四月の月 春一つ (2篇)
掲載日:2017/04/13
四月の月
冬の日の刺すような冷たい光は
いつの間にか失せていた
四月の月はどこか淋しそうな孤独な女の顔をしている
朧月に白い桜が浮き上がる
風に揺れ
何千何万の花びらが
鉄紺の空に吸い込まれていく
四月の月が呼んでいる
薄いヴェールをかむった白い月が
蒼い地球を見つめている
決して届くことがなく同じ距離を保ったまま
それでも強く引き合っている確信を持ちながら
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春一つ
白い月が
白い桜を浮かばせて
白い香りをはきだすと
それは春
優しい思いが胸に満ち
哀しい思いが胸を痛め
霞を食べておなかがいっぱいになると
それは春
東雲に
白い月が消えていく
朝方の夢は淡雪のように
まぶたの裏で溶けていく
春一つ
手の平で転がしてみると
暖かな甘い
桜の香りがする




