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黒猫  作者:
4/37


 どうしても自分で来た覚えはなくて、眠る前の記憶を頑張って掘り起こすと、私がまどろみの中に落ちたのは、あの薄暗い教室だった。


 先輩が参考書を読んでて…


 ……そうだ、先輩。

 わざわざ運んでくれたのかな。


「…咲ちゃーん?」


「なあに」


 カーテン越しに、咲ちゃんの疲れた声が聞こえてくる。


「保健の先生は?」


「さあ、職員会議じゃない?」


「咲ちゃん」


「なによ」


「私、熱出てることになってたの?」


「そうよ、担任に頼まれて、やさしいやさしい咲ちゃんが、まどかを起こしに来てあげたのよ。このまま誰も起こしてくれなかったら、まどか夜中の学校に一人取り残されてたかもね」


「ありがとう」


「どういたしましてー」


 カーテンを少し開いてみると、咲ちゃんはすぐ側に背中を向けて携帯をいじっていた。


「咲ちゃん、彼氏さん待ってるんじゃない?行っていいよ」


「そうねー。まどかもただの仮病だったみたいだし。心配して損した」


「ごめん」


「今度アイスね」


「……おごる」


 ぱちん、と携帯を閉じて、咲ちゃんが振り返る。


「荷物ここに持ってきといたから。プリントも入れてる」


「うん。ありがとね」


「はいよ。じゃあまた明日ね」


 ぽんぽん、と私の肩を叩いて、咲ちゃんは颯爽と保健室から出て行った。

 後には、静けさだけが残る。


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