25 カメムシで地球を救おう
マイボが司令室の様子を映像化。わずかなうなり音と共に格納庫に司令室が投影された。
《――女王陛下!》
制御パネルのインスペクター画面を睨んでいたフード付きの貫頭衣を羽織った男が、強張った面持ちで振り返った。
《なんだ?》
長袖のスクール水着みたいなスタイルで歩き回っていたクララが真っ赤なロングヘアーをなびかせて男の前に立つ。身体にフィットした衣服であるからして、それはそれはいろいろな曲線がみごとに艶っぽい。
『たまりまへんな~』
と漏らすギアをキヨ子が睨むのも致し方がないのである。アキラだってキヨ子に睨まれまいとして、慌てて目線を逸らしておるし。
不埒な視線で外部から覗かれているとはツユ知らず、司令室の中はわずかに緊迫していた。
《さっきから電力消費が微妙に揺らいでおるのでございますが……》
《どういうことだ?》
《地球の衛星軌道に乗っていますゆえ、艦としては安定してますが、微妙に電力の消費が大きいのではと思いまして》
《おおかた娯楽室で兵士の誰かがくだらん遊戯器具を動かしておるのだろう。そう言えば、なんだあの体をぶるぶる震わせるマシンは? 誰が持ち込んだ?》
《ステップにまたがって下半身を激しく振動させるものでありますな。あれは娘子軍(女性部隊)の誰かが地球の骨董市で見つけたのを持ち込んだようでございます》
それまで黙っていたもう一人の男が、同じフードを深々と被った頭を上げた。
《最近、女性仕官どもが地球のつまらん風習に染まって問題になっておりますぞ》
《そうそう》
別の男。コイツはフードを頭の後ろに落として、スキンヘッドを照からしながら、
《だいえっと、とか申すくだらぬ運動にウツツ抜かしておりまして……とくにあの、リリー・ベルナード中佐など必要なかろうと思われる体を揺すっておりますぞ》
《なんなんだ、その……だいえっと、とは?》
尋ねるクララに、
《はぁ。なんだか体脂肪を少なくするとか……》
《兵士が痩せてどうする!》
隣の男がすかさず口を挟んだ。
《そうそう。ベルナードのあの豊満なボディが堪らんのに……》
と言った男がクイーンに睥睨され下を向く。
どこの世界も男は同じなのである。
《脂肪か……リリーには負けてられんな》
クララは息を吐くようにつぶやくと、自分の腹を摘んで見つめ、
《娯楽室へ行けばあるのだな?》
形のいい綺麗な顎を上げた。
『どこの世界も女はオンナでんな』
《女王さま……。電力の問題は?》
《かまわぬ。どうせ兵士がくだらんことに使っておるんだろ。放っておけ》
《しかし艦としましては、微細なことでもあとで大問題に発展するやもしれませぬ》
クララはその清澄な光がきらめく細長い瞳をさらに切れ長にして、
《……お主はほんにうるさいのぉ》
そして面倒くさそうに、
《2番。どうなんだ? 問題は有るのか?》
2番と呼ばれたフード付きの男が振り向いた。
『こいつら名前が付けられてないんや。下っ端でっか?』
『だろうな。キャザーンは女だけの集団で男は乗っていないはずだから、このアンドロイドがこき使われておるんだろ』
「えっ? 女の園なの?」
おいおい。アキラの目の色が変わったぞ。
『こいつもデュノビラ人かいな?』
「しっ、静かになさい!」
緊張感の無い我らが三銃士は司令官に叱られたのである。
「誰が三銃士ですか。三バカトリオです」
き。緊張感が削げていく……。
司令室では熱い会話が続いており、
《コレぐらいの電力の揺らぎは電磁嵐の中を飛ぶときよりも微小でございます。おそらく地球人の拵えた稚拙なスペースデブリ、いやデブリと呼ぶのもおこがましい。くず鉄ですな。それが艦のディフレクターに吸い込まれて消滅するときの消費でありましょう》
《ほらみろ。1番は心配性なんだ。電力ごときに気をかけるな。それよりもう少しでその問題は解消できる》
