湯船から救助!
活動報告より♪
本編89話目と90話目の間、ヴィオラがお風呂で茹ってから部屋に運ばれるまでの出来事ですw
さすがのダリアさんも焦ってしまいました。
普段からそんなに長湯をされる方ではないのに、今日に限ってなかなか湯殿から出てこない奥様に嫌な予感を感じた私が、そっと湯殿の様子を覗くと――。
奥様は湯船の縁にぐったりともたれかかって、ピクリとも動いていませんでした。
「きゃーーー! 奥様?! しっかりなさってくださいませ!!」
白い肌は赤く火照り、湯船のふちに置かれた手は力なくだらんと下がっています。
これにはさすがに慌ててしまい、思わず叫んでしまいました。
私の声にステラリアも湯殿に駆け込んできましたので、そこでハッと我に帰ることができた私でございます。
「お、奥様?! 具合でも悪くなられたのかしら?」
娘が、私の後ろから奥様を覗き込んで問いかけてきますが、この状況ではよくわかりません。先程まではお元気でしたので、湯あたりか何かだといいのですが。
とにかく奥様をここから引き上げねば!
そう思った私が、
「わからないわ。とりあえず湯船から運び出さな――」
〝運び出さないといけないわね”と言い終えないうちに。
ドンドンドン!! と部屋の扉が激しく叩かれ、そして、
「おい! どうした!! ヴィオラに何かあったのか?!」
という旦那様の大声が聞こえてきました。
――しまった。私が思わず叫んでしまったから!
思わず舌打ちしそうになりました。
今ここに踏み込まれては、奥様の裸を旦那様に晒すことになってしまいます。夫婦と言ってもまだ白い結婚のお二人です。それに旦那様には、もう少しお預けでもいいかと思われます。何がですかって? それはお察しくださいませ。
何より、ご自分の無防備な姿を旦那様に晒すなど、きっと奥様には不本意でしょう。いや、むしろ嫌がるはずでございます。
とにかく奥様のお身体を隠す時間を稼がねば!!
とっさにそこまで考えた私は、
「リア、旦那様が部屋に入ってくるのを阻止! ちょっと鍵かけてきなさい!」
鋭くリアに指示しました。
まだ公爵家の内情を詳しく説明していないので、何故そんなことを指示されるのか解っていないリアは内心首を傾げつつ、それでも私の指示に素直に従いました。
ああ、いい使用人に育っているわね! ……っと、申し訳ございません、思わず私情を挟んでしまいました。
リアが鍵をかけにいっている間に、私は奥様のお身体にまずタオルをかけ、それから湯船に手を突っ込み奥様の足を抱えます。
「早く奥様を湯船からお出ししましょう。とりあえずバスローブだけでも着せてしまって。そしたら鍵は解除」
リアが奥様のわきを抱えたのを見て、力を合わせて奥様を引き上げます。といっても奥様、背はすらりと高くていらっしゃいますが、体つきは華奢でいらっしゃいますので大して力も要りません。もう少しふくよかになられた方が今後のためにはよろしいかと存じますが、今はそんな問題ではございません!
早くしないとあの旦那様です、扉をぶち破るという強行突破もしかねませんからね! 寝顔見たさに早朝の寝室に押しかけてきて来たという前科持ちです。
奥様に素早くバスローブを着せて肌を隠してからリアに指示して鍵を開けると、やはりというかなんというか、旦那様が勢いよく扉を開けて転がり込んできました。
しかしもうこちらの準備は済んでいます。
「奥様が、湯殿で倒れられて」
リアが旦那様に説明している声が聞こえてきました。
「なんだと?! ヴィオラはどうしてる?」
「わたくしとダリアで引き上げました」
「ではなんで鍵をかけた?」
「それは……」
旦那様がリアに詰め寄っているようなので、
「旦那様! 奥様をベッドまでお運びくださいませんか?」
と私が旦那様にお願いすれば、
「もちろんだ!」
そう言って奥様に駆け寄り颯爽と抱き上げる旦那様です。ふう。これで鍵云々は忘れてくださるでしょう。
御殿医を呼んだり、奥様の火照ったお身体を冷やしたりとバタバタしているうちに、すっかり夜は更けていました。
あとは旦那様が奥様の様子を見ているというし、なによりその旦那様が私に下がれとおっしゃるので、服も濡れていることですしお言葉に甘えさせていただきました。……旦那様からそんなお言葉をかけていただくなんて、思ってもみませんでした。旦那様、こんな些細なところにも変化が見られるようになったなんて……! ちょっと感慨深いものがありました。
いつもの仕事上がりよりも随分遅くにはなりましたが、それでも奥様に異常なしということが判ってホッとしながら三階にある自室の扉を開けると、
「今日は大変だったね~! お疲れ様、マイハニー!」
両手を広げてカルタムが待ち構えていました。
最後は「はぁ~~~(疲れた溜息)」になるか「ほっ……(呆れながらも嬉しい溜息)」になるか……w
ありがとうございました(*^-^*)




