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我輩はゴアである  作者: 雲黒斎草菜
第一巻・我輩がゴアである
1/100

 1 これはいわゆるひとつのプロローグなのである

短編風ですのでサクサクご覧いただけると思います。


  

  

  

 我輩はゴアである――。

 異世界へ落ちてきたお茶目な宇宙人であるからして、巷にあふれる『我輩モノ』ではないので勘違いしないでくれ。


 我輩はゴアである――。

 何度も言っておるが、名前が『ゴア』なんだから仕方が無い。

 この異世界から7900光年彼方の、お前ら異世界人からは計り知れない大都会の星系からやって来ておる。


 観光でな。


 やいやい言うな。

 この異世界が地球と呼ばれる惑星であるのは知っておる。銀河系の中では結構有名な太陽系の第三惑星であろう? 話によると、有機生命体が棲む惑星だというではないか。半分水に浸かった土地の上に暮らしておるだけでなく、身体の大半までも水でできているらしいな。なんだそれ?

 我々電磁生命体から見ればあり得んぞ。だいたい宇宙には水がほとんど無いのだ。それなのに水槽の中で泳ぐ金魚みたいに、当たり前のように暮らしておるから宇宙に目が向かずに、常に地上のどこかで戦争をやるような凶暴な種族が存在するのだ。


 まことにあれだな。我々正世界から見れば地球というのは異常な惑星だな。だから誰も近づこうとしないのだ。それが証拠に他の星からのファーストコンタクトは無いだろ。ほらみろ。嫌われているからだ。


 だが太陽系は明媚な惑星系として意外と有名で、だから我輩はこのツアーに参加したのだ。そりゃあ楽しかったぞ。惑星の中でもとりわけ大きかった、メタンと水素の混じる海で海水浴をしたり、なんだかおかしな輪っかの載った銀色の惑星では、その輪っかに落書きをしてガイドにこっぴどく叱られもしたが、それはそれで面白かったのである。


 ツアーで一緒だったカリンちゃんとも仲良くなって――。

 カリンちゃん……どしてるかな。


 何?

 それがどうしたって?


 ふむ。もう少し説明を加えよう。


 だいたい。お前ら異世界人(人類)に我輩の言葉など通じるはずが無いのだ。この文章も我輩の星の言葉で語っておるのだが、知能の低いお前らには当然理解できまいと思って、地球語の一種、英語で表現してやろうと思ったのだが、我輩が日本と言う国に滞在している以上、この国の言葉に翻訳するのがよかろうと思って、わざわざ英語を日本語に訳しておるのだ。感謝するんだな――英語で言うところの、thank……thankful……だったかな?

 いや……。ふむ。

 日本人には関係のない言語の話しはよそう。


 つまり、我輩は7900光年彼方から観光でやって来たのである。

 ツアーの仲間はガイドの言うことをよく聞くいい子ちゃんばかりなので、今頃、アイソン彗星に寄っておるはずだ。その証拠に彗星の核が砕けただろう。アレはツアーの目玉のひとつ。『彗星電撃ダーツでプレゼントを貰おう』ゲームが行われた証拠である。


 彗星に向かって電磁サージを放って、当たったら賞品がもらえるというツアーのオプションだ。ということは誰かが大当たりを出したと言うことだな。


 少しは悪い事をしたなと反省はしておる。せっかくお前らが企画した地上からの彗星見学ツアーが台無しになったみたいだからな。ま、それは我輩のせいでも何でもない。★∂ηξψ観光のゲームが災いしたんだからな。


 なに?

 ★∂ηξψ観光って知らぬのか……。ふむ。さすがにこんな辺鄙な場所までは知られてないか……。


 なんでお前だけ日本に滞在しておるのかって?


 うむ。なかなか立派な質問である。褒めてやろう。

 実はな……。野蛮なヤカラが多く生息する立ち入り禁止の惑星のそばを通り過ぎようとした時だった。


 ヤカラって解かるな。小さなことに難癖をつけてくる迷惑な人種のことだ。被害を受けた者もおるだろう?

 小麦粉を練ってイースト菌で膨らましてから焼いた丸い物体に、肉のひき潰したものやら得体の知れない葉っぱを何枚も重ねて、おどろおどろしいネバネバした液体をぶっ掛けて、こんがり焼いた餌を配給する店を知っておろう?

 スマイルは0円ですとか言ってただろ。最近消えつつあるが……。


 その葉っぱが少ないとか、ドロドロの液体がこぼれて服を汚したとか、ふつうそんなこと言うか?

 ――って、我輩は思ったぞ。

 ところで、何の話をしておるんだ我輩は?


 え?

 あ、そうそう。


 ツアーコンダクターからくれぐれも第三惑星には近づくなと言われていたのだが、あまりの美しさに……。


 そうだ。美しい星ほど実は怖いのだ。綺麗なものには棘があるっていうやつだな。美人が目の前で尻を振るからって飛びついたらいかんぞ。その後をホイホイついて行って、

「どこかでお茶でもしませんか?」

 などと言われても、即行で首を縦に振ってはいかんぞ。いい雰囲気になってきたところで、裏口から怖いお兄さんが出て来て……。


 だから。さっきから我輩は何の話をしておる?



 そうか、忠告を守らず地球に近づいたら……の話しだったな。


 そう、あれだ。青天の霹靂というやつだ。

 どうだ我輩を舐めてもらっては困るぞ。こんな難しい言葉だって知っておるのだ。勉強してきたからな。シャーマン∀アカデミーでな。

 おわっと。また話が逸れるところであった。なぜにこう一貫性が無いのだろうな我輩の会話には。そうあれはまだ子供の頃。夏休み前にもらう通信簿、その家庭連絡欄にいつも書かれおったな。ゴアくんは落ち着きがありません、とな。こーんなに落ち着きのある我輩がなぜに……。


 あー。わかったって。先に進めるからやいのやいのせっつくな。


 で。行くなと言われた地球に近づき過ぎたところで、運悪く雷に叩き落されたのだ。なんなんだ地球の大気放電は挨拶もなしに、ドガァァァーンだぞ。ったく……。


 で、ビックリして電柱とかいう柱状物体に張り付く変電トランスの中に逃げ込んだ、いや避難してやった我輩だ。地球のことなら何でも知っておる。シャーマン∀アカデミーで勉強してきたからな。後で考えたら誰も来たこともない異世界、地球のことをシャーマン∀アカデミーの奴らどこで知識を仕入れたんだろな。


 ま、いっか。深く考えないようにしよう。

 話を最初に戻すぞ。


 我輩はゴアである。カタチは無い。

 生まれは7900光年彼方の星雲である。

 宇宙を漂う電磁生物と呼ばれる生命体である。


 よいか。ここを強調するぞ。

 『ち、て、き(知的)生命体』である。


 その高知能生命体である我輩がカミナリに落とされて路頭に迷っておるのだ。つまり、我輩は異世界(地球)に落ちた迷子である。

 正世界(宇宙)に戻れないのである。


 異世界転生じゃないか、だとかワケの解からないこと言ってないで、誰か……助けるのだ。こんなところに転生などしたくない。それよりも早くしないとツアーの一向は太陽系を離れてしまう。それまでに何とかするのだ。

  

    

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