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前線にて

活動報告より♪

本編78話目のすぐ後、前線にいるユリーさん視点です。

「ふっ……!」


 団長がそんな小さな笑いを洩らした。

 気持ちわりー……ではなく、何事かと思いそちらを見ると、先程届いたばかりの王都からの封書を読んでいるフィサリス団長が目に入った。パッと見は、何でもない手紙を読んでいるようにしか見えないのだが、よく見ると目が座っているのに気付く。


 おいおい、手紙読んで目が据わってるぞ、こいつ。


 奥方からの手紙が最近は少なくなったからって、とうとう発狂したか?

 ヤバいものを見る目で団長の様子をこっそり見ていると、


「んだよ、ユリダリス」


 ジロッ。団長の冷たい視線が飛んできた。やっぱ気付かれてたか。


「いや? どんな楽しいお手紙だったのかなぁって、気になっただけ~」


 へらっと笑って返した俺だけど、


「あ~、ある意味面白いな」


 そう言ってにやりと笑う団長。うっわ、黒っ。


「ある意味?」

「読むか?」

「読んでいいのか?」

「ああ。セロシアからの手紙だ。昨日王宮でやってた激励会のことが書いてあるだけだし」

「セロシア……? ああ、アルゲンテア執政官のことか。昨日の激励会って、またえらく早い報告書だな?」

「まあな」


 団長はそう言うと、ポイッとこちらに手紙を投げてよこした。俺は落とさないよう上手くキャッチし、さっそく中身を改める。

 

 そこには、騎乗隊第一中隊の連中が、激励会で奥様をナンパしていたという報告が書いてあった。もちろん全員の名前も挙げてだ! いい仕事してんね~、執政官。


「ほっほ~。なかなか面白いことやったじゃねーか、騎乗部隊あいつら


 団長の奥様はあまり社交界に顔を出さないから、脳筋野郎どもは初めて会う奥様を、特務師団長夫人と判らなかったんだろうことは想像に難くない。

 しかも儚げな雰囲気の美少女だもんな、奥様。ナンパもしたくなるだろう。

 野郎どもに囲まれて喜ぶ令嬢ならともかく、奥様、そういうの好きそうじゃねーもんな。俺らが囲んだってあたふたするくらいだし。報告書によれば、奥様は大変うざったそうにしていたそうだ。


「嫌がっている相手を、無理矢理ナンパするのはよくないよな~」


 オレもニヤリと笑う。


「当然だ。ここはひとつしっかりと働いてもらって、一から根性を鍛えなおさないといけないな」


 負けじと団長も黒い笑みを浮かべる。


「うわ、団長と副団長がすっげー黒い笑みを浮かべてるぞ」

「あれはよくないことを考えてる時の笑いだよな」

「何かキッツイ作戦でも考え付いたんじゃねーの?」

「鬼畜作戦?」

「ぎえ~~~! 鬼畜作戦って、ロケハンがハンパなくきついんだよな! あ、オレ、オナカガイタクナッテキター」

「ナンダトー!」


 ゴソゴソ。ボソボソ。黒い笑みを浮かべる団長とオレのことを、怖々と遠巻きに見守る団員たち。全部聞こえてんだよ。


「おい、お前たち。奥様をナンパするやつを赦せるか~?」


 不敵な笑いを浮かべながら団員たちに問いかけると、


「「「「「赦すまじ!!」」」」」


 声をそろえて即答する団員たち。


「だよな~。あいつらもそう言ってるし~」

 

 だめだ、にやにや笑いが止まらん。


「ふむ、仕方ないな。一番重要かつ難しい作戦は、ぜひ、第一中隊にやってもらおう」

「仕方ないですね~。ま、あいつら実力はありますから」

「「「「「お~!!」」」」」


 いい笑顔で大きく肯いた団長。美形の黒い笑みは、段違いでコワイ。オーラも黒いぞ、団長。

 しかし、特務師団が一致団結した瞬間だった。


「あいつら、到着次第こき使ってやる」


 ボソッとつぶやいたな団長。まあ、オレもそう思うし~。

 がんばれよ、第一中隊! 奥様と親しくお近づきになったんだからな!




今日もありがとうございました(*^-^*)

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