《そうそう。あの電磁生命体を2匹もろとも捕まえれば、数百年分の電力は無補給で得ることができますぞ。そうすりゃ1番のような微小なことで心配することもなかろうて》
捕まったらマジで奴らの言うとおりになるのだ。あぁぁ、やだやだ。
『ワテの照明係もこれで夢と消えたワ……』
消沈するこちらとは対照的に、向こうでは議論が白熱してきた。
《失礼なことを申すのではない。ワシのは心配性ではない。細かなミスも逃さない、完璧な性格をしておるだけだ》
《そんなことだから。ゑ(ウとユの間の発音)プシロン星系での仕事が失敗で終わったのだ》
サッと下を向いた1番を見て3番が言う。
《そうそう。心筋張力を一時的に弱める薬を惑星上空から秘密裏に噴霧して病人が続出するのを待ち、相談を持ちかけてきた政府の連中に、心臓機能を低下させる謎のウイルスだ。まもなく全住民が死ぬぞ。と脅しておき、ただの水を特効薬だと偽って儲けようとしたときな》
相槌を求めるように首をかしげる3番に2番がうなずく。
《まったくだ。病気の症状が持続する期間は半月。その間に全世界に似非特効薬を配らねばならん状況なのに、》
そして1番に向かって溜め息を吐いてから、
《お主、その水に超純水を使ったな。我々の計算ではそこらの水を使うからボロ儲けできるところを、超純水だぞ。宇宙で水を作るのにどれだけの経費が掛かると思っておる。それを全人口5億人に配ったのだぞ》
《ただの水といっても不潔なものを飲まして、まんがいち腹を壊したらどうする。われわれは生命体に傷を負わさずが鉄則なのだ。海賊とは違うんだからな。超純水なら不純物が一切入っておらん。こんな安心なものはないだろ》
《馬鹿者。結局、薬とその水で赤字になったんだ。便所の水を飲んでもあの星の住民はケロッとしておるだろ。何せ泥の中に潜って暮らしておるんだからな》
『なんや! キャザーンはミミズまで相手にしてまんのか?』
「ミミズって心臓あるの?」
『知らへん』
「高校生にもなって何を言ってるんです。ありますよ。ただし人間みたいにポンプ式ではなく、血管を絞るような動きをします」
「へぇー。キヨ子は何でも知ってるねぇ」
「ちょっとぉ、こっちまで脱線しないでよ」
「ごめんごめん」
《そんな古い話で蒸し返すな。タマの小さい奴だな。この地球が手に入ればお釣りが出るどころか大儲けできるぞ》
《うるさい。あの赤字を埋めるために戦闘機を全部売っぱらったのを忘れたのか》
《おかげで飛ぶのがやっとの航空機をかき集め、戦闘機のように見せるのにどれほど苦労したと思うんだ》
「あのカメムシ戦闘機のことだよ。やっぱりハリボテの武器だったんだね」
アキラの言うとおり、格納庫の奥に並ぶ戦闘機のことである。一瞥しただけでキヨ子どのは見ぬいておったわけだ。
改めて我輩はサラサラヘアーの幼女を尊敬の念で見つめた。
《ふん。そういう2番も、雑な計画で失敗しとる。どっちも同じじゃ。地球でいうところの味噌クソ一緒と言うやつだ》
言い争う男たちに割り込むツルツル頭の3番アンドロイド。
《その言葉……。使い方がおかしいぞ。そう言うときは、同じ穴の……》
《あああぁ、うるさい! オマエらつまらんことで張り合うな。それよりカメムシの調査はどうした。早くやらぬか!》
クララは憤懣やるかたない態度でプリプリと高圧的に告げると、言い争う3人を引き裂いた。
なんだか拍子抜けだった。宇宙一のインテリ集団だと謳われたあのキャザーンのイメージが砕け散った瞬間である。
『こんな三文役者にお前は騙されたのだぞ』
『穴があったら入りたいワ……』
「NAOMIさん。準備はいいですか?」
キヨ子の黄色い声が飛ぶ。
「オッケー。偽情報を流すわねー。ぽちっとな」
