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お姉様方のお仕事 ~王太子兄妹の密談~

本編125話目の裏側。


王太子兄妹の密談は……?

『オーランティア王太子兄妹につける使用人は、総て騎士団員の変装したものとする』という近衛団長・副団長の指令により、王宮女官の制服を着たカモミール・アルカネット・アンゼリカ。オーランティアから連れてきている使用人たちは、「長旅お疲れ様でございました。お付の方々も歓迎いたしますので、どうぞごゆるりとなさってください。お世話はすべてこちらでいたしますので」と言葉巧みに誘い、そして使用人レベルの歓迎会をするということで王太子兄妹、そして外相などから引き離されている。


 波乱の歓迎会の後、人払いし客室に閉じこもった二人の様子を、隣接する使用人の待機部屋の扉越しに窺っている綺麗どころトリオ。


「いやあ、あれは運命だ。ヴィオラは実にすばらしい女性だ! ぜひともわが手に」

「ヴィオラはどうでもよくってよ。まあ、ヴィオラがお兄様の手に入ったら、公爵様は私の手に入るから良しとするけど」


 部屋の中を行ったり来たり、大げさな身振りで感動したようにほざく王太子と、それをソファにふん反り返って見ている王女。


「ばかじゃね。あ、はっきり言っちゃった☆」

「もう~カモミールったら! ま、私もそう思ったけどね」

「うんうん」


 特別客室・・・・に隣接する使用人の待機部屋の扉は薄めに作ってあるので(見た目はわからない)、部屋での会話がよく聞こえる。そして案の定、王太子兄妹の勘違いな会話にイラッとする綺麗どころトリオ。偵察中なのにもかかわらず素でツッコミを入れてしまった。ただし向こうに聞こえないくらいのひそひそ声で。


「公爵の様子だとヴィオラと離縁しなさそうだからなぁ。どうやってひき離すか、だ」

「お兄様の魅力がわからないなんて、馬鹿な娘だと思うんですけどぉ」


「「「いやいやいやいや」」」


 またしてもイラッとしながらツッコむ三人。そいつのどこに魅力があるんだ? とそろって首を横に振る。


「三日後のパーティーの時に攪乱作戦をして公爵をおびき寄せ、ヴィオラから離れた隙に拉致するか」

「でも今日の様子だと、パーティーにヴィオラを連れてこない可能性もあるんじゃない?」

「ふむ、オランジェの言う通りかもしれんな」


「妹の方が賢そうね」

「妹、要注意人物ね」

「兄、馬鹿すぎでしょ」


 三人の頭に『妹、注意!』の文字がインプットされる。


「ですからお兄様は明日、公爵様に今日のことを形だけ謝って、公爵様の油断を狙うのよ」

「ふむ」

「ヴィオラは諦めた、とか言って」

「ふむふむ」

「そしたらさすがに王宮主催の、しかも国賓をもてなすパーティーですもの、欠席することはないでしょう」

「そうだな!」

「できるだけ誠心誠意謝ってるふりをしてくださいね」

「もちろんだ!」


「……妹、あんたの方が王太子になった方がいいんじゃ……」

「そうね……」

「兄、プライド無いの?!」


 王女の言うことにいちいち納得し、すっかり言いなりになっている王太子に悲しくなる三人。


「それは明日公爵に会ったらすぐにやるとして、パーティーでの攪乱作戦だが――」


 そこから急に二人の声が途切れた。

 そっとわからないくらいに扉を開けて中の様子を見ると、こちらに背を向けた王太子兄妹が、紙に何かを書いているようだった。


 ちょ、紙に書かないでよ。声に出しなさいよ!!


 この角度からじゃ、何を書いてるか全然見えないわね。

 

 あとであの紙、回収ね。


 目配せした三人は、またじっと二人を監視することに戻る。


「王宮内のこことあそこと――」

「適当に外から、人気のなさそうなところに――」

「見取り図があればいいのにな――」

「仕掛けは――」


 図に示しながらなのだろう、断片的な会話しか聞こえてこない。

 

 しばらくすると相談を終えた二人が顔をあげたので、急いで扉を閉じる。

 そして、


「誰かおらぬか」


 使用人を呼ぶ王太子の声が聞こえた。急いで三人は隠し扉から反対隣りの部屋に一旦出て、そこから廊下に出る。ちなみにオーランティアの使用人たちは、王宮使用人に扮した騎士団メンツたちが催す歓迎会の最中なので、間違っても王太子の呼ぶ声に応えることはない。

 何食わぬ顔で廊下側の扉から顔を出す綺麗どころトリオ。


「お呼びでございましょうか」

「湯殿の用意と寝支度を」

「かしこまりました」


 カモミールが湯殿に向かい、アルカネットが寝室に向かう。その間にアンゼリカは部屋の片付けをするふりをして先程の紙の回収に向かう。

 しかしそれはすでに王太子が折りたたんで懐に入れてしまっていたので、回収できなかった。


 こんなところだけぬかりなしって、ムカつくわね。


 ぎりっと歯噛みしそうになるのをこらえるアンゼリカ。

 ならば他に何か手がかり的なものはないかと注意深く探してみると、下に敷いていたと思われる紙で、ところどころインクが染みているものが見つかった。

 使い物になるかどうかは後で見るとして、とりあえずそれを別の紙とすり替え回収したのだった。


ありがとうございました(*^-^*)


筒抜けでしたwww

特別客室は、この人たちのように「怪しい」客人を泊めるため(監視するため)にあります。その存在はかなり秘密です。

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