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円陣会議 in ピエドラ 

書籍第4巻発売記念リクエストより♪


本編104話目と105話目の間。ヴィオラたちが別荘を出て行ってから……。

 ピエドラの別荘で、サーシスがいろいろ心情をカミングアウトしたあの日。

 サーシスとヴィオラが外に出て行った後、その場にいる使用人たちはすぐさま円陣を組んだ。


「若旦那様は、あんなお方だっただろうか……? 私はボケてしまったのか?!」


 サーシスたちが出て行ったばかりのエントランスの扉を見ながら、呆然といった感でフェンネルが言う。


「いえ、フェンネルさんはちっともボケてなどいませんよ。旦那様がお変わりになられたのです」


 わなわな震えるフェンネルに苦笑するロータス。


「私がロージアのお屋敷にいた頃は、どちらかというと感情表現のあまりないお方だったはず。ましてや使用人に向かって『すまなかった』などと間違っても口にするようなお方ではなかったと記憶してるのだが……。そりゃ、お小さい頃は素直でかわいらしい天使のようなおぼっちゃまだったが、成長していくにつれどんどん失われ……ああ、あのかわいかった子はどこへ行ったのだ?! 悔やまれるっ……」

「フェンネルさん、昔のことはさておき。旦那様が変わられたのは最近ですよ」

「そうなのかい?」

「そうです」


 フェンネルたちがお屋敷にいた頃、まだ幼かったサーシスの様子を思い出すフェンネル。ちょっと回想が昔にまで飛びすぎたようだ。


「なぜ急に変わられたのかしら?」


 サーシスの変化が最近だと聞き、侍女長アニスは何がきっかけか気になったようだ。


「急というわけではないのですが……。奥様とご結婚されてから少しずつ変わられていったのです」


「「「「「まぁぁぁ!!」」」」」


 ロータスの言葉に、別荘の使用人さんたちの声がハモりました。


「じゃ、じゃあ、おぼっちゃまの変化はヴィオラ様の影響なの?」


 頬を上気させ、目をキラキラさせるアニス。


「そうです」

「まあまあ! それはいいことだわ!」

「いやでも、さっきのように私にまで『すまなかった』なんて言ってくださるとは思いもしませんでしたけどね。さすがに驚きすぎて、動きが止まってしまいました。私もまだまだですね、これくらいで動揺してしまうなんて」


 ロータスが、主人の前で動揺を見せた自分を反省しているようだ。


「ああ、確かに止まっていたな! いや、あれはかなりの破壊力だったから仕方がないだろう。私も止まってしまったからね。ああ、おぼっちゃまも成長されたんだねぇ」


 普段冷静で、面白くないくらいに物事に動じないロータスが珍しく狼狽えていた。それ思い出したフェンネルが、クスクス笑っている。


「こほん……そうですよ」


 師匠に笑われてちょっと罰悪げな顔になったロータスだが、咳払いでごまかした。


「しかし、おぼっちゃまの口から『お金をかけるばかりが良い統治とは限らない』という言葉が飛び出した時にはびっくりしたねぇ。『お金で買えないものはない』と思っている節があったのに。いや、実にいい傾向だけど……」

「それも奥様の影響でしょう。ヴィオラ様は、お金をかけるのがあまりお好きではないのです」


 サーシスの『プライスレス発言』がどこから影響されたのかわからなくて首をかしげるフェンネルに、ロータスが教える。


「あら、そうなの?」


 アニスがまた瞳を輝かせた。


「はい。ヴィオラ様のご実家のご両親は、清貧をモットーにされているようです」

「「「「「あ~」」」」」


 上手いこと言ったロータスだが、別荘にいる人たちも、いちおうヴィオラの実家の台所事情はそれとなく知っているので、苦笑いで頷いている。


「それはいいことね!」


 気を取り直して明るくいうアニスに、ニッコリ微笑むロータス。


「素直で健気な奥様からいい影響を受けて、旦那様も変わられたのです」

「あまりにびっくりしすぎて、私は泣いてしまいそうだったよ。長生きはしてみるもんだねぇ」


 しみじみと噛みしめるように言うフェンネルに、


「私は泣いちゃいましたよ!」


 変なところで胸を張るアニス。


「アニスったら、ボロボロ泣いちゃってたもんね」

「だってうれしかったんですもの」


 ステラリアにつっこまれてもうれしそうにニコニコするアニス。


「そんな若奥様なら我々も大事にしなくちゃいけないね」

「「「「「そうですね」」」」」


 フェンネルの言葉に、使用人さんたち全員が頷く。


 そうして使用人さんたちは落ち着きを取り戻したのだった。




ありがとうございました(^ー^)

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― 新着の感想 ―
[一言] 思春期から青年期にかけてのサーシス様は いろいろな重圧から情緒も不安定になり相当 残念な人だったのですね。
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