アノ人たちの一ノ谷
活動報告より♪
フルール王国を勝利に導いたあの作戦w ナンパの代償はでかかった……!
なんだかちょっとやらかした感のある出征式から数日後。
騎乗隊第一中隊は前線近くに設営された駐屯地の、司令官たちが使う天幕の中にいた。
「来て早々に指令だ。今回の一番槍をお前たちに任そうと思っているのだが、どうだろう」
騎士団総団長が、重々しく口を開く。
「名誉な指令。ありがたく頂戴いたします!」
すかさず中隊長が、隊員を代表して返事をした。どうだろうと言いつつ拒否権はない。そして断るはずもない。なぜなら一番槍は危険だが、名誉でもあるからだ。まさにハイリスク・ハイリターンなのだ。
そんな名誉な役割を与えられるなんて、俺たちの実力が認められてんじゃね? と、中隊長の後ろでは隊員たちがドヤ顔になっている。
騎士の礼をして拝命する中隊長を満足気に見た総団長。
「では、詳しいことはフィサリス特務師団長から説明してもらう」
「はっ!」
「「「「「え゛?! ……マジか……」」」」」
何も知らない中隊長はキリッと返事しているが、背後に控える隊員たちはドヤ顔をわずかに引きつらせ、秘かにざわめいた。
「なんだ? 騒がしいな」
「「「「「いえっ! 何でもありません!!」」」」」
振り返って訝しむ中隊長に、最敬礼で答える隊員たち。
そこに件の特務師団長が入ってきた。所属も現場も違う特務師団と騎乗隊なので、あまり直接会うことはないのだが、それでもたまに見かけるフィサリス団長はいつでも無表情なのに、なぜか今日は口元にほんのり笑みを湛えている。
なんで微笑んでる?!
ちょ、微笑みが黒くね?
微笑みが怖いなんて!
笑ってんのに冷たーいブリザードを感じるんですけど?!
コノヒトずっと前線にいたよな? こないだの儀式のことなんて知らねーよな?
声にならない叫びが、隊員たちの中にこだまする。
動揺する隊員たちを気にもせず、フィサリス団長は、
「えー、到着早々で申し訳ないのだが、諸君にはこれから説明する作戦を実行してもらうことになった。難しい作戦だとは思うが、君たちならできる。我が国の勝利はこの作戦にかかっているといっても過言ではない。気を引き締めて取り掛かってほしい――」
凛々しい言葉とともに『逆落とし』作戦の詳細が、第一中隊に伝えられたのだった。
説明を終えて、上機嫌でフィサリス団長がその場を去った後。
「なんだアノ作戦」
「鬼畜だ」
「どエスか!」
「崖から馬でまっさかさまに降りて、敵陣の背後を突けってか!」
「それ、『降りる』じゃなくて『落ちる』の間違いじゃね?」
「だよな」
ガクブルする隊員たち。
「……でもやらねーと帰れない」
「そうだ! しかもミッションコンプリートしねーと俺たちの身も危険だ!」
「だよなぁ」
「それに、このミッション成功させたら、オレたち英雄だぜ?」
「そうだそうだ!」
「英雄はモテモテなんだ!」
「リア充万歳!!」
「よし、いっちょやってやろうじゃねーか!! 日頃の鬼畜訓練舐めんなよ!!」
「「「「「うおお~!!」」」」
ガクブルしながらも、ポジティブに考え始める脳筋たち。
「……オレ、このミッション成功させたら、彼女にプロポーズするんだ」
「「「「「変なフラグ立ててんじゃねーよ!!!!」」」」」
かくして、開き直った第一中隊のおかげで初戦を制し、そのまま短期決戦、そして勝利となったのであった。
「アイツ、どうなった?」
「ああ、無事結婚したけど、すっかり尻に敷かれてるぜ」
「……よかったのかなぁ??」
今日もありがとうございました(*^-^*)




