検閲官の嘆き
活動報告より、加筆修正♪
文書検閲官さんの嘆きw 旦那様、お手柔らかに♪
私はフルール王国軍所属の検閲官です。
軍では庶務課というところの所属です。
中でも私の担当する部署は、特務師団というちょっと難しいところです。
というのも、特務師団は諜報活動を主な業務とする部署ですので、やり取りされる文書もかなり重要なものが多く、気が抜けないからです。
新人では務まらない重責なので、中堅以上のキャリアを持つ検閲官しか担当できません。ですから、特務師団担当検閲官といえば庶務課のエリートと言っても差し支えないのですが、やっぱり業務内容がいろいろキビシイのでさっさと担当替えしてくれないかなーというのが私の本音なんですが。
その特務師団が遠征に行くというので、もちろん私も同行することになりました。私の場合は長期出張扱いです。
まあね、公文書だけでないのが検閲官のお仕事。
家族宛どころか、恋人宛ての私信なんてざらですよ。ええ、百も承知ですよ。
しかしですね。
特務師団長のあの私信たら!!!
普通、検閲されることを念頭に置くから、私信といえども当たり障りのない言葉で綴られているものです。他人に検閲されるという羞恥心から、表現も控えめなんですよ。しかしアノヒトの奥様宛ての私信ときた日にゃ、そんな配慮一切ないし、おまけに部屋に居座って『検閲早くしろ、早く届けたい、まだか?まだか?』とプレッシャーをかけてくる始末。手紙の甘ったるさに涙目になりながら検閲しましたとも! ええ、これが私の仕事ですからね!!
ぜーはーぜーはー。
心の中で叫んだにもかかわらず息が上がってしまいました。これ、どっかで王様の耳はロバの耳でもしないと昇華できそうにもないですね。
……さてと。
まあこんなことをやっていても仕事が進むわけでもありません。先程王都から帰ってきた早馬がもたらした文書を早急に検閲せねばなりません。
私が文書の山から新しいものをとろうと手を伸ばした時――
「検閲官。今日文書が届いただろう。私宛のモノがあったはずだが」
ひ~っ! ご本人様 降 臨 !!
無駄に颯爽とブースに入ってこられたフィサリス団長。いつみても麗しい。麗しいのに無愛想。
美形特有のキラキラオーラを発しているにもかかわらず、残念ながら愛想などふってくれません。
「あ、はい」
団長宛のものは王宮からのものと先代のフィサリス卿からと、そして奥様からとありましたね。
「ヴィオラ――妻からのものがあったと思うのだが」
「はい。ございました」
「まずはそれから検閲してくれ。ここで待っている」
「え゛?!」
「なんだ?」
「い、いえ。かしこまりました……」
奥様からの返事もこれですかい。
ブースに置いてある椅子にどかりと座り、その長い脚を組んですっかり待機モードの団長。
「早くしてくれ」
やっぱり無愛想におっしゃられますが。
「は、はい!」
哀しいかな、ただの一般庶民かつ一般事務員な私ですから逆らえるはずもありません。
救いは奥様からのお手紙がまともだったことですね。よかった。なんか私が癒された。
検閲を終えてお渡しした時の、無愛想がすっかり崩れた団長の嬉しそうな顔ったら……!!
あ~、王都に帰ったら婚活しよう。
今日もありがとうございました(*^-^*)




