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異世界支配は赤目様の気まぐれ  作者: ひよこ丼
第一章 全ての始まり
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第一章7 『気持ちの行方』

 

 呼吸を忘れてその姿に見入った。


「―――天使か」


 生唾を飲み込むことで、初めて全身に空気が回った。脳内を回っていた単語だけ、ようやく外にでる。異世界に来て初めて、心から驚きを感じた。麻痺していた心情が一気に溶かされ、流れ出していく――。そんな感覚が全身を支配し、古びた感情が体から追い出されていくのを感じる。


「えっ…!?どうしたの?もしかしてお腹痛い?それとも――私、なんかしちゃった?」


 その言葉が、酸素供給の役目を忘れていた心臓を慌てさせ、時の流れに乗らせる。それでも脳の痺れは相変わらず取れないままだ。


「俺、そんな変な顔してる?……軽く、いやかなりへこむんだけど」


「だって、涙が―――」


「なみだ―――?……は」


 彼女の伝えたい事に気づき、目元に触れると、じんわりと温かい液体が溜まっていた。無意識下の出来事に理解が遅れる。自分でも涙の理由が分からなかった。拭い、その雫が本物だと再確認する。


「女の前で泣くとか、かっこ悪ィ……。ごめっ、ごめん、見なかったことにしてくんない…?」


 溢れでる涙を片手で拭いながら、残った手を前に出して顔を隠す。これ以上失態を見せ続けたくなかった。


「―――いいの」


「え?」


「泣いてもいいの。そう、泣いてもいいんだよ。男の子が泣いてたって、別にかっこ悪くなんかないんだから。辛かったり悲しかったりしたら、その分泣いてもいいの。むしろ笑顔でいるほうが危険」


 思っても見なかったセリフを前に、あきらかに多い瞬きで返す。言っている意味がわからなかった。少女の言葉を反芻し、噛み砕き、脳に浸透させるべく努力する。


「泣いてもいい?」


 結局オウム返しになり、タツキの言葉にフレシアは大きく頷いた。


 ――そんなわけがない。そんなものまやかしだ。あってはならない。泣くのは敗者の印だ。泣くのは負け犬の証拠だ。泣くのは、弱者のすることだ。


 自分の行為が肯定されるという、タツキの常識の範疇外にある出来事に戸惑う。経験したことのない状況に、一つの感情が胸に灯った。――これは、なんだろう。

 理解できずに考える。

 笑い飛ばすべきか、真顔で返すべきか…。どちらにせよ、彼女の言葉を曲げて捉えている証拠だった。


「あなたがなんで泣いてるか、私は全然分かってあげられないけど……」


「―――ん、せんきゅな、おかげで落ち着いた。もー大丈夫。平気。ほんとに。これ以上女の子に心配させちゃ俺の顔が立たねぇからな」


 ついさっき会ったばかりの他人。

 なのに、なぜこうも心が掻き乱されるのだろうか。フレシアを見ると胸が熱くなり、感情が暴発し、歯止めが効かなくなる。

  

「………そう。ならよかった」


「やっぱ美少女は笑顔が似合うね。家に置いておきたいぐらい」


「――飢えた獣が。それ以上フレシア様に近づかないでください。八つ裂きにしますよ」


 純粋な気持ちで固めたタツキの一言が、ルイの警戒心をMAXまで上げた。今まで二人の会話を黙って聞いていたのが、ついに我慢の限界が来たらしい。丸みをおびた幼い顔が厳しさに歪んでいるのを見、己の発言の諸々がいかに犯罪めいていたかに気づいた。そして、こうなることを予想していたとしても、やはり自分は呟やかずにはいられなかっただろうと。


 それほど"フレシア"という少女は、常識を逸して可愛かったのだ。

 彼女が前にいるだけで目が眩み、地に伏せそうになるほどに。



 温かな日光を受け、きらきらとした輝きを魅せる黄金の長髪は、見る者の心を強制的に惹きつける。ふんわりと広がり、なんとも柔らかそうな質感の髪質。それに矛盾し、さらさらと惜しげもなく風に吹かれたその髪は一束一万でも惜しまない。


