表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Brave spirits  作者: あらと
6/12

塔へ

塔の調査依頼を受ける事にしたカズキ。

「さて、これからどうすればいいのかな」

カズキはユウナに問いかける。

「案内役として、巫女を一人おつけします。あと騎士団から数名お供させていただけると思います。カズキ様さえよろしければ、夜明けとともに出発していただければ、午前中には塔に着けるかと思います」

ユウナは答える。

そうだ、今は夜中だ。

何もわからない状態で無闇に動く訳にもいかない。

夜明けまでにはまだ、3~4時間はあるだろう。

塔に入る前に確認したい事もある。


「この付近で、魔法をつかっても大丈夫な所ってある?」

カズキはユウナに尋ねる。

さいわい、まだ眠気や疲労感が無い。

自分がどの程度、ゲームの時と同じように行動出来るか知っておく必要がある。

「それでしたら、この神殿の北側に魔法の練習をするための場所がございます。そちらでしたら、ある程度の魔法をお使いになっても大丈夫です。今から行かれるのであれば、ご案内いたします」

「はい、おねがいします」

カズキはユウナについて神殿の北側に向かった。


そこは20メートル程の切り立った崖になっており、所々に焦げた様な跡がある。

どうやら元々、攻撃性の魔法などを練習するための場所らしい。

「少し下がっていて」

カズキはユウナにそう声をかけると、マントの裏に着けてあるスクロールを一枚出した。

「リフレッシュ」

カズキがそう唱えると、スクロールは青い炎につつまれ燃え尽きた。

MPを使わない、スクロールによる魔法だ。

「スクロールはそのまま使えるみたいだな」

カズキは呟くと、右手を崖に向けて魔法を唱える。

「ライトニング」

カズキの右手から電撃が走り崖を焦がす。

「ファイアエクスプローション」

今度は、暴煙が崖に炸裂する。

「うん。魔法も大丈夫そうだ、後は」

カズキは呟きながら背中の片手剣を抜く。

「バーニングブレード」

その片手剣は炎に包まれる。

「ウエポンバッシュ」

カズキは近場にあった3メートル程の岩に斬りつけると、その岩は粉々に砕け散った。

「よし、剣スキルも大丈夫だな。体もゲームの時と同じく動くし、後はアイテムか」

カズキは腰に付けている小物入れから、小瓶を一本取り出して中身を飲んだ。

ヒーリング用のポーションだ。

飲むと体の内側から力が、湧いてくるのがわかる。

「アイテムも大丈夫っと」

カズキは呟き片手剣の炎が消えるのを待って鞘に収める。

「さてと、とりあえずこっちの確認したかった事は終わったけど、後はどうすればいいかな?」

「明け方まで神殿でお休みください。明朝、塔にご案内させていただきますので」

ユウナはそう言い神殿に向かいカズキもついていった。


神殿に戻ると一人の巫女が待っていた。

「姫様、お待ちしておりました」

巫女がユウナに頭を下げる。

「レン。ちょうど良いところに。こちら冒険者のカズキ様です」

ユウナは巫女にそう紹介する。

「カズキ様。こちらは風の巫女、レンと言います。今回、カズキ様を塔にご案内させていただきます」

「お初にお目にかかります。私は風の巫女、レンと申します。カズキ様の足手まといにならないよう、務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

レンはカズキに深々と頭を下げた。

「あっ、こちらこそ、よろしくお願いします」

少し照れながら答えるカズキ。


「それで、レン。呪符はいくつ作れましたか?」

ユウナがレンに尋ねる。

「2つが限界でした……」

「そうですか……」

レンの答えにユウナが目線を落とした。

「と、言う事は?」

カズキがユウナに問いかける。

「前回の調査では、戻れた者は一人だけと聞いております。その方を含め、騎士団からは3人が参加していただけると思います」

「今回は5人って事か」

「姫様。少し無茶なのではありませんか。もう少し準備を整えた方がよろしいと思います」

レンが口を挟む。

「それは、わかっております。しかし塔の中の魔力が日に日に大きくなっていくのを感じます。何より塔に囚われていると思われる、冒険者の方々のマナの気配が少なくなっているのも感じるのです。それにシオンの安否も心配です」

「シオンさん?」

カズキが口を挟む。

「シオンは、このロウナ神殿に仕える火の巫女です。前回の調査に加わりました」

「と言う事は、彼女は戻れなかったと」

「はい。前回の調査では、第7層までたどり着けたのですが、シオンと冒険者様4人、騎士団員5人が戻れなかったと聞いております」

「なるほど」

カズキは呟きながら考える。


前回の調査では、11人中10人が帰還出来なかった。

しかし第7層まではたどり着けているので、そこまでの情報には困らないだろう。

ただ今回は、約半数の戦力で挑まなくてはならず、ユウナの話からすると、時間的な余裕も少なそうだ。

とりあえず上層を目差しつつ、フィオナとシオンの捜索にあたるべきかと、考えを巡らせる。

「塔は何層ぐらいあるのかなぁ」

「騎士団の見立てでは10層ぐらいと聞いております」

「あと3層を、何とかしなきゃいけない訳か」

「そうです。かなり無理をおかけしてしまいますが、よろしくお願いいたします」

「まあ、やれるだけやってみるよ。ダメそうなら逃げ帰ってくるけどね」

カズキはユウナに笑顔で答えた。


「それでは姫様、カズキ様。私は出発の準備を整えたいと思いますので、いったん失礼します」

レンは一礼をして、神殿の奥の方に消えていった。

「カズキ様は、出発まで少しお休みください。時間がまいりましたら、お声をかけさせていただきます」

ユウナはそう言うと、カズキを個室に案内した。

個室には簡単なベットと机に椅子がある、一時的に休息をとるためのような部屋だった。

とりあえずカズキはベットに横になり出発の時を待っていた。


2時間ほど経っただろうか。

部屋の扉がノックされる。

「カズキ様、ご用意が整いました」

ユウナが迎えに来た。

そのまま神殿の南門まで来るとレンが馬を用意して待っていた。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ。ご武運を、お祈りしております」

