前公爵夫妻の証言 ~結婚式にて~
ヴィオラと旦那様の結婚式に参列中の、前公爵夫妻視点♪
表の話3話目の裏側です。
「将来の見えない相手とはさっさと別れてしまって、さっさと結婚しろってあんなにプレッシャーをかけ続けたのに、全然屈しないからほぼ諦めていたんだけどねぇ。ほら、サーシスってちょっと思い込みが激しいところがあるだろう?」
「そうですわねぇ~。まったく誰に似たのかしら」
「ん、ん、こほん。まあそれはいいじゃないか。それがまさか、あんな地味……げふげふ、つつましやかなお嬢さんを見つけてくるなんて、お父さんは驚きだよ」
「私だって驚いてますわよ。でもどんなお嬢さんなのか、中身がま~~~ったくわからないから、油断は禁物ですけど? だってうちの子の趣味ですよ?」
「ん~、そこはイタイところだけど、まあ、とりあえずユーフォルビア家のお嬢さんだから、おかしな子ではあるまいよ。あの家はなかなかに由緒正しいし、伯爵ご自身も気持ちのいい人だからね」
「そうですわね」
前フィサリス公爵夫妻が会話をしているのは、王宮内神殿の祭壇に最も近い場所、新郎側の最前列の席。
今日はフィサリス公爵――二人の息子の結婚式である。
二人は、もうすぐ始まろうとしている結婚の儀式を待つ間に、ひそひそと言葉を交わしているのだ。
祭壇前には現公爵であるサーシスが、祭壇に向かって一人で立っている。
後は花嫁であるヴィオラの入場を待つばかり。
この日初めてヴィオラを見る前公爵夫妻は、まだヴィオラの絵姿しか見ておらず、どこにでもいる普通、いやむしろ地味なお嬢さんくらいの認識しかもっていない。
サーシスが今まで付き合っていたのが派手・華美といった修飾語がぴったりなカレンデュラだったので、なぜその対極にいるといっても過言ではないヴィオラと結婚すると言い出したのか、不思議でならなかった。
――そして、厳かに入場してきたヴィオラに絶句した。
「……びっくりした。見せられた絵姿と全然違うじゃないか」
「……ええ。まるで別人のようでしたものね。絵姿は、まあなんというか平凡な感じの娘さんだったのに……」
初めてナマで見るヴィオラに、二人とも、まずは二度見した。そして目を擦りたい衝動に駆られたがそこはお式の最中。瞬きを繰り返すことしかできなかったのだった。
「あいつ、私たちに偽の絵姿を見せたとか?」
「それはさすがにないでしょう」
「いやしかし、清楚で可憐な感じのかわいいお嬢さんだったじゃないか」
「本当に」
「披露宴で挨拶に来た時もよさげな感じだったし」
「サーシスのことをちゃんと気遣ってましたしね」
「あいつは気付いてなさそうだけどね」
「言えてます。あの子は案外鈍いですから」
「まあ、なんにせよいい子そうだったね」
「それは同感です。でも公爵家を取り仕切る力量があるかどうかは別物ですから、まだしばらくは様子を見ましょう」
「そうだね」
ヴィオラ、義父母のファーストインプレッションは上々の様。
まず外見はパスしたようだ。
今日もありがとうございました(*^-^*)