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ロータス、動く 〜フィサリス家の長い一日2−2〜

活動報告小話より♪


本編168話目の続き。

怪しい客に、ロータスたち使用人さんsが動く——。

 旦那様が出張で留守のフィサリス公爵家に突然現れたモンクシュッド男爵なる人物。


「奥様に来客でございますが……」


 ためらいながら門衛が私のところにやってきたのは、ランチタイムにはまだ早い時間でした。

「奥様に来客、ですか」

「はい」

 私も初耳ですし、ましてや門衛も聞かされていませんから、二人して怪訝な顔になります。

「奥様からそのようなことは聞いてませんね」

「はい。僕もです」

「お客の用件は聞きましたか?」

「大事な話だから門衛になど話せないと言っています」

「ふむ……。客はその男爵一人ですか?」

「いえ、男爵とその令嬢、そして赤ん坊の三人です」

「赤ん坊?」

「はい。デイジーくらいの赤ん坊です」

「…………。とりあえず私が会いましょう。通してください」

「かしこまりました」


 男爵とその娘、そして赤ん坊。

 何か嫌な予感がしましたが、まあなんとかできるでしょう。




 門衛に案内されてエントランスに入ってきたモンクシュッド男爵。


 おやおや。これはご本人ではありませんね。


 直接モンクシュッド男爵に会ったことはございませんが、今年から絵姿入りになった貴族年鑑に載っていた絵姿とずいぶん特徴が違いました。特に頭頂部が……。

 これは男爵の名を語るニセモノ。

 ですから、その令嬢(と言うのも片腹痛い!)もニセモノであることはわかります。

 それに、娘と旦那様が出会われたという時期を考えてみても、旦那様が奥様以外の女に目をむけるなど考え付かない時期です。戦でお屋敷を留守にしていた頃……ええ、それはまめまめしく手紙を寄越してきていましたからね! それ以前ならどうだかわかったもんじゃありませんが、お連れ様と別れて以降、旦那様が奥様以外を見たことなんてございません。

「デリケートなお話のようでございますから、サロン(こちら)ではなく別のお部屋をご用意いたしますので、少々お待ちください」

「早くしてくださいね。こちらもそう暇ではないもんで」

 モンクシュッド男爵(仮)に断りを入れて、私はサロンを出ました。


 さて、これからどうしましょうか。

 まずあの怪しい二人は早急に身辺調査をしないといけませんね。それまで別棟に隔離しておきましょう。あそこなら我々の監視の目も行き届きやすいですから。

「ダリア」

「はい」

「サロンの二人を別棟に」

「わかりました。侍女かんしは何人つけましょう」

 さすがはダリアです。

「5人ほど」

「手練れの者をつけましょう」

「頼みました」

 きりりと顔を引き締めたダリアが頷きます。ダリアに任せておけばあの二人をうまく引き止めておいてくれるでしょう。ああ、そうそう、別棟の周りの警護を増やさねば。


 それと、旦那様にもお知らせしなければ。愛人と隠し子の件、真実でないとは思いますが……しかし、旦那様ですからね。いや、信じておりますよ? でも旦那様ですから。早馬を用意させないと。

 懐から紙とペンを出すと簡潔にこの状況を認めて、

「これを早馬で旦那様の元へ。おそらくもうロージアの近くまで帰ってきているとは思います。大至急」

「かしこまりました」

 エントランスにいる護衛騎士に渡しました。

 もう一人詰めている騎士には、別棟の警備を厳重に、中の二人を逃さないようにするよう指示しました。


 それから、奥様です。


 さっきからずっとこちらの様子を窺っておられましたからね、話は全部聞かれたと思います。ショックを受けておられないといいのですが……。今はまだステラリアと一緒にメインダイニングに潜んでおられますよね?

「奥様?」

 そっとダイニングに入ると、サロンに通じる扉のところに二人を見つけました。しかし様子がおかしい。

 奥様がステラリアに抱えられるようにしてうずくまっているのです。

 ショックで気分を悪くされた、か?

