都会の片隅で・・・
初投稿、初小説です。
書き出しは、序章的な感じですので意味が分かりにくく、読みにくいかもしれません・・・。
ゆっくりと投稿していきますので、ある程度まとまってから読んでいただけると幸いです。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘ください。
東京都新宿区某所。
午前2時を少し回ったくらいだろうか。
夕方、6月のじめっとした梅雨独特の空気をはらうかのように降った雷雨はすでに上がり、やや肌寒い空気が辺りを包んでいる。
不夜城のように昼夜を問わず賑わいをみせる目抜通りの一画、雑居ビルとアパレルショップの間に路地はあった。
大げさにも広いとは言えないその路地は、普段人通りもなくネオンの灯りさえ届かない。そこに踏み込んだら最後、二度と戻れないそんな予感をさせるかのような深い闇が広がっている。
『♪クルルルルゥ、ルルルル……』
『♪キュルルルルゥ……』
その路地の奥、何も見えない暗闇から唐突にその奇妙な歌は流れてきた。
しかし、スマホやミュージックプレーヤーが主流になった現在、通りを行き交う人のほとんどがヘッドホンやイヤホンをしてお気に入りの音楽を聴いており、小さくゆっくりと紡がれるその歌に耳を傾ける人はいない。
仮に音楽を聴いていないとしても、通りは酔っ払いや若者たちの賑やかな声に囲まれており、歌はおろか灯りも見えないその路地に興味を持つ人はいないと思われた。
そんな人波の中、
「珍しいな……。こんな所に陸上がりの人魚か……」
小さな呟きと共に歩みを止めた者がいた。
16~17歳くらいだろうか。警察に見咎められれば補導されるであろう雰囲気の少年は、耳からイヤホンを外しながら路地に目を向ける。
『♪クキュルルルゥ……』
歌が紡がれていくなか、少年は足早に路地の奥へ進んでいった。
その姿は、あっという間に闇に紛れて見えなくなっていく。
やがて、
『♪ルルルッ……』
一瞬、路地の奥からカメラのフラッシュの様な青白い光がパッと輝くと、紡がれていた歌がピタリと止んだ。
程なく、先ほどの少年が路地から目抜通りへ戻ってくる。
「今の世の中じゃ、歌で人を拐かすのは難しいんだよ……」
少年は、そう呟きながら「ふぅ……」と軽く溜息をつくと、耳にイヤホンを戻し何事もなかったかのように歩き始めた。
少年は振り返らない。
通りを行き交う人々も、相変わらず路地を気にする事なく通り過ぎて行く。
それ以降、路地から歌が流れる事はなかった。
なるべく早い更新を目指しておりますが、不定期更新になりそうです。
気長におつきあいいただけると、幸いです。