 一部は花をモチーフにした高級そうなリボンで留めてあり、ツインテールとして頭の横で揺れている。毛先の一本一本まで艶があり、一つの芸術作品としても高い価値がつくだろう。


 肌は透け通るほどに白い。その肌色とは対照的に、タツキの顔ほどに赤く染まった唇をより一層際立たせている点については、男の欲情が無性に唆られる。今にも飛び出して奪ってしまいたくなるほどだ。


 小さな体には余分な肉が一切ついておらず、そこらにいる女共とは大違いである。ルイも同様だ。こちらは痩せすぎているといってもいい。ルイと並んだ姿を写真におさめておきたい。


 顔は言わずもがな。十歳に満たないであろう童顔に、黄金比とも言える位置で収まるそれぞれのパーツ。瞳はすべての希望を宿す黄色。

 その目に不安げな涙をいっぱいにため、上目遣いでこちらを見上げる様子は、まさに天使のそれだ。…例えその行動が、出会った途端に泣き出し、天使発言をした異常者を警戒してのことだとしても。


 ルイも現実にいないレベルで綺麗だが、タツキの心を捉えたのは他の誰でもない―――フレシアという一人の女の子だった。


 幼女に興奮する大人(体は子供)もどうかと思うが、この瞬間だけは歳の差を感じずにいた。


「なんでそんな言葉を子供が知ってるのか謎だが、誤解を招くからやめてくれ。俺ほど誠実な男は他にいないぜ?」 


 コンマ一秒で心を奪われたタツキだ。説得力に欠けている。初めてフレシアに抱いた感情のせいで、普段の会話のテンポから微妙にずれている。


「いきなり涙を流してフレシア様の同情を貰い、慰めを得た途端泣き止んで軽口を叩く。―――覚悟はできましたか」


「なんの覚悟だよ!?そりゃ泣いたのは俺の失態だし、フレシアに助けてもらった自覚はあるけど!」

   

 フレシアの涙と比べ、この涙の理由は自分勝手なものだ。それなのに彼女は身勝手な涙を肯定し、安心を与えてくれた。――そうか。この気持ちは絶対的安堵だ。母に抱いたものと同系の。

 それにしては体が異常に火照る。

 首を傾げながらも、身体に合わない母性を持つフレシアから視線が外せなくなっていた。不可思議な現象に、体の主は訳もわからず従っている。

 タツキの感情の正体はまだ本人も知らないところにある。


「――つまりフレシア様に見惚れていたと」


「何がなんでそーなった!?……ま、これだけ可愛いんだから仕方がな」


「飢えた獣は死ぬべきです」


「っだぁー!分かった、見てません、絶対に見てませんからー!」


 そう言いながら目は自然とフレシアに向く。

 彼女が視線に気づき、柔らかなほほ笑みをしてくれたが、反射的に下を向いてしまう。頬が紅色に染まる。

 普段一切照れのないタツキには珍しい行動だった。


「……飢えた獣は死ぬべきです」


「あれ、これ否定してもしなくても死ぬルートじゃね!?詰んだ!?」


「ま、まってルイ。それに私、全然全くほんとに状況が分かってないの」


「焦ってる顔もめちゃかわ…」


 美少女はどんな顔でも可愛い。そんな共通理解は、タツキ内辞書にNEWを頭にしてインプットされた。表情をころころ変えるフレシアが、堪らなく愛しい存在に思える。


「初対面相手に何言っちゃってんだって話だけどな…」


 性格がルイほどに辛辣だったり、裏の顔が存在したりするかもしれない。人間本当の自分を隠すのには慣れている。私生活で他人を騙すのは、もはや息をするのと同じぐらい自然なことになっているだろう。それでも、この子だけは違うと信じている。根拠ない自信だ。