別にどこかのスイッチを入れるわけでもないサイバー犬だったが、明らかに何らかの変化が起きた。それはざわめき立つ連中を見ただけで一目瞭然である。
《女王陛下。カメムシに関する有力な情報を見つけました》
3番とか呼ばれていたアンドロイドが首を伸ばした。
《そうか。ただの昆虫であったろう? どうせちっぽけな虫コロだ》
《いやいや、そんなちっぽけな昆虫に地球人があれほど異常反応するのはおかしゅうございます。よくお調べになったほうが……》
《1番は心配性だからな……。で、どんな虫だ? 申してみ》
3番アンドロイドはしばらくモニター上の文字を読んでいる様子。視線がゆっくりと移動していた。
そして……はっきりと生唾を飲み込む仕草をした。
キャザーン製のアンドロイドはできが良いようだ。と想起しつつ、ニヤニヤするNAOMIさんの横顔を眺める。
『あ……』
今のは失言である。訂正しておこう。
こっちのロボット犬のほうがはるかにできが良い。表情の変化から言葉遣いにいたるまで、人工物の醸し出す硬い動きなどが一切見られない。滑らかに優しい動きはロボットでもアンドロイドでもない。
「うふふふ。おもしろくなるわよぉ」
本人は女のつもりなのだから、さらにタチが悪い。
《女王さま……》
3番アンドロイドが長い沈黙に陥っていた。故障でもしたのか?
《どうした。3番?》
2番と1番も不安げな面持ちで視線を滑らせてくる。
《それが……あの……》
なんとも濁った言葉であった。
《南米大陸のジャングルで派生したカメムシの亜種には、全長50メートルのがいるそうです》
《50メートル!》
「50メートル!」
司令室のクララとアキラの声が重なった。
「ちょとマイボぉ。大げさ過ぎるよ。50メートルってビルが破壊されちゃうじゃない」
キヨ子でさえも慌てて、
「そうです。やりすぎはいけませんよNAOMIさん。後でつじつまが合わなくなります」
「そぉ? 何でも大きいほうが喜ばれると思ってさ。このあいだ買い物でスーパー行ったときに近所の奥さんがダンナの自慢話をしていたわよ。うちのは大きいとか」
『な、NAOMIさん。良い子の坊ちゃん嬢ちゃんの前でそのような過激な発言は控えたほうが……』
『何が過激なんや? 大きいことはいいことだ、ってコマーシャルしてたやんか』
『お前はいつから地球で暮らしていたんだ。そんな古いことをよく知ってるな』
「ゴアだって知ってるじゃないか。僕は初めて聞いたよ」
『我輩は、その……。昔のビデオを見ておるからな』
マイボが苦笑めいた声で応える。
「わかったわよ。過去の話に変更しとくわ」
司令室でもクララの非難めいた声が響いている。
《50メートルの昆虫などいるか!》
《あ? 失礼しました。過去に……古生代、しかもカンブリア紀に生息していたらしいですな……。おかしいな。こんな表示蘭はさっきまで無かったぞ》
首をかしげる男と、うなずくクララ。
《その時代ならありえるな。しかし50メートルとはでかいな。東京タワーの何個分だ?》
《女王さま。それはちょっと比較する対象がおかしゅうございますぞ》
《なぜだ? よくテレビで言っておろうが。ドーム何個分の広さとか》
「それにしてもキャザーンてテレビっ子なんだね」
アキラが呆れた風に言うのも仕方が無い。我輩もそうであるが、地球のテレビ、中でも日本のテレビはこの星系で一番面白いかもしれない。
《それは対象物がドームより大きい場合に使うことでして……》
《うるさい! オマエ、クイーンであるワタシに逆らうのか! この場で分解してもいいんだぞ》
《こ、これは申しわけございません。別に逆らうつもりは毛頭もございません》
クララはフンと鼻を吹いて、
《オマエらは毛が無いからな》
慌てて2番が口を挟む。
《東京タワーの15パーセントの大きさでございます》
《なんだちっこいな。だいたい7匹で東京タワー1個分か》
《…………》
