表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師と法術師  作者: 柏木 冬霧
第1章 出会い
11/90

所長室

更新しました(*^_^*)。

暑さで、少々バテ気味です。

ご覧いただいている皆様、いつもありがとうございます。

 東京都千代田区神田神保町・魂の守護者たちソウルガーディアン・神田支所事務所・所長室

 7月1日 午後5時10分


「やあ、月ヶ瀬さん、お疲れ様」


 所長室に入った沙希を迎えたのは、先ほど入室の許可を出した低く渋い声だった。沙希に声を掛けたのは、この部屋のあるじであり、神田支所の支所長、添島和夫そえじまかずおである。添島は背が高く、体格の良い50代半ばには見えない風貌の持ち主で、優しい眼差しが人に安心感を与えている。

 沙希の記憶では、添島は元日本支部所属のエリート守護者ガーディアンであり、彼の異名である“暴風の精霊術師ストームオブシャーマン”は日本国内の協会に携わる人間で知らない人はいないだろう。2年前に現役を退き、神田支所の支所長に就任したが、彼を慕い、目標とする守護者ガーディアンは数多くいるらしい。


 沙希は、マホガニー調のプレジデントデスクの前にやって来ると、


「お疲れ様です。何か?」

「呼び出しておいてすまないが、ちょっと待っててもらえるかな。とりあえずそこへ掛けてて」


 沙希が用件を聞くと、添島は書類から目を離すと、沙希の後ろにあるソファーを勧めた。


「はい、失礼します」


 そう言いながらソファーに座ると沙希は、新入所した時以来、入ったことがなかった所長室を見回した。

 15畳程の広さを持つ室内は、沙希の座っている応接セットに加え、左側には洋書などが入ったキャビネットが2台、左側は添島が座るデスクがあり、正面側には洒落たミニキッチンと小型の冷蔵庫、食器の入った小さめのキャビネットが置かれている。背中側は、入り口のドアと壁に風景画が掛けられている。ソファーから立ち上がり、白い石造りの家と花の咲き乱れる庭園を描いたその風景画をじっくりと観るが、どこの風景か沙希には解らなかった。

 沙希が風景画に見入っていると、


「待たせたね。うん? その絵が気に入ったかい? これはイヴォワールという、フランスのレマン湖畔にある村を描いたものだよ。色んな花が咲いていて、すごく綺麗な所だったなぁ。機会があったら行ってみると良い」


 デスクから沙希の隣へやって来た添島が、絵を観ながら沙希に笑いかけた。


「この絵は、支所長が描かれたものなんですか?」

「はっはっはっ、これは私が描いたものではないよ。私には、絵心が全く無いしね。この絵は、知り合いが描いたものを無理を言って譲ってもらったんだ。すごく気に入ってしまってね」


 嬉しそうに絵の話をする添島に、沙希は笑顔を返しながら、


「そうなんですか。でも本当に素敵な絵ですよね。私も、気に入ってしまいました」


 もう一度、絵を観ながら沙希はしみじみと絵の感想を話した。2人はしばらくの間、黙って絵を観ていたが、思い出したかように添島が、


「おっと、あんまりのんびりしていると遅くなってしまうな。さあ、本題に入ろうか。その前に、月ヶ瀬さん紅茶で良いかな?」


 壁掛け時計を見つつ、ミニキッチンの方へ行きながら、添島が沙希に尋ねると、


「あっ、すみません。紅茶で大丈夫です」


 沙希は、ソファーに戻りながらそう答えると、紅茶を入れ始めた添島を見ながら、


(支所長って、案外まめな人なんだ……)


 そう思うと、沙希は自然と笑顔が浮かんできた。

 程なく、トレイにティーカップを乗せて持って来た添島は、


「今日の茶葉がアッサムだから、ミルクティーにしたんだけど大丈夫かな?。よかったら、お砂糖使ってね」


 そう言うと、沙希の前にソーサーに乗ったティーカップと、シュガーポットを置いた。


「はい、ありがとうございます。いただきます」


 添島は、沙希の返事に満足そうにうなずくと、沙希の向かいのソファーに腰を下ろした。そして、


「月ヶ瀬さんが神田支所うちに来て、もう3ヶ月だね。研修はどうだった?」

「はい、覚える事も多いし、任務も思っていた以上にハードだったので、正直に言うとちょっと大変でした」


 と、添島に問われた沙希は、これまでの3ヶ月を思い出しながら、正直な感想を話した。

 添島は、隣のソファーに置いてあった赤いファイルを手に取り、中の書類に目を通しながら、


「うん、でも研修を担当した戸川とがわさんは、中々の高評価をつけているね。彼女は、任務に関してはシビアな人だから、自信を持って良いと思うよ」

「はい。弥生やよいさんにも何度か褒められましたけど、私的には納得がいかない部分もあって……」


 添島の報告に、沙希はいまいち納得できていない自分の気持ちを吐露する。


「まあ、後は少しずつ任務をこなしていけば、慣れてくると思うけどね」

「はぁ、そうでしょうか……」


 そう言う添島に、沙希は不安げな表情をしながら、ぽつりとつぶやく。続けて添島は、


「ここからが本題なんだが、月ヶ瀬さんに、今度の案件を担当してもらおうと思ってね。もちろん、まだ1人では無理だろうから誰かサポートを付ける。任務の内容は、もうすぐ戸川さんが資料を持って来るはずだから、彼女が来てから打ち合わせしよう」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」


 添島の話を真剣に聞きながら、うなずく沙希の表情に、緊張感が加わる。

 そこへ、≪コン、コン、コン≫ノック音と共に、


「戸川です。よろしいでしょうか?」

「どうぞ」


 綺麗なソプラノボイスに対して、渋いバリトンボイスで添島が答える。


「失礼します」


 そう言いながら室内に入ってきた女性を見て沙希は、やや弱気になっている気持ちを払拭ふっしょくするかのように、気合を入れるのだった。



次回沙希ちゃんの初任務が決まります。

他の説明が長くなってしまって紫苑の正体が明かせなかった・・・。

ごめんなさいm(__)m

更新は、月曜日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