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貸切パーティ

活動報告より♪

本編66・67話目あたりの裏話です。

「なんか、団長が巷で今流行りの店を聞いて回ってるって耳にしたんだけど、マジか?」


 特務師団副団長のユリダリスが、屯所に入ってくるなり周りの団員に聞いてきた。


「あ~、マジっすよ~。特に女騎士とか内勤女子を見つけちゃあ聞いてるみたいですよ」


 呑気な声が応える。


「女騎士って……。目的バレバレじゃねーか」


 くらっと眩暈がするユリダリス。


「そんなのもちろん、奥様のためでしょ~?」

「みんなわかってますよ~」

「そんなマメなことをする人じゃなかったんですけどねぇ、人って変わるもんですねぇ」


 目頭を押さえて頭痛をやり過ごしているユリダリスの周りから、次々に声が上がる。


「まあ、確かにな」


 これまでのサーシスならば相手の意向など気にせず、セレブ御用達超有名店で買い物、食事が当たり前だったので、わざわざ周囲の者に「どんな店が流行っているのか」などと聞いて回るようなことはなかった。

 しかし、どうやらセレブぶったことが嫌いらしい奥方のために、わざわざ彼女好みの店を聞いて回っている様なのだ。


「……一体どんな店に行くのかねぇ」


 ユリダリスがつぶやくと、


「絶対にダンディライオンのパン屋とレモンマートルの菓子屋には行きますよ!」


 力強く断言したのは、金髪の女騎士カモミールだ。


「なんで言い切れるんだよ?」


 ドヤ顔のカモミールに対して怪訝な顔になる。


「だって、今王都で大注目といえばその二店ですし、どの子もみんなそれを推したって言ってましたからね~」


 訝しむユリダリスに答えたのは銀糸の髪のアンゼリカだった。


「どの子もって、どういうことだよ」

「団長に呼び止められた子全員っていう意味ですよ」


 ブロンズ髪のアルカネットも参戦してきた。


「はあ?」

「あまりの珍事に、みんなで何があったのか緊急井戸端会議があったんです」

「軍女子のね~」「「ね~!」」


 軍に所属する女子はそう多くはない。だからその結束力は強く、部署を超えて太いパイプで繋がっているのだ。


「そこですり合わせた結果、この二店が圧倒的に支持されてたってわけで」

「ですから、団長の出没ポイントはおのずとこの二店に絞られるのです!」

「女子、こえぇ……」


 すっかりドヤ顔の綺麗どころトリオに、引きつるユリダリスだった。


「でもその店って、かなり行列してんじゃなかったっけ?」


 ユリダリスが気を取り直してそう言うと、


「そうですよ~。カフェなんて限定スイーツがあるから入るまでに半日かかる時もあるそうですよ~。オレも休みの日に彼女にせがまれて行きましたけど、ずいぶん待たされました」


 と、行ったことのある団員から証言が上がった。


「そうか。じゃあ団長が行ってもすぐに入れない確率が高いな」

「団長は並んでも、奥様を並ばせるのは忍びないですわぁ」

「そうよね~。奥様にはスルーで入っていただきたいものよね」

「あんなかわいらしい奥様に苦労はさせられないわ」


 うっとり顔で暴走しだした綺麗どころトリオ。


「いや、行列は苦労じゃないだろ。待ってる時間も恋人同士にはむしろ楽しい時間だっていうじゃねーか」


 思わずツッコんだユリダリスだが。


「うわ、副団長乙女発言!!」

「あいたたたた……」

「ワロタ。盛大にワロタ!」


 なぜか周りに笑われる羽目に。


「うっせー!! お前らはぁ!! ん~ん~こほん。……でもまあ、ヤツがどんな顔してデートしてんのか見てみたいよな」


 顔を真っ赤にして怒鳴っていたが、すぐに思い直してニヤリと笑うユリダリス。

 周囲も、「みたいです~!!」の大合唱。


「無防備にデートとか、用心悪いし? ここは俺たちがしっかりと警護しないといけないと思うんだよ」


 すっかり立ち直ったユリダリスはそう提案する。


「そうですね!」

「菓子屋に暴漢が潜んでいてみろ、危険極まりない」

「もちろんです!」

「そこでだ。その菓子屋を貸切りにして俺たちがお客に扮して周りを固めてしまえば、不審人物が混じることもなければ、警護もしやすいというわけだ。そう思わないか?」


 悪そうな笑みを浮かべるユリダリス。


「「「「「おお~、なるほど~~~」」」」」

「そうと決まれば貸切り作戦で決まりだな。まず、ヤツはいつデートに行くか、だが」

「はい! 副団長!!」

「カモミール、なんだ」

「これからの軍の予定も考えると、デートの決行は、団長の次の公休日だと予想されます」

「そうだな。それを逃すともう遠征に入ってしまうからな」

「そうです」

「じゃあ時間は……」

「それは、昼食後だと思われます」

「なんでだ? アンゼリカ?」

「はい。お店を聞かれた時に、昼食の後、午後のお茶にレモンマートルのお菓子がいいですよと推しておいたのです!」

「やるな、お前! じゃあ、午後いっぱい、店を押さえよう。参加できる者は全員参加な~」


 そうユリダリスが周りに向かって宣言すると、


「え~、オレ仕事だ~」

「ラッキ~! 私たちお休みぃ!」


 悲喜交々、いろんな声が交差した。


「あ~、ひとつ言っておくがすぐにバレないように変装して来いよ~! 同伴者絶対な。かわいい菓子屋にお一人様はねーだろ。嫁さんや彼女いねーヤツはオカンでも妹でも姉ちゃんでも何でもいいから連れてこい。絶対男同士でくんなよ暑苦しい。人数が足りなけりゃ、他の部署からも連れてきていいぞ」

「「「「「了解!!!」」」」」


 ……かくしてレモンマートルの菓子屋は騎士団メンツによって占拠されたのであった。



今日もありがとうございました(*^-^*)

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