「この人たちバカだけど計算は速いね」
『せやろな。なんせサギ集団は銭の計算が命でっからな』
1番が首を捻る。
《ワシの計算では8パーセントになるが……》
クララもくるりと身体を旋回させて1番と向き合った。
《どうした? オマエらの答えが異なるなど、これまでになかったぞ》
《東京タワーは634メートルあるはずだ。だったら8パーセントだ》
《そんなことはない。東京タワーは333メートルですぞ》
《どういうことだ? 東京タワーが何個もあるのはおかしかろう?》
《まさか。……いやおかしいですな》
幼児とは思えない大きな舌打ちと共にキヨ子が息巻く。
「東京タワーなんてどうでもいいでしょ。いつになったら私の出番が回ってくるのです?」
そろそろ痺れを切らしそうである。
《ブルジュハリファなど828メートルですぞ。カメムシ16匹分です》
《それならドバイシティタワーなど2400メートル。カメムシ48匹分に匹敵する》
《それはまだ計画中の建物だ。現存するもので無いと意味を成さぬぞ》
『会話の内容に意味が無いぞ!』
さすがに我輩も苛立ってきた。
焦燥に駆られる気持ちがクララにも伝わったのか、
《もうよい。何の話をしていたのかわからなくなったぞ。で、現代のカメムシはどうしたんだ? 何故に地球人はカメムシを怖がる》
「あー。だるい! もう起動させます」
痺れを切らしたキヨ子がホロデッキシステム起動させた。
同時に響き渡る激しい振動と轟音。
格納庫の床が軋み、隔壁を固定するパーツがいくつも吹き飛んだ。
「あわわわわ」
ショックと揺れに耐え切れずにアキラが床の上を転がり回り、
『あだだだだ。なんでんねん』
我輩たちが入るスマホも激しく揺れ動いたのである。
「すっごーい。キヨ子さん」
マイボが目を剥いて見上げる前には、高い格納庫の天上に着きそうな三角頭。頑強そうなボディは横幅のある甲虫ぽいカタチで、そこから伸ばした六脚のうち一番太い2本で直立する体を支えて、残り4本を節々から微細に蠢かせるその様は、まさに地獄から這い出てきたティラノサウルスを思わせる巨大カメムシだった。
恐竜みたいな体型は昆虫の時のビリジアングリーンではなく、どす黒い深緑の光沢を放つボディにギザギザと尖ったヒダが何本も走る甲殻類特有の姿。さらに不気味に睨む赤い目と飛び散った鮮血にも見える背中に描かれた模様はおどろおどろしく、それは背筋を凍らす迫力であった。
バケモノと化したカメムシは2本の触角をびゅんびゅんとしならせて、ムチのように宙を引き裂いている。その頭がキヨ子の前にゆっくりと下りてきた。
「すすすすすすす」
いつまで『す』を言い続けるのだ、アキラ。
「すすすすす……すっご~~~~い」
腰が抜けて床にペタンと尻を落とした身体を逸らして、アキラは驚愕の視線で物体を見上げた。
大型トラックの運転席にも匹敵する巨大な昆虫の頭を小さな手のひらで撫ぜるキヨ子。お化けカメムシは従順な飼い猫みたいにおとなしくされるがままになっていた。
「いかがです? 私の拵えたスーパーカメムシですわ」
誇らしげにキヨ子が胸を張り、そいつが太い後ろ足を使って足踏みをする。
同時に響き渡る重量感を伝える轟音と船内の軋み音。
当然この異常事態は司令室にも伝わった。
《な、なんだ今の振動は。警報が鳴っておるぞ》
《し、侵入警報だ!》
《セキュリティはどうした? 保安部! 保安部のリーダーはどうした!》
叫び声を聞きつけて、そこへクララよりもさらに豊満でムチムチスタイルの綺麗な女性が、これまた胸を強調する戦闘コスチューム姿で飛び込んで来た。
《クイーンさま。何者かが攻撃を仕掛けてきた気配がありますので、部隊を召集しておきました》
キヨ子とは比較できないほどに美しい金髪のショートカットヘアーであった。その髪の毛は滑らかで金色の絹糸のようだ。
