務をこなしながら教えていく。とりあえず、よろしくな」


 紫苑が、右手を差し出しながらそう言うと、沙希はその手を握り返しながら、


「はい、よろしくお願いします」


 と、にこやかな笑顔を浮かべた。添島たち3人は、その様子をほほ笑ましく見ている。


 この時、2人に託された任務が、ここにいる全員の予想を、遥かに超える大事件である事を、誰も知ることはなかった。


いつもより長めですが、キリの良いところまで書いてみました。

少々、読みにくいと思いますが、ご容赦下さい。

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