アルゲンテア父娘(おやこ)
活動報告より♪
本編117話目の、アルゲンテア家のパーティー。バーベナ様のための婚活パーティーは、こうして招集されたのでしたw
とある昼下がり。
場所はアルゲンテア公爵家の当主アルゲンテア卿の書斎。
真剣な面持ちで腕を組み、じっと前を見ている卿の執務机の上には、立派な装丁の縁談釣書&肖像画が積み上げられている。
それはフルール王国中の貴族の、お年頃なご子息・殿方たちのもの。
下は成年に達したばかりの一六歳から上は……なお方まで。ありとあらゆる優良物件が取り揃えられている。
「さあ選べ、どれでも選べ、好きなの選べ!」
アルゲンテア卿はその山から適当に数冊掴み取り、机を挟んで対峙する娘に向かってグイグイ押し付ける。
それを嫌そうな顔で受け取り、適当にパラパラとめくって見る娘。
「はい、見ましたー」
「いやいや待てーい! もっと興味を持って見なさい! むしろどんどん質問を迫ってくる勢いで見なさい、穴が開くほどよく見なさい!」
娘の気のない態度にこめかみに青筋を立てる父だが、
「いや、ぜんっぜん興味持てませんし。それにわたくし、そもそもサーシス様以外興味ありませんし」
そんな父など意にも介さず、釣書をポイッと机の上に置くバーベナは終始じと目。
「バーベナ、お前はもっとしっかり現実を見ろ! サーシスくんは、もはや既婚者だろうが!」
「ええ、みなまで言われなくても知ってますとも! でもサーシス様じゃないなら、サーシス様以上の人じゃないと い や で す !! てゆーか、私より兄様たちのご心配をされたらどうですの? 二人とも未婚じゃないですか。セロシア兄様にいたっては婚約者すらいないし!」
にらみ合う父娘。かちあう視線が火花を散らす。
「アホか! あいつらは男だからなんとでもなるわ! 問題はお前だろう。早くしないと嫁き遅れになってしまう!!」
机をバン、と叩いて本音を言う父。
「むっきゃ~!! 嫁き遅れですってぇ?!」
机をバン、と叩いてまなじりを吊り上げる娘。
「ああ、そうだ、嫁き遅れだ! お前いくつになったと思ってるんだ?」
「まだピチピチの二十歳ですわよ!」
「それを言うなら『もう二十歳』だろう! 適齢期なんてものはあっという間に過ぎてしまうんだぞ!」
「失礼な!」
「サーシスくんの奥方は一八だぞ」
「若くてよろしゅうございましたね~!」
「お前はサーシスくんのことばかり言ってるが、サーシスくんの奥方を見てみろ! 愛されて幸せそうじゃないか?」
最近バーベナが、ヴィオラのことを気にしているのを知っているアルゲンテア卿は、フィサリス夫妻のラブラブっぷりを引き合いに出した。
「ぐっ……」
「どうだ。奥方はかわいらしい人じゃないか。お前も素直になればもっとかわいくなるんだがなぁ……。女は愛されてこそだぞ?」
バーベナが一瞬怯んだところを突いて、情に訴える父。
「そっ、そうかもしれないですけどっ!」
動揺するバーベナの脳裏に、ヴィオラの姿が浮かぶ。
素直でかわいらしいヴィオラ。夫からも愛され、誰からも愛される存在。自分もああいうふうに振る舞えれば、幸せになれる……?
いやいや、私は私よ! ヴィオラ様の真似をしたって幸せになるとは限らないっつーの! 同じ轍を二度も踏むもんか!!
ヴィオラとはお近づきになりたいかもと思っているバーベナだが、学習はしている。真似をしたって、それは所詮二番煎じ。自分の個性ではない。
執務机を挟んでにらみ合う父娘。各々背後に火炎がゴオオ~と立ちのぼる。
「では、サーシス様以上のイイオトコを連れてきてくださいな! そしたら即結婚してあげますわ!」
「だからこうして選りすぐりの縁談を持ってきてるんじゃないか!」
「どれも同じに見えるっつの!」
「どれもまともに見てないくせに何を言うか! もう知らん。私ははもうさじを投げさせてもらうぞ。自分で好きに選ぶといい!」
こめかみを押さえながら目をつむり、頭を振る父。
「どうやって選べっていうの!」
挑戦的な瞳で父を見るバーベナ。まだ火炎はしょったまま。
「夜会を開いてやる。なるべく若い者を集めるから、そこで会って直接選べ!」
――ということで夜会は開かれたのだった。
招待客は、家格も氏素性も普段の素行も綿密に調査された優秀な若者ばかり。もちろん調査は、バーベナの二人の兄(二人とも執政官)が頑張った。
* * *
「――ということで、今夜の夜会なんですよ」
「……まあ、なんというか、いろいろ大変ですねぇ」
「ヴィオラ。それは誰が?」
「えーと、アルゲンテア公爵様やお兄様方やバーベナ様が?」
「……みんなじゃないですか」
ありがとうござました(*^-^*)
最後のヴィオラと旦那様が、ほのぼのしてる……w