《リリーか。さすがに手早いのう》
《この部屋の能無しドロイドとは違いますわ。あたしたち娘子軍は新鋭ぞろいですもの》
カメムシの足踏みが起した振動で床にひっくり返っていた何番かの男が、ツルッパゲ頭を擦りながら立ち上がって言い返す。
《わ、我々など、すでに戦闘態勢に入っておったワ》
男はリリーに向かって傲然と詰め寄り、リリーは怯む様子もなく吠えた。
《何を言う。そこでひっくり返っていただけではないか》
明らかにクララに向けた言葉遣いとは一線を引いた高飛車な口調で言い返してきたリリーに、禿げアンドロイドは手を出そうと腕を伸ばしたが、
《戦闘──っ! よろしっ!》
胸の谷間を顕にした戦闘服。その腰にはスカートみたいなフレアー。それらを大きく翻して男を正拳で突いた。
その瞬間、甲高い金属音が渡るが、やはり男はアンドロイド。半歩さがっただけで平気だった。
《第二段階、よろしっ!》
いちいち声に出す必要があるのか、リリーはスタイルのいいボディをしゅらりと旋回させると、勢いよく後ろ回し蹴りを開始。
フレアーの裾が派手に捲くれ上がり、真っ白できれいな脚が男の顎にヒット。首が千切れるほど湾曲してアンドロイドは部屋の奥に吹っ飛んだ。
頭の先から足の先まで、定規の代わりにつかえそうなほど真っ直ぐに伸びた妖艶なボディを片足で支えた蹴りの体勢は綺麗に決まっており、その姿はまさに武闘家のそれであった。
ニヤニヤして見守るクララに躊躇することなく、演技を披露する体操選手のように、続いて宙を舞うと、ぼけっと突っ立っていた1番と3番を開脚蹴り。そして左右にぶっ飛ぶ男たちを尻目に着地。空中に翻っていたフレアーが腰の周りにまとい戻る。その間、スカートのようなヒラヒラの内側――ショートパンツよりもセクシーな衣装が丸見え状態。しかも白な。
《おいおい、リリー。ワタシのオモチャを手荒くあしらうな、おかげで最近こいつらの知力が衰えてきてるんだ》
クララの忠告に女性はにこやかに微笑み、
《だって。練習相手にちょうどいいんですもの……お姉さま》
手のひらを叩きながらクイーンの前で片膝を落した。
「………………」
司令室の様子を映し出す映像に見惚れるアキラ。あんどスマホの(中の)集団。つまり地球防衛軍たち。
『いつ見てもリリー・ベルナード大佐は色っぽおますな~。さすがキャザーンの娘子軍や』
『お前、やけにキャザーンに詳しいな』
『ファンクラブ入ってまっからな。せやけどオマはんかて結構なもんやがな』
『そりゃぁ。この銀河で娘子軍を知らん奴はおらんからな』
固唾を飲んで我々の会話を聞き入っていたアキラも賛同。
「すごいなー。ジーちゃんのハーレムもいいけど。娘子軍もいいねぇ。今日からファンになろっかなー」
『せやろ。よう見ときや。地球の女子にはおらへんタイプがそろってまっからな』
『いやはや、アキラの言うとおりだ。我輩も実物を見るのは初めてだが……これがキャザーンの娘子軍か。さっき召集を掛けたと言っておったな。なら全員の顔を拝めるかもしれないな』
「うそっ! ほんと? よかったー、ここに来て」
こいつはキャザーンの戦艦をどこかのアイドル劇場と勘違いしておるな。
「うほほほ……」
「こ、こら! 私のカメムシを見なさい。どうですこの怖そうなフェイス」
「無理よキヨ子さん。男連中は怖いものよりセクシーなほうを取る生き物なのよ」
う~む。やはりこの人工ビーグル犬は、オンナの人生を悟っておるな。
ところで地球の危機はどこへいったのだ? たしか侵略の魔の手が伸びるところではなかったのか?
『あの、オケツ堪りまへんな』
「うほほほ。だねぇ」
ホロデッキに映されたセクシー戦士にかぶりつくバカ二人。
「アキラさんっ! ほんとにもぅ!」
キヨ子は怒り心頭のようだ。その声が激しく格納庫を渡るのであった。




