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外相の嘆き

オーランティア側の状況説明です。

 うちの王太子が……やっちまった感がハンパない。

 

 ここはフルール王国の謁見室。

 うちの王太子とフルール国王との会談中なんだが、うちの王太子が人の話を聞いてないのなんのって……。ああ、胃がイタイ。胃に穴が開きそうだ。

 そもそもこちらから申し込んだ和平協定なのに、なんでアナタが上から目線で話を進めていくんですかね?

 だからと言って私が口を挟もうとすると『お前は黙ってろ!』的な鋭い目線で睨んでくる。あまり出しゃばった真似をしてご機嫌を損ねると、国へ帰ってからの報復が怖く、強く出られない。

 ここは外相わたしではなく、やはり宰相殿がこられた方がよかったのではないか。私には荷が重すぎたのだ。何がって? 王太子の暴走を止める役ですよ!

 ああ……。胃が口から出てきそうだ。




「うちの国はもう終わったな」


 宰相殿がため息をついた。オーランティア王家はどうにも頭が弱いのが多い。それでもこれまで持ってきたのは、ひとえにこの宰相殿と一握りのまともな貴族たちが必死に繕ってきたからだ。特に宰相殿の働きは凄まじい。宰相殿がツルツルなのは(どこがとは言わないぞ!)、絶対王家せいだ。かくいう私も胃痛持ちだがな!


 今回もうちから戦を仕掛けていって、そしてコテンパンにやられた。史上最速の敗北だった。今までの戦は本当に攻めてきた我らを防いでいただけのようだ。今回はこちら側に内通者を忍ばせるという戦略まで使ってきたのだから、本気度がわかる。(そこまで戦略的なことをしてきたことはなかったのでね)

 これまでは戦の決着がつくとあっさり退却して行ったのに、今回は国王と、そして戦の主犯である第二王子を軟禁していったし。


「陛下も囚われたし、もううち、終わったな」

「ですね。フルールを本気で怒らせたようでございますね」

「うむ。……最後の手段だ。フルールに和平を申し込もう。それしかこの国を存続させていく方法はない」

「そうですね」

「もう存続させなくても……」

「それは言ってくれるな」

「はぁ」

「反省の意を示し、大人しく傘下に下ろう。うちの王太子にフルールからお妃をもらい、うちからは王女殿下を差し出そう」

「……王女殿下をですか?」

「仕方ないだろう、アレしかおらんのだから」

「アレって言っちゃダメですよ……」


 宰相殿と私、そしてこれまでこの国の屋台骨を支えてきた何人かの貴族で頭を寄せ合う。


「わし、もう、あっち側に行きたい」

「「「「「あっ! 宰相殿、ズルいです!」」」」」


 つるつるした頭を(あ、言ってしまった!!)撫でながら、宰相殿がため息をつく。


 宰相殿は、なんでそこまでしてこの国を守ろうとするのか。


 なんでも、数代前の国王陛下に宰相殿のご先祖が助けられたとかなんとかで、深く感謝し、『末代までも忠誠を誓う』的なことを言ったからだそうだ。もうそんな古い約束、いいと思うんだけどなぁ。宰相殿、頑張ってきましたよ。みんな知ってます。……そしてみんな、あっち側に行きたいです。


 そしていちおう(・・・・)国王代理の王太子殿下に和平協定の話をし、フルールからお妃をもらって大人しくするようにみんなで説得したんだけど。


「わかったわかった。大丈夫だ、そう心配するな。私だってもういい大人だ。しっかりと任務遂行してくる!」


 自信たっぷりにそう言ってたんだけどなぁ……。


 はぁ。


 宰相殿。私では王太子を止めることができませんでした。非力な私をお許しください。

 たぶんオーランティアに明日はないでしょう。そんな気がひしひしとします。


 ……もう私も、このままフルール側の人間になってもいいでしょうか?


ありがとうございました(*^-^*)

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