第3話 産声
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第3話 産声
おぎゃー!おぎゃー!
なんだこれ!目が開かん!
ただ叫ぶことしかできない!
おぎゃーーーー!おぎゃーーーー!
おぎゃ...あ、眠けが...。
こんな感じで3ヶ月は過ぎていった。
毎日毎日、いつだろうとどこだろうと叫び泣き、パンツが気持ち悪ければ泣き叫び、お腹が空けば泣き叫び、なんとなく気に食わなければ泣き叫んだ。
そしてもうすぐ5ヶ月。
今日もゆりかご的なものに入れられ目を覚ました。目の前には2人の男と女がいた。
「あら、起きたわ。あ〜もう!今日も世界で一番かわいいわ〜」
「俺たちの子だからな。そりゃあ可愛くもなるだろうな!」
女はそういいながら自分を抱き上げ頬擦りしてくる。
いい匂いするな〜。日だまりのにおいといった感じだ。
そして5ヶ月もすれば周りのことも流石にだいたいわかってくる。
この2人は俺の母さんと父さんだ。母さんの方は金髪碧眼でゆるく三つ編みに結った髪を左の肩にかけている。まさに物語に出てくる良妻賢母と言った感じだ。ちなみにおっぱいが大きい。
父さんの方は短く整えられた赤みがかった茶髪で目の色も茶色である。ちょっとあごひげが生えている。しかしこの父、ごついしでかい。服を着た状態でも全く隠しきれない筋肉と露出している腕から伺える浮き出る血管。まるで、前世の映画で見たグラディエーターの様な体をしている。そんな風貌でも今は顔をにへっと破顔させている。
この両親はどちらも日本人には到底見えない。そしてどちらも相当の美形だ。まだ鏡で自分の姿を確認できていないけど、これは期待してもいいんじゃないかと思う程だ。
「それにしてもこの子、泣かなくなるの早かったわね〜。お隣のマルアスちゃんは生後7ヶ月だけど泣いているらしいし、それが普通らしいわよ?私としてはもうちょっと泣いてくれていてもよかったのだけど。」
「いいじゃないか!肝が座っていて!立派な男になりそうだ!
もう体術を仕込んでもいい頃か?」
「絶対やめてくださいね?」
ゾクッ!
俺を抱きかかえたままで微笑を携えた母さんの背中から得体のしれないオーラが立ちのぼる。
「は、はぃ...。」
父さんはこうなった母さんには逆らえないようだ。小刻みに震えながら頷いていた。
「あらあら。オムツ変えましょうね〜。こういうところはまだまだ赤ちゃんなのね〜。」
ちびっちゃった。
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その後も俺はすくすくと育っていき、もうすぐ3歳である。
バランスが取れなくて転んでしまうこともあるが、自分で歩けるようになったのは非常に便利だ。家の中は日本の住宅とはまるで違う文化であることが改めて実感される。
基本的に木造であり、俺の記憶の中で一番近いものを挙げるとハ〇ーポッ〇ーのウィーズ〇ー家をもっと広く綺麗にした感じだ。
豪華ではないが温もりがあっていいと思う。調理場には見たこともない果物が干し柿のように干されていた。紫でりんごより大きくトゲの様なものがたくさん付いているが、この前干される前のものを触ってみたがぷにぷにしていた。
いつもご飯を食べるリビングには、壁の上のど真ん中に2本の曲がりくねった角をもつ牛のようなものの頭骨が飾られていた。
これは父親の趣味らしい。
そういえばうち一家の姓はマーティンらしい。
ゆえに父親の名前はギルバート・マーティン、
母親の名前はハイネ・マーティン、
そして俺の名前はディルア・マーティンらしい。
母さんからはデルと呼ばれている。
さて、3歳になり自分の足で歩けるようになってから知ったことがいくつかある。まず、この家は自分の想像以上に広いようだ。
自分は今まで寝室やリビングを行ったりきたりする生活だったが、他の部屋が何個もあった。
俺が生まれる前にはお手伝いさんがいたらしく、その人用の部屋や客室、書斎、地下室、薬品っぽい臭いがする部屋、極めつけには武器庫と思われる部屋もあった。普段は鍵がかかっているのだが、どうして気づいたかというと、ちょうどその部屋の前をうろうろしていたとき父親がそこから槍を担いで出てきたのだ。隙間から中が見えたが他にも武器らしきものが積み上がっていた。
もしかしなくてもこの家はけっこう金持ちなのか?
だとしたらなかなか幸運だ。この危険な世界で生きていくには最初の資本は持っておきたい。
それと、庭もなかなかの広さがある。だいたいサッカーコートの半分くらいはある。庭の隅には厩舎と小さい畑があり、2頭の馬がいた。流石に金持ちの象徴である噴水の様なものはなく、庭は割と殺風景である。
次に、家がある場所は田舎のようだ。家の周りは畑や放牧地帯が多い。そう遠くない位置には森があり山々が立ち並ぶのが見える。そんな田舎の人々からうちの両親は頼られているようだ。怪我をしたり、有事の際には人が駆け込んでくる。
マーティン家はおそらく領主なのかもしれない。
「デルちゃん。そろそろ晩御飯だから庭にいるお父さんを呼んできてちょーだい。」
「はーい!」
玄関を出て庭に出ると、鍛錬中のギルバートがいた。
上裸のギルバートが大振りの大剣で色んな型の素振りをしている。月明かりに照らされるギルバートの鍛え上げられた肉体はある種の美しさを放っていた。大剣が振るわれる度、風がディルアの頬をうつ。
すごいな...ただの鍛錬のはずなのに、目が引き付けられてしまう。ギルバートの技量の為せる業か。
「お...ディルア、そろそろ晩飯か?」
「え?あ、うん!今日はグレイトボアの煮込みだよ。」
いけないいけない。毎回ギルバートの鍛錬に見とれてしまう。
「おお!そりゃ早くいかんとな!」
そういうと、ギルバートは体に大きい水の玉を纏う。上半身だけ水の玉の中に入った形だ。そして水玉の中で水流を作り動かしていく。しばらくそうしていると徐々に水玉を小さくしていき、顔に移動させ同じように水を動かすと、最後に水玉を体から離し消滅させた。さっきまで水に浸かっていたはずの頭髪は少しも湿っている様子はない。
もちろんこれはギルバートの水魔法によるものだ。
ギルバートはいつも鍛錬が終わると汗を流すために水魔法を使って、このように体を洗い流している。なかなか見ていると面白いものである。
「よし、いくか!」
「うん!お父さんの魔法かっこいいね!」
「あれかっこいいか?変わってんなあ。」
「かっこいいと思うんだけどなあ。」
その日のグレイトボアの煮込みはうまかった。