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VS 王太子様 リターンズ☆

リクエスト小話より♪


本編164話目のサーシス視点です♪

「これは一生に一度お目にかかれるかどうかというくらい素晴らしいサファイアですよ。まさに『ヴィオラの瞳』と呼ぶにふさわしい」


 探し求めていた『ヴィオラの瞳』がようやく掘り出されたと領地の鉱山から知らせが来たので大急ぎで取り寄せたら、それはそれは美事なサファイアだった。

 まさに会心の一粒。

 大きさといい色といい、瑕疵が見つからない。

 ヴィオラに内緒でこっそり宝石商を呼び石を見せると、感嘆のため息を漏らす。


 その石を使って首飾りと耳飾りを作らせたのだった。


 やり直し結婚式でそれをつけたヴィオラは最高に綺麗だった。




 あれから数ヶ月後。

 王宮から夜会の招待状が届いた。

 使用人のベリスとミモザのところの子供にメロメロになっているヴィオラは(デイジーと離れたくないから)夜会に行きたくないとごねたけど、『王宮に行けば王太子様に会えますよ』というロータスの鶴の一声で参加する気になった。ロータス、相変わらずヴィオラの扱いが上手い。というか、それを聞いて、僕が行きたくなくなったんだけど。


 まあいい。




 夜会当日。

 ドレスもばっちり、『ヴィオラの瞳』を使った飾りは言うことなし。

 何より本人が素晴らしいんだけどな!

 いつもヴィオラを愛でまくっている侍女連中でさえもため息をこぼす出来栄えの、今日のヴィオラ。


「あ~やっぱり見せびらかすのが惜しい……」

「では夜会をお休みしましょう!」

「そうしましょう!」


 あまりのかわいさに、思わずぎゅっと抱きしめてしまうと、抱き返してくれるヴィオラ。……こういう時だけは積極的だね。

 しかし。

 

「またそれをやりますか。毎回毎回よく飽きませんね。いい加減になさってくださいそろそろ怒りますよ」


 夜会に行くたびこのやり取りをするもんだから、とうとうロータスのこめかみに青筋が浮かんだ。

「あんまり綺麗だから夜会で見せびらかすのが惜しくなるんだ、仕方ないだろう」

 いちおう口答え……げふげふ、反論してみたけど、

「はい?」

 にっこりロータスが微笑んだ。——こめかみに青筋を立てて。

「「スミマセン」」

 二人揃って謝罪の言葉が出てきた。

 ヴィオラも空気を読んで、そそくさと肩掛けを羽織っている。


 そして僕たちは公爵家を出発した。よっし! 今日は存分に見せつけてやるぞ!!




 ――と、意気込んできたものの。


「それ、とってもきれいなほうせきだね!」

「まあ! ありがとうございます」

「これはこうしゃくがヴィオラにプレゼントしたの?」

「そうでございますよ。これは滅多に出ない貴重なサファイア、我が妻の美しい瞳になぞらえて『ヴィオラの瞳』と名付けたサファイアでございます」

「へぇ~。ほんと、ヴィオラみたいにきれいなサファイアだね!」


 まただ。また王太子(と書いてちびっこと読む)につかまってしまったヴィオラ。

 僕たちが会場に着いた途端に素早く飛んできて、ヴィオラの手を掴んだのだ。生意気な。もちろん僕も、王太子が握っている反対側の手を離さないがな!

 そして王太子は自分の席の隣に椅子を持ってこさせて、そこにヴィオラを座らせている。僕はもちろん、そんなヴィオラの横(ちびっことは反対側な!)に陣取ってるわけだけど。ちびっこ、どんだけヴィオラが好きなんだよ……。

 でもちびっこ、ヴィオラの素晴らしさがわかるとはなかなかやるな。それだけは認めてやろう。

 僕が負のオーラをビシバシ出しながら王太子を見ていると、 

 「こうしゃくからのプレゼントか~。なかなかいいものをあげたね、こうしゃく」

「お褒めに預かり光栄にございます。殿下も、どなたかに宝石をプレゼントする際には是非こちらをご用命下さい」

 珍しくちびっこが僕のことを褒めてきたので、僕は恭しくお辞儀をした。ついでに宝石の宣伝も入れておいた。王宮はいい取引相手だからな。

 王太子は、僕の言葉に『ふ〜ん』という顔をしたかと思うと、


「こうしゃくはカッコイイから、きっとモテるんだろうね」

「はあ?」


 何を突拍子もないことを言いだすんだ、このガ……王太子は。さっきまでプレゼントがどうのこうのって話をしてたはず。それに何か関係あるんだろうか? 子供の考えてることはよくわからん。

 さすがのヴィオラもキョトンとした顔をしている。そりゃそうだよな、脈絡がなさすぎてついていけない。

 僕とヴィオラと、二人して首を傾げていると、


「おんなの人にモテモテだから、おんなの人のお友だちもたくさんいて、だからこういうすてきなプレゼントも思いつくんだね」

「は?」

「んくっ……」


 今何か飲み物を飲んでたらきっと噴出してただろう。何を言い出すんだ、このガキは!!

 ヴィオラはヴィオラで笑いを必死にこらえている様だ。どこに笑うツボがった? ねえ? ねえ?

 それでも王太子は僕たちの反応に構わず、


「あ~、ぼくにはまねできないなぁ。ごめんね、ヴィオラ。もうちょっと大きくなったら、これをこえるくらいのプレゼントあげるからね。ああでもたくさん女の人とお友だちになれるかなぁ。ぼく、だいじょうぶかなぁ」


 なんてことをぬかしやがった。


「「はあ」」


 ヴィオラと生返事がきれいに重なった。


 ナニコノ子コワイ。おとうさーん、おかあさーん、おたくの息子さんがちょっとアレですよー!!


 思わず陛下たちに助けを求めそうになった。

 おいこらクソガキ……っ! ……げふげふ。失礼、取り乱した。

 王太子の発言に、さすがのヴィオラも苦笑いしている。そして僕は、こめかみの何かがプチンと切れそうだけど我慢している、辛うじて。


「プレゼントというものはセンスでございますよ、王太子殿下」

「あ、そうなの?」

「お友だちの多い少ないではありませんよ」

「ふ~ん」


 頬がひくつくのを感じながら無理やり笑顔を貼り付けたのに、このガキンチョはしれっとした顔で流しやがった。あ、ガキンチョに降格してしまったな。まあいい。


「ああ、でもこうしゃくにおしえてもらえば、おんなの人のお友だちたくさんできるね!」


 うん、よし。今度の剣の稽古の時に泣かしてやる。楽しみにしとけ!

ありがとうございました(*^ー^*)

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