 突然現れた美少女キャラに、どう接すればいいのか分からず思考放棄する恋愛経験ゼロ、成瀬他月。


 とりあえず可愛い少女に巡り会えない悲しき男どもの分まで二人の姿を目に焼き付ける。フレシアの魅力そのものに惹きつけられたのだからロリコンではない。…はずだ。


「フレシア様の魅力にとりつかれた男に襲われています」


「ちょと待てやあああ!!何サラッと爆弾ぶっこんでるんすかルイさん!もしかして心読める魔法でもあんの!?……いや、断じて思ってたわけないけど。やましい感情とか一切ないからな? あーもー恥ずいっ!!つかお前、まじで誤解しか生まねぇな!」


 必死に誤解を解こうとまくしたてる。その剣幕に二人とも呆気にとられていた。


「ごほん。えっと、フレシア様? ご紹介いたすは、常日頃代打担当、任される役は脇役オンリーで有名な、影薄な俺ナルセ・タツキ!質実剛健――じゃなくて…、あー名前、名前ね、マイネームは他月…。さっき言ったっけ?ま、いいや、気軽にタツキって呼んでほしいな、なーんて…」


 恥ずかしさを誤魔化すため、言葉が洪水のように溢れ出した。誤魔化すようなセリフが止まらない。口に出す言葉すべてが空回りしている気がしてならなかった。

 脳内は完全にパニック状態にあり、自己紹介は虚しいことしか言っていない。


 勢い任せに呼び捨てを求めたアホ過ぎる自分。出会って数日も経っていないうちに名前を覚えてもらうおうなんて図々しいにもほどがある。しかし、タツキのちっぽけな脳は、今を逃せば自分を売り込むタイミングは永遠にやってこないと判断した。


 下心から始まった発言は、どれだけ自らの無能さを掘り下げまくっていたかに気づいた途端、言葉尻が急降下し終結した。タツキにとって弁明したいことだらけだが、フレシアにはその意図が半分以下しか伝わっておらず、今のところその心配は杞憂に終わっている。


 名前呼びを取り消そうか取り消さまいか、葛藤に苛まれるタツキに不思議そうな視線を注ぐフレシア。その純粋な眼差しがタツキの言葉を濁らせているとは気づいていない。


「えーと、タツ、キ………?」


「ご馳走様です!!!」


 首を傾げてはにかみ、更には自分の名を呼んでくれる女神に深い感動を覚え、全力お辞儀。


 今まで"好きな人"や"恋愛"的なものにとことん疎かったタツキは、唐突に芽生えた気持ちのやり場に困っていた。


 この感情を恋と呼ぶには軽すぎる。

 恋に時間は関係ないとはよく言ったものだ。今のタツキは、フレシアの"外見"だけに惚れた現金な野郎と思われても仕方がない。 


 タツキとしては"外見"ではなく"心"に惹かれたんだと弁解したいところだが、自分自身感情に理解が追いついていないため、もどかしく思うことしかできない。


 タツキ自身容姿が悪いわけではなく、告白されたことは二度や三度経験済みだったが、自ら積極的に切り込んだ覚えはない。忌々しい目を差し引いてなお、交際を承諾してもらえる魅力が自分にあるとは思っていなかったのだ。遊び半分で付き合う感覚もわからなかったので、その方向の希望はとうの昔に諦めていた。


 だが、一度目の告白―――「赤目超レアでカッコイイ」という理由には大いに喜んだ。存在を認められた喜びだった。


 それは必要にされてる感に飢えていたタツキが最も欲していたものだった。が、その思いはある強い想いに絶え、断った。絶対に大事な人には孤独を味わってほしくなかったのだ。ましてや自分のせいで傷つく彼女を見るなんて耐えられない。