ユウナは両手を胸の前に組んで祈るように言った。

「まあ出来るだけの事はしてくるよ」

カズキとレンは馬に乗り歩きだした。


レンの話しによると、塔までの道のりは山道を2時間ほど下り、草原を2時間ほど走り、途中に休憩を入れて5時間ほどで着けるらしい。

その間、レンは色々な事を語ってくれた。

巫女姫ユウナはロウナ神殿の責任者で、国の祭事や神殿の管理、巫女の育成など様々な仕事をしている事。

巫女姫の呪符は、ユウナの血から作られており短期間では、大量に作れないと言う事。

火・水・風・土の四つの精霊を司る巫女がそれぞれ居て、自分は風の巫女として修練を積んでいるので、普通の人間よりマナの量が多いため、塔の内部でも動いたり魔法が使えるだろうとの事。

これまでの調査では、なかなか結果が出なかったので、前回の調査に初めて火の巫女が同伴した事。

火の巫女、シオンは親友であり無事なら助け出したいと。


そんな話を聞きながら馬を走らせていると、やっと塔が見えだした。

「あちらです」

レンは塔を指さす。

そのまま少し馬を走らせると、塔の手前に大きなテントがいくつか見えだす。

「あのテントに騎士団の方々が居ます。まずはそちらに向かいましょう」

レンとカズキはテントに向け馬を走らせた。


テントの前に着くと3人の騎士が待っていた。

「よくおいで下さいました、冒険者殿。自分はこの分隊を任されているオスムと言います」

一番手前に立っていた騎士はそう言った。

「自分はカズキと言います。よろしくお願いします」

「私は風の巫女、レンです」

カズキとレンは馬を降りてそう答えた。

「お二人ともお疲れでしょう。立ち話もなんですから、テントの中で少しお休みになりながら話をしましょう」

オスムは二人をテントに招き入れた。

テントに入ると、中にはテーブルと椅子があり、座るように勧められる。

カズキとレンが座ると対面にオスムが座り、その後ろに二人の騎士が立ち、これまでの経緯を話し出した。


前回の調査で第7層まで到達出来た事。

第1~3層までは、近場に生息しているゴブリンやオークの巣と化していたが今は全て排除して、外に待機している騎士団が新たな進入をくい止めているため、ほぼ無人だという事。

問題は第4層からで、ここからのモンスター達は定期的に召還されているらしく、倒しても数日経つとまた復活するらしい。

前回の調査から5日経っているので、多分復活しているだろうと。

第4層はスケルトンの集団がいて、やっかいなのがスケルトンオーガが一匹まじっている事。

第5層にはスケルトンドラゴン、第6層にはケルベロスが上層に登る階段を守っている事。

そして第7層には白金色のドラゴンが居て、前回はこのドラゴンに敗走してオスムだけが逃げ延びれた事。


「それで今回は、巫女姫の呪符はいくつ、ご用意出来たのでしょうか?」

オスムはレンに尋ねる。

「2つだけです」

レンの答えに顔を曇らせるオスム。

「2つだけですか。仕方がないですね。アスタ、マイト、今回はお前達にも一緒に来てもらうぞ」

と、オスムは後ろに立つ騎士に声をかける。

「わかりました」

アスタとマイトと呼ばれた二人の騎士は、そう答えた。

「分隊長が、自ら来られるのですか?」

カズキはオスムに尋ねる。

通常、現場指揮官は残って、後方から全体的な状況判断をすべきだ。

「分隊長とは言え、前任者が先のオークとの戦いで重傷を負ってしまい、引き継いだばかりで、まだ半人前の分隊長です。残る部下にも優秀な者が居ますので、塔の周辺の警備には問題ありません」

オスムは一度、息を飲み話を続ける。

「自分は前回の調査で唯一の生き残りで、塔の内部を知っています。それに何より、自分をかばってくれたサトマル殿に、報いてやらねばと思っているのです」

オスムの言葉にカズキは驚く。

「サトマルさんも、この世界に来ていたのですか?」

「ええ、前回の調査で冒険者として参加していただきました。お知り合いの方でしたか」

オスムは目線を落としながら答えた。


カズキは考えを巡らせる。

前回は4人の冒険者がいて、その内2人はフィオナとサトマルだ。

この二人の実力は知っている。

しかも前回敗走したという第7層のドラゴンは、たぶんバハムートだ。

今の戦力で、どうにかなるだろうか。

さらに悪い事に黒幕には、このモンスター達を召還出来るほど、強力な力を持つ魔導士が待っている事になる。

その者と対峙した時に、自分は何が出来るのかと。

「今更、色々考えても無駄かな」

カズキは呟き決断する。

「それでも行ってみるしか無いか。オスムさん、案内をよろしくお願いいたします」

これから、塔の調査が始まるのであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