ソロのカズキ
クリプトン王国の草原フィールドで、カズキはいつものようにソロで狩りをしていた。
このゲーム内ではレベルや職業というものはなく、繰り返し使う事で各種スキルを上げるか、自分がどの程度の動きが出来るのか正確に把握する事で強くなれる。
例えば剣で斬りつければ、その剣のスキルが上がり、盾や剣または籠手で攻撃を受ければダメージを受けづらくなるスキルが上がる。
完全に攻撃をかわすのであれば、自らの動ける範囲を正確に把握し、攻撃範囲から逃れるしかない。
一応パラメータにはHP・MPがあるが、あくまで全体的なダメージというか疲労的な数値であり、目をつぶされれば治すまで視界が無くなったり、手を切り落とされれば剣を握ることが出来なくなる。
もちろん首を切り落とされれば、例えHPが100%であっても即死する。
このシビアさがプレイヤー自身の技能差として出るのも、このゲームの醍醐味として人気を集めている。
そして実際の人間は日常生活の中では、肉体を守るため身体能力の半分も使われていないと言われているが、このゲーム内ではその制約が外れているので、最初は驚くほど体が動く。
実際カズキは、モンスター化した大イノシシの攻撃を2メートルぐらいジャンプしてかわしたり、片手剣で首の根本を狙い一刀両断している。
今日は素材になる大イノシシの牙を集めるため、右手には1メートル程の日本刀の様な片刃の片手剣、左手には50センチ程の小型剣を装備している。
大イノシシの突進に対し、左手の剣で牙をいなすようにかわし右側に回り込むと、右手の剣を首元に叩き込んでいる。
これは、剣での受け流しスキルと片手剣の打ち込みスキル上げをしながら素材集めをしているわけだ。
こうして一通り周辺のモンスターを狩りつくし、リポップまで一息つく。
視界の左上にはHP・MPが表示されてるが今は両方共に70%を切っている。
HPはもちろん体力値だが、攻撃の直撃を受けなくても受け流しスキルが高く無ければダメージは0には出来ない。
今日は受け流しスキルを上げるため、ぎりぎりの見切りを試したため何回かは直撃を食らってしまった。
「まだまだ、修行が足りないな」
ぽつりと呟いて、カズキは魔法を唱える。
「ヒーリング」
魔法の詠唱の終わりと共にカズキの体が青い光で包まれる。
体力回復の魔法だ。
「リフレッシュ」
つづいて唱えた魔法は精神力の回復魔法でこちらは緑色の光だ。
これらの魔法は他のゲームとは違い一瞬で回復はしない。
おおまかだが5秒で1%程回復し、約3分間効果があり30%ほど回復する。
ソロで活動するには、このぐらいの安全マージンは必要だ。
ちなみにだが、このゲームではMPはマジックポイントではなく、メンタルパワーだ。
魔法で消費するのはもちろん精神攻撃をうけた場合や、武器スキルなどを使うときにも消費する。
HP・MPとも0になると突然、戦闘不能になるのではなく30%を切るぐらいから体の動きが悪くなったり視界がぼやけだしたりし、15%を切るとほぼ戦闘不能になってしまう。
一度戦闘不能になってしまうと、高スキルの回復魔法を使うか一度、寺院で回復してもらわなければならない。
だからこそ、ソロでは特に安全マージンに気をつけねばならない。
「そろそろポップしだすかな?」
HPが90%を超えたところでカズキは一人つぶやいて次の戦闘に備える。
しかし、ふと右上に表示されている時間を見るとPM7:45と表示されていた。
「ありゃ、時間切れか」
カズキが所属するギルド”まったりマニー”は、集まれる人たちで午後8時から10時ぐらいまで適当にパーティを組んで適当に冒険をする。
「もうちょい、稼ぎたかったかなぁ」
カズキは、ぽつり呟いて集合場所がある城下町へと向うのであった。