 そんな他人優先なタツキが恋をしたことは……実は一度だけある。以来何年もの間女子と接することはなくなったのだけど。


「覚える必要はありませんよ、フレシア様。散歩ついでに拾った命です。あってもなくても変わりませんから」


「俺は道端に落ちてる小石かなんかか!?命の重み学んだあとだっつーのに、ぶれないなお前は」


「安心してください、小石以下の価値です」


「なんかどっかで聞いたような……って、敬語で毒舌とか、別にそっち方向の属性期待してるわけじゃねーよ?」


「――ルイにまでいやらしい目を向けるつもりですか」


「お前の思考回路ほんとどーなってんの!?」


 一生終わらないような口喧嘩を、赤の他人と繰り広げる奇妙なシチュエーションはなかなかないはずだ。だが、ストレスのみを蓄積するはずの言い合いも新鮮で、どこか心地よく感じた。歳の近い…ルイのほうが幾分か下だが、その年代と話した記憶はもう遠い昔にある。更に、長い半ニート生活が昔の記憶を堰き止めていた。

   


 そんな二人の織りなす世にも珍しい喧嘩物語は、フレシアの笑い声で幕が下りた。


「ふふ…あはは。ルイのそんな顔、初めて見た…ふふっ」


 その鈴が響くような透き通った声に、思わず超特急で首を向けてしまう。見なければ損と直感が言っていた。

  

 まるで、フレシアの周りだけ花が咲き綻んだみたいだった。

 控えめな笑いは他者の心を癒やし、胸のごちゃごちゃを綺麗に拭い去ってくれる。


 ――恋愛情愛。そんな言葉ではとても言い表せない。身を焼き焦がされるほどの激情。心を突き動かされるような激動。



  血が騒ぎ告げていた。


  この子を守れ。



 出会ったばかりのくせにと馬鹿にされるかもしれないが、すでにタツキの心の半分がフレシアによって満たされている。

 見たことのない超特上級の笑顔には、心の境をそっと抜き取る力があった。

  

