王妃様の憂鬱
124話目、オーランティア王女の相手をしている王妃様の嘆き……というより愚痴w
オーランティア王太子一行の歓迎会の席で、わたくしは王太子殿下の妹君、オランジェ様の相手を任されたんだけど……ダメだ、ごめんなさい! わたくしには荷が重いようだわ。
若いころから社交には慣れてきたわたくしだけど、ええ、こんなこと認めるのも悔しいけど、無理。ギブアップ! こんなに話ができない人の相手は初めてよ。まだまだ私も甘いわね……。
わたくしと娘たちで、オランジェ様と先ほどからお話をしてるんだけど、
「フルールで今流行りだというドレスを新調したんですぅ」
だの、
「フィサリス公爵様も、今の私を見たらきっと奥様を捨ててわたくしを選ぶと思いますのぉ」
だの、言いたい放題。
オランジェ様が新調したというのはフリフリのドレス。
……もう流行遅れなんだけど、それ。
誰がこんな古い情報流したのかしら? そんなもの、この会場でもはやだれも着てないでしょう? それに気付いてないって……周りを見ることもできないような残念な方なのね。今の流行はシンプルな、スタイルを美しく見せるラインのドレスで、どの方もそういうデザインのドレスを着た人ばかりだというのに。このデザインが流行り出してから、ダイエットに励むお嬢さん方が増えたそうよ。ああ、お嬢さん方だけでなくマダム達もね。そういう意味ではオランジェ様、流行遅れのドレスにもっちゃり体型で、むしろ目立ってるっちゃ目立ってるわね。あら、ちょっと正直に言いすぎちゃった!
もとからボリュームのあるオランジェ様なんだから、フリフリなんて着たらどうしようもないと思うんだけど、誰も何も言ってあげないのかしら? 主人を最高に輝かせるのは、お付きの侍女の腕の見せ所のはずなんだけど。
これで、ヴィオラに勝てるつもりでいるところがイタイわ。
「いやん、ロマンスですわぁ!」
なんて一人で盛り上がってるのを見て一の姫が吹き出すのをこらえているじゃないの。だめよ、我慢しなさい。これくらいで吹き出すなんて、あなたもまだまだ甘いわね。
わたくしたちだけでは手に負えないから、誰か……そうね、アングレータ――先代フィサリス公爵夫人でも呼びましょうか。彼女と一緒ならならなんとかできると思うんだけど……って、あら。アングレータったらマダムたちにつかまってるじゃない。彼女、すっかり領地に引きこもっちゃってるから、王都に顔を見せた途端にマダム達に引っ張りだこなのよね。さすがは社交界の花と言われた人だわ。
わたくしが娘時代からの友達であるアングレータにヘルプを出そうと見ていると、
「ごめん、無理。がんばって!」
目が合った瞬間に口パクしてきたわ! さすがは幼馴染。わたくしたちのこと、ちゃんと見てるのね。
アングレータもマダム達のところから抜け出せない……じゃなくてこっちに来たくないのね、あれはきっと。
アングレータの援護もなしって……ああ、つらいわ。非常につらい。
愛想笑いを浮かべるのもつらくなってきたわぁって思っていたら、
「お母様、笑顔、笑顔!」
引きつってますわよ、と二の姫に耳元で言われてしまったわ。あらやだ、わたくしとしたことが。
こんなにつらいパーティーは初めてよ。ああもう、早く終わらないかしら。というか、この兄妹、とっとと帰ってちょうだい!!
ありがとうございました(*^-^*)
王妃様とお義母様は幼馴染でした♪




