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こんこん、とノックの音が遠くからした。
続いて、ガラガラガラ、と引き戸の開く音がする。
またガラガラガラ、と今度は閉まる音がなって、足音が私の元に近づいてきた。
なかなか開いてくれない瞼に従って、私はまた心地いいまどろみの中に落ちていく。
落ちて、いこうとした。
「まどかー、入るよ?」
だけどそれはばっさりと阻止されて、シャッとカーテンが開く。
同時に瞼を伝わるまぶしさに、私は声にならないうめき声を上げた。
「はいはい、もう昼寝は終わり。布団の中にもぐりこまない! もう具合だいぶましになったでしょ?」
具合?
疑問符が声に出る前に、ばっさりと暖かい掛け布団が取り払われた。
「あーあ、スカートのまま寝たの? プリーツが崩れちゃうじゃん」
「……咲ちゃん?」
「はいはい、咲ですよー」
てきとうに返事をしながら、彼女はてきぱきと皺のよった私のスカートを手で伸ばし、乱れた髪を手ぐしで整えてくれる。
「どれ、お熱は?」
前髪に伸びた咲ちゃんの手のひらが、ぴとり、私のおでこにくっついた。
寝起きのおでこに、ひんやりと気持ちいい手のひら。
気持ちがよくて、思わず目を閉じる。
「うん。よしよし、下がったみたいね。ってこら、もう寝ない。目開ける!」
怒られてしまった。
咲ちゃん今日は怒りっぽいみたい。生理?
「咲ちゃん、私、熱なんか元からないよ」
「は?なんだ、じゃあサボり?」
「いや……うん。サボっちゃったのかな」
首を傾げると、呆れた視線が飛んできた。
「もー。まどかが寝ぼけてるー。めんどくさいー」
言いながら、けだるそうにカーテンの向こうに消えていく。
――あれ、私いつの間に保健室に来たっけ?