「…もう帰りましょうフレシア様。こんな薄汚いボロ雑巾のような男と話していては調子が狂います」


「ふふ、それにしては楽しそうだったわね、ルイ。あと、この子をおいては帰れない。でしょ?」


 いたずらっぽく、でも凛とした声で話すフレシア。その声の変わりようにまた胸が締め付けられる。

 主人には頭が上がらないと見て、さすがのルイもしぶしぶ動きを止めた。


「もしかしてだけど、"この子"って、俺のこと?」


 自分のほうが年上なのに年下扱いな自分に肩をすくませた。どれだけ信頼度を詰めても、弟ポジションが最骨頂なのは虚しすぎる。

 姿がこれの今、同い年あたりが適切だと思うのだけれど。


「そうよ、えーと、タツキ。えへ」


 恥ずかしそうに名前を口にすると、女神は立ち上がった。二回目の名前呼びに、年齢なんてちっぽけな障害は頭から瞬時に消え去った。 


 短めのスカートを手で抑えて立つ彼女から分かったことは、身長と身なりだった。 自分より少し低い位置に頭がある。男の必須条件、身長の勝利に小さくガッツポーズ。

 それに、"様"のつく階級ならばさぞ裕福な暮らしなのだろうと思っていたが、フレシアのワンピースは簡素なものだった。


 簡素というより、白い布を切って縫っただけのような…。


「フレシア様。こんなお土産、クローク邸にはとてもじゃないですが持ち帰れません」


「…ルイ。この草原で子どもを見捨てることが何を意味するか分かっているわよね」


 自分より小さな子に子ども呼ばわりをされたり、女性特有の言い回しをされたりするのに少々違和感を感じるが、なにより話の内容が見えてこない。

 見ている分だと、中々引き下がらないルイを、フレシアが必死になだめているようにしか見えないが。


「ですが」


「ルイ?」


「はい、分かりました。フレシア様の仰せのとおりに」


 珍しく強気なフレシアに、ついにルイが折れた。感情のこもっていない声でルイが答え、うやうやしく腰をおる。

 若干早めのお辞儀を済ませ、流れる動作でそのままこちらに歩いてくる。滑るような足取りで、全く音がしなかった。


「フレシア様の(めい)により、今からタツキ様を保護、いたします」


 嫌々ながら話していることはタツキにもすぐに分かった。言葉の区切りに刺が垣間見える。


「名前呼びに戻ったのは嬉しいとこだけど、今どーゆー状況なわけ?俺はどこに連れてかれるんだ?」


「タツキ様のお話も、フレシア様のお話も、全ては邸宅に戻ってから進めてもらいます。自分には関係ないことなので」


 冷たい声音は崩さずに、ルイが左手をつき出す。そして空中で閉じていた手を開き、静止。


 和平の証か…握れという合図だと了承し、実行に移した。


 華奢な体に似合う細い指を自身の指に絡める。初めて女の子の手を握った感覚に自然と汗が出た。頬が瞳と同じ色に染まっていくのが分かる。慣れないことに照れつつも、相手はどんな顔をしているのだろうと―――…


 意外や意外。無表情だった顔が笑顔に変わった…わけもなく、どっちかというと怒りを含む軽蔑した目でこちらを見ていた。そっちから誘ってきたくせに。

 不思議に思い口を開く間もなく、怒りに任せた足蹴りを鳩尾にくらった。


「ぐはっ…!!!?」


「汚い手で触らないでください。ルイの手まで穢されますから」


 状況が飲み込めず呆然とするタツキと、心底嫌そうな表情をし蔑むルイ。

 驚きが痛みに勝るうちは良かったが、数秒もすればお腹の痛みに体を折ることとなった。丁度ひらがなの"く"を表すみたいに。


 不意をついたマジ蹴りの効果は、喧嘩未経験者には絶大である。胃液が逆流してくるのを感じ、慌てて口をふさいだ。口の中に気持ち悪さと酸っぱさを感じる。何度かつばを飲み込みそれを引っ込ませると、乱れた呼吸を整えるより早く、


「…っ、はー、はー、…少女の蹴りまじ半端ねぇええ!一瞬意識とんだぞおい!! 初対面に本気のケリはないだろ…、げほっ」


 何度か咳き込みつつも、呼吸の乱れを整える。


「大変失礼致しました。不快すぎて、つい。ですが、ルイは宣言したはずですので」


「確かに言ってた気もしないことはねーが…」


「勘違い、濡れ衣、数々の愚言。地下牢行きでもいいぐらいですね」


「牢屋だけは勘弁して下さいルイ様!寂しいと死んじゃう体質だから!!」


 あながち間違いでもない。変わった境遇でも根っからの話し好きだったタツキが、あの暗い部屋で今まで過ごしてこれたのは、祖父の存在があったからだ。一人ぼっちな世界を想像するだけで心が凍える。


「ルーイ!意地悪しないの。タツキだってつい言っちゃうだけなんだから、いちいち相手にしてたらダメよ?」


「さすが俺視点天使のフレシア様だぜ!…って、相手にされないのはそれで悲しいからね?」

 

「分かりました、フレシア様。以後気をつけます」


 ルイがぺこりと頭を下げ、フレシアに忠誠を誓う。相変わらずその声に感情は無く、機械じかけのロボみたいだ。一連の動作を説明書通りにこなすだけの

 タツキはというと、痛みの引かないお腹を抑えながら、子供が子供に何やってんだか、と半ば苦笑気味にその光景を眺めていた。

  

「俺としちゃ不服な質問だけどさ、なんでそんな警戒心強めなわけ?危なげな雰囲気出してるなら謝るけど」


 タツキは色を除けば自分の目が好きだ。 鼻から離れた位置にあるわけでもなく、米粒ほど小さいわけでもない目。どちらかというと大きいサイズで、母に似て目元が緩み綺麗なタレ目の形になっていると思う。第一印象で"優しそう"という印象を獲得できるはずだ。全て仮定の話なのが悲しいとこだが、優しげなイメージには間違いない。はず。


「お望みならば言って差し上げましょうか。まず―――」


()けろぉぉおぉッッ!!!」


 そのまま重力に伴って、全く贅肉のついていない彼女の体に抱きついた。

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