王様の嘆き
本編123話目あたりの裏側。
国王様視点。
フルールの国王様とオーランティア王太子の会談はこんな感じでした。
これまで何度も小競り合いをしてきた南隣の国オーランティアと和平協定を結ぶことになった。いつも向こうから戦を吹っ掛けてくるというのに、何が和平だ。向こうが大人しくしておけばうちは向こうに攻め入る気など毛頭ないというのに。
これまでそんなことを言ってきたことがなかったのに、今回に限ってどうしたというのか。
別にそんなもん要らないと思うのだが、これ以上戦を吹っ掛けてこられても迷惑なので受けることにした。
来るまでも散々うちの騎士団を翻弄してくれた。フィサリス公爵なんて不機嫌極まりなかったんだからな……。
それでもなんとかこちらの受け入れ態勢も整い、オーランティアの一行がやってきた。
主犯の第二王子とともに軟禁中の国王に代わってやってきたのが王太子で。そして輿入れ先を探し……もとい、見合いの相手と対面するために来た王女。どっちも濃いな。オーランティアの濃さを凝縮したような顔立ちだ。アルゲンテア執政官が逃げ出したのもわかる気がする。
「和平協定の一環として、貴国から王女を妃にもらいたいと思うのですが。ああ、もちろんこちらからは王女――妹をしかるべき人物に輿入れさせます」
「そうですな」
濃い顔でニコニコ言ってくる王太子。――イラッ。なんだろう、この馴れ馴れしさは。いかん、ちょっとイラッとしてしまった。
そうか、うちの王女をこの男にくれてやらんといかんのか……。和平協定だけでよくないか?
「ところで、王女殿下は?」
「うちには娘が三人おりまして。一の姫をお妃候補に……」
「では、直接会って決めたいですな!」
一の姫だっつってんだろうが。
イライラッ。――つい本音が出てしまったではないか。
王太子は私の話に喰い気味に被せてきた。なんだこいつは。
「一の姫を候補に考えていますが、他の姫がよければ誰でも。どの娘にも『覚悟しておけ』と言ってあるので」
「覚悟などと大袈裟な! フルールの国王陛下は面白い方だ!」
一の姫を、というところを強調して言ったのだが、どうやら聞こえてないようだ。
がははっと笑っている王太子。いや、覚悟だろう。それも相当な。
というか、なんかこう、無性にイラッとする……。というか、最初からイラついてしまってるけど。こんな男にかわいい娘をやるのか……かなり嫌なんだが。
「とりあえず、今宵の歓迎会にて姫たちと顔合わせをして、そこで決めるというのでどうですかな?」
「いいですな! 直接会って決めるのが一番でしょう」
姫たち、逃げ出すなよ! ――いや、逃がした方がいいのか?!
うちの娘ども、誰に似たのかやたらに気が強いからなぁ。この王太子、娘たちもイラッとさせること間違いなしだ。
ありがとうございました(*^-^*)