 足早に二人に近付き奥様の顔色を見れば、血の気がありません。

「どうなさいました?」

「めまいがしたそうで、ふらつかれたのです。まだご気分がすぐれないようなのでこうして落ち着くのを待っているところですわ」

 奥様の背をさすりながらステラリアが説明してくれました。

「ちょっと風邪っぽいかな〜って! もう大丈夫よ!」

 健気に元気なふりをする奥様ですが、そんな青い顔で微笑んでも説得力ありませんよ。

「ショッキングな出来事ではございますが、あれはあれはモンクシュッド男爵ではありません。ご安心ください」

「あ、やっぱり? ロータスもそう思ったよね? 貴族年鑑に載ってた絵姿と違うんですもの」

 さすがは奥様、ちゃんと貴族年鑑(絵姿付き)を読破し、フルール貴族の顔を覚えていましたね。さりげなくお勉強していただいていてよかったです。

 それはさておき。

「ええ。ですから、とりあえずここは騙されたふりをして早急に調査いたしましょう。別棟ならば警備しやすいので、そこに軟禁しておきます」

「おおー! お願いします」

「今さら旦那様が他所に愛人を作るはずがございませんが……。万が一のことを考えて、入念に調査させます。ええ、旦那様ですから」

「そうね、旦那様ですものね……。お願いね、ロータス」

「かしこまりました。奥様はご自分のお部屋で安静になさっていてください」

「お、お昼は使用人さん用ダイニングで……」

 体調悪い方をそのままにしておけるはずがありませんよ。

「ステラリア、お昼はお部屋にお持ちして」

 すがる奥様を無視し、私はステラリアに指示しました。

「かしこまりました」

「うえええ〜ん……はい、でも、そうします」

 珍しく奥様が素直に引き下がりました。これはよほど体調がすぐれないのでしょうか?

 心労と相まってこじらせてもいけませんから、すぐに医師様を呼ばないと。

 ステラリアと一緒に部屋に向かう奥様を見送ったあと、私はアマリリスに医師様を手配をさせました。




 早急にやらねばならないことが一段落したところで、私はベリスを執務室に呼び出しました。


「ベリス。先程別棟に案内した人物について調査してほしい。顔は見ましたか?」

「はい。急ぎですか」

「大至急です。男の方は『モンクシュッド男爵』と名乗っていて、その娘が旦那様の愛人だと言っていて、その間にできたという子も連れてきている。金目当ての犯行なのは明白だが、詳しく調べてほしい」

「わかりました」


 ベリスと御庭番たちに任せておけば、すぐにでも情報が上がってくるでしょう。

 ほんとに旦那様は面倒事を持ち込む! ……いや、旦那様を責めるのはまだ早いですね、失礼しました。

 私は一つ咳払いをすると、机から便箋を取り出しました。プルケリマ様に取り次ぎをお願いする手紙を書くためです。あの方なら戦の間の旦那様のご様子をよくご存知でしょうからね。

 丁寧に封をして、ベリスに渡しました。


 後は時間の問題です。


・・・ おまけ * その頃旦那様は ・・・ 


 ロータスが自分の執務室で旦那様の愚痴を言ってる頃w


サ「ハックションっ! ハックションっ! ハックションっ!! ……うあー」

騎士A「副団長どうしました? くしゃみ連発して」

サ「わからん。が、しかし急に悪寒がした」

騎士B「風邪ですか?」

サ「いや、大丈夫だ」

A「もうすぐ王都ですし、帰ったら奥様に看病してもらいましょう!」

B「そしたらすぐ治りますよ!」

サ「お前らに言われなくてもわかってる!! つーか、この牛歩の行軍、なんとかならんのか」

A「早馬だと半日もかからない距離を、のっそりのっそり行きますもんね~」

B「特務だと考えられないのろさ! でもそれが国王陛下の行軍! 諦めましょう」

サ「あ~、早く帰りたい」


 それからしばらく後、公爵家からの早馬が到着するのだった。


* * * * * *


ありがとうございました(*^ー^*